第75話 通路+罠=突破
こちら、本年最後の投稿となります。
追記:一部の表現を修正しました。
おっはー、あたしリタちゃん。
今、ベリアーザの領主館の執務室で見つけた隠し通路の中で、下に向かう階段を進んでいるの。
もちろん、罠を警戒して慎重に。
なんせ・・・
「ふむ・・・このような通路があったとは、私も知らなかったな。領主のみが知る、まさに父の秘蔵っ子だったということか。」
そんなことを呟きながら護衛対象がついてきているから。
光源なんか一つもない真っ暗な階段を、カンテラを持ったあたしを先頭として、ゼリア子爵を挟んで最後にリリスが続く形だ。
典型的な要人警護の体勢だね。
「こいつ、さっきまで操られてたのにこんな風についてきて・・・本当に危機感とかの感覚が壊れてるんじゃないの?」
「はっはっは、だから聞こえているぞ、メイド殿よ。」
「聞かせてるんだよ!」
だから、今からでも引き返して安全確保されるまで待ってて欲しいんですけど!?
「まあ、そう言わんでくれ。あの場は君らによって制圧されたとはいえ、今は敵地と言っても過言ではない。ならば、君らの側にいた方がまだ安全だというもの。それに、ここは長年住んでいる屋敷だからな。現地の案内人もいた方がありがたいだろう?」
「ですが、この通路は知らないと仰っておりましたわよね?」
「それはそうだな、はっはっは!」
最後尾を歩くリリスからツッコミが入るも、それでもゼリア子爵は動じない。
っていうか呑気か!!
こっちはマジで罠を警戒してるってのに!
「・・・まあ、真面目な話だ、知らぬ間にとはいえ領主となった身。自身の足元は固めねばならん。だが、不甲斐ないことに、足場は初手から崩されていたからな。ならば、より強固なものとするため、自らで構造を知っておかねばならぬのだよ。君らには迷惑をかけるが、私も引くわけにはいかん。敵の支配から解放してくれたことも含め、礼はしっかりとさせてもらう。だから、どうか頼む、護国の隠し刀たちよ。どうか、力を貸して欲しい。」
・・・・・・。
「その足場を固めるのは、領主としての力を振るうために?」
あたしは足を止め、後ろにいるゼリア子爵の目をしっかりと見て問いかける。
「そうだ、領主として、国の、そして民のために存分に力を振るうためだ。」
「そっか。」
その目に嘘は見られない。
暗い通路の中でもはっきりわかる、信念の炎の煌めいた、まっすぐな目。
これは、ちゃんと助けてあげないといけないかな。
「なら、もうついてくることへの異論はない。けど、こっちの指示にはちゃんと従ってもらうからね。何かする前にはきちんと相談するよーに。リリー、そっちもフォローよろしく。」
「もちろんですわ。任せてくださいまし。」
「おや、ずいぶんと信頼がないのだな?認めてはもらえたようだが・・・」
「それとこれとは話が別。さっきの自分がした行動をもう忘れた?」
結果論では済まされないからね?
そう言うとゼリア子爵は誤魔化すように笑うので、会話はそこでいったん終了し、探索を再開した。
そこからゆっくりとだけど確実に歩を進めて五分ほどすると、階段の終着地点を見つける。
そこにあったのは分厚い鉄でできた一枚の扉。
覗き窓はなく、立派なドアノブだけがついたキレイな扉だ。
「リリー。ちょっと、向こう探れる?」
「やってみますわ。」
あたしが声をかけると、リリスが影魔法を発動し、ドアの向こうを探ろうとする。
だけど・・・
バチン!
「ぬおっ!?」
「ダメですわね。この感覚は、魔封じ?」
「このドアの向こう全部?」
「それはわかりませんけれど、少なくともこのドア自体に魔法は通じないようです。」
「事前調査は厳しいか・・・」
ドア自体に鍵穴のようなものはないから、普通に開きそうではあるけど、ドアノブを触った感じがちょっと怪しいんだよね。
しかも、周りの建材に比べてこのドアだけが新しめだから、たぶんこれは元々あった通路に敵が新たに設置した罠だ。
だって、執務室から続く隠し扉なんて、避難用のはず。
なのに、こんな頑丈な扉を設置していたら、逃げるのが遅れてしまう。
通路を逆流されないための措置は必要だろうけど、それが執務室に近い状態では避難の初動を邪魔してしまいかねないから、やっぱりおかしい。
「これ、たぶん開けた瞬間に残りの敵さんにこっちのことがバレるやつだね。」
「困りましたわね・・・こんな狭い空間ではこちらが不利になるのは確実。」
「ふむ、私という護衛対象もいるからな。その分、君らの行動は制限されざるを得ないわけか。」
「それもそうだね、だから、あたしにいい案があるんだ。」
「・・・お待ちなさい。」
何かに気づいたんだろう、あたしに待ったをかけるリリスの顔は少し苦い。
「一応、お聞きしますわね。どんな案ですの?」
「そんなの、決まってるじゃん。」
そう、目的地には扉が一つしかなく、魔法も通じない。
それでいて、扉を開けた瞬間に何らかの方法で相手に確実にバレる仕掛けがあって、しかもそれは避けられないときた。
ならば、答えは一つだ。
あたしは腰だめに拳を構え、魔力を全力で込める。
「体の内側で魔力を扱うぶんには、こういった魔力阻害は影響を及ぼせない。つまり、身体強化に全振りして突っ込む!!」
「やっぱり、碌な案ではないじゃありませんの!!」
「はっはっは!いっそ清々しいまでの脳筋ぶりだな!もはや気持ちがいいまである!!」
「お褒めにあずかりどうも。それじゃ、あたしが暴れてる間、子爵の護衛はよろしく!!」
「やっぱり、こんな役回り!もう!」
リリスがやけくそ気味に応えるのと同時に、あたしの魔力のチャージが終わった。
拳は灰色の魔力でギュインギュインと輝きを放っている。
あたしはそれを・・・
「それじゃ、行くよ!!ふんっ!!!!!!」
全力で目の前の扉に、上から斜めに叩きつける!!
なんせ、存在のわからない前子爵が生きてて人質にされてる可能性もあるからね。
これなら、くらっても気絶するだけで済むはず!
扉はとてつもない音を立てて外れて衝撃波を放ち、その先の空間にはけたたましい警報が鳴り響き始めた。
さあ、せいぜい暴れまわるとしようかっ!!!
本年も『問題児in追放修道院』をご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。
また来年も、本作をよろしくお願いいたします。
次回の更新は1月3日(土)午前6時の予定です。
皆さま、良いお年を。




