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問題児in追放修道院  作者: バタ足攣り太郎


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第70話 検分+疑惑=拘束

「皆さま、どうぞお入りください。」


外で助けた冒険者たちを誘った車内には、我が主であるお嬢様・・・ということになっているリリスがいた。


というわけで、どうも、あたしはクール系メイドのルタ改めリタちゃん。


ツンと済ました顔で敵を殲滅した帰りに、冒険者を誘導してきたの。


「ふふ・・・ようこそいらっしゃいましたわ、冒険者の方々。あら?どうやら気を失っている方がいるようね。ルタ、看病して差し上げて。」


「はい、お嬢様。それでは、そちらの方に寝かせてください。具合を見ますので。」


「あ、ああ。」


気を失っているルミという女冒険者を引き取ると、その具合を見始める。


うん、負傷も見当たらないし、普通に過呼吸だね。


寝かしつけておけば問題ないでしょ。


「それで、その、お嬢様?で、いいのか?とりあえず、助けてくれて、ありがとうございます。あのままだと、死んでいたところだった。」


「かまいませんわ。それよりも、詳しい情報が知りたくってよ。話していただけて?」


「あ、へい。喜んで。」


そこから聞いた話によると、冒険者たちはラッシュ、ゴリア、ダンズ、ルミという四人組で遺跡探索に来たそうだ。


連携の強化のために旨味はなくても練習になるこの入門用の遺跡に潜ることにしたのだが、そこでさっきの跡賊に襲われたらしい。


「それは不思議なお話ですわね、ルタ。」


「はい、お嬢様。跡賊は遺跡での発掘品を狙うもの。ですが、ここにはそんな大層な発掘品はなく、おまけに襲われたのは帰りではなく行きです。これを不自然と思わない方が無茶かと。」


「ええ。これは、今回の跡賊がピンポイントにあなた方を狙った、と見るのが自然でしょう。」


「そんな、俺たちが!?」


「あんなやつら、見たことも聞いたこともないぞ!?」


「どうなっている・・・!?」


冒険者たちは頭を抱えてしまったが、あたしたちは跡賊の目的が彼らでないことを、実は知っている。


でも、あたしたちの所属する修道院の職務上、それは国家レベルの機密に抵触する。


「何か、恨みを買うような心当たりはお有りでして?」


「い、いいや!!そんなはずは・・・!ほかの二人も含めて、真面目にやってきたつもりです!!」


「「はい!!」」


「では、そちらの彼女は?」


「ルミは、昔から知ってる妹分みたいなやつです!恨みを買うような性格でもないし、どうして・・・。」


命を狙われたという事実は、人を消耗させるものだ。


彼らは十中八九、この状況に巻き込まれただけだろうけど、本当の理由を話すわけにもいかない。


あまり好ましいことではないが、逆に説明した方が彼らを危険に巻き込んでしまう。


すまんね、冒険者たち。


そんなことを内心で考えていたとき、入口の扉がコンコン、と鳴らされる。


『お嬢様、少々よろしいでしょうか。』


声をかけてきたのは御者をしていた男『ビステ』だ。


彼には外で倒した跡賊の捕縛をお願いしていた。


「かまいませんわ。お入りなさい。」


「失礼します。少々、確認したいことがございまして、ルタをお借りしても?」


お、あたしに用事か。


「かまいませんわ。」


「それでは、行ってまいります、お嬢様。」


「ええ。」


あたしは一礼すると、馬車から出た。


そして、ビステに案内されたのは、あたしが最初にぶっ飛ばした頭目と思しき男のところだった。


「これを見てほしい。」


そういってビステは気を失っている頭目の懐から、ジャラジャラとした鎖につながれたペンダントを取り出した。


それにはなんらかの紋章が刻んである。


そして、あたしにはそれに見覚えがあった。


「間違いなく、隣国クエイ公国の貴族の持ち物です。」


「やはりか。こいつら、身なりを汚してはいるが、武器が整い過ぎている。装備も見た目に反して質のいいものばかりだ。」


「本来であれば、それらは奪ったものとしてみなすのですが、身のこなしも訓練を受けた人間のそれでした。十中八九、持ち主本人なのでしょう。」


「そうか・・・。」


ビステは黙り込む。


あたしも少し、思考の沼に沈むとしよう。


とりあえず、こいつらはクエイ公国の人間・・・それも、騎士でほぼ確定。


こんなチンピラを騎士にするなんてどうかと思うけど、ゴルドラ侯爵なんて小物と内通しているようなやつの手先だからね・・・さもありなん。


そんで、相手は腐っていてもそれなりに大きな戦力だ。


あの冒険者たちにはこのまま何も知らずにお帰り頂こうと思ってたんだけど・・・


「ねえ、ビステ。現地協力員のあなたの意見を聞きたいのだけれど、彼らをこのまま街に帰したらどうなると思う?」


「・・・ここは国境も近く、どうしても人の往来が激しい。駆け出しを含めた低位の冒険者四人など、突然いなくなってもそこまで不審には思われないだろう。」


「そうよね・・・ハァ。」


思わずため息が漏れる。


これは、彼らには悪いけどがっつり巻き込むしかないかな。


「ビステ、もう少しこの場を任せてもいいかしら?お嬢様に話を通してきます。」


「承知した。」


あたしは心なしか重くなった足を動かして馬車へと戻る。


そして、ノックをして中に入ると、後ろ手に鍵を閉めた。


「おかえりなさい。その様子では、あまりいい報告では無さそうですわね。」


「まったくです。・・・事情の説明の前に、空間閉鎖を頼むわ、()()()。」


「あら・・・。」


あたしは言葉と雰囲気を崩しつつ、今はリリーというお嬢様を名乗っているリリスにそう要請する。


冒険者たちはぎょっとしているが、リリスはおっとりとした声を出しながらも、手早く魔法陣を展開し、壁や床、それに天井を紫の魔法の鎖で埋め尽くした。


突然の展開に、冒険者たちは驚きを隠せない。


「こ、これはいったいどういうことだ!?お嬢様、いったい何を!?」


だが、本来であれば反射的に攻撃態勢に移りそうなところを、彼らは意識して無理やり抑え込んでいる。


へぇ・・・まだ低位の冒険者だと思ってたけど、ずいぶんと見込みがあるね。


「「「ひぃ!?」」」


「ルタ・・・あなた、すごく悪い顔をしていましてよ。」


「失礼な、あたしのプリティフェイスになんてことを言うか。」


ただ鍛えがいがありそうで嬉しくなっただけなのに。


「まあ、ともかく、悪いようにはしないから、安心していいよ。この措置はあなたたちのためでもあるから。とにかく、今から詳しい説明をするからね。」


こうして、あたしはリリスと巻き込まれた冒険者たちへと事の次第を説明することになったのだった。




次回の更新は11月29日(土)午前6時の予定です。

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