第64話 料理+高難易度=大惨事?
リタちゃんお料理教室、開っ催っ!!
ってことでおっす、あたしリタちゃん。
なんか、気が付いたらお料理教室開催の流れになってた上に、街の奥様方が五十人ぐらい集まってた。
「「「「「「わーーー!!」」」」」」
いや、なんかみんな盛り上がってるけどさ・・・
「あたし、卵焼きの作り方しか知らんよ?」
「まあ、楽しければいいじゃない。リタちゃんのターンが終わったら、他の方に何か教わればいいし。」
「まあ、それもそうだね。ってか、しれっと割烹着を着てる夫人は料理できるの?」
あなた、仮にも高位貴族でしょ?
「できるわよ。」
「できるんだ!?」
「っていうか趣味ね。」
「しかもがっつり!?」
普通、家族に反対されたりするのでは?
「今時の貴族の令嬢は、もしもに備えてサバイバルの訓練も受けるもの。そこから料理にハマったとしても、何らおかしなことではないでしょう?」
いや、そのルートはかなり少ないのでは?
「私の手料理は主人にも好評なのよ。」
頬に手を当ててうっとりとする夫人。
うへぇ・・・ごちそーさま。
「ともかく、一番手はリタちゃんで決定よ。みんなそれが気になって集まってるんだもの。ねえ、皆さん?」
「「「「「「はいさ!」」」」」」
人数による圧がすごい。
しゃあない、いっちょやってやりますかー!
「とりあえず道具は・・・うん、揃ってるね。」
事前に言ってたこともあって、道具類は揃ってる。
問題は調味料なんだけど・・・
「お!ちゃんとお醤油も揃えてくれてる!」
お醤油はここらではマイナーだし、あまり流通していない。
いざとなったら自分のを持ち込もうと思ってたけど、これはありがたいね!
「注文を受けた時にも思ったけれど、不思議な調味料よね。塩味がとても強くて真っ黒で、それなのに適量なら独特の香りが立つんですもの。でも、これを使うの?確かこれから作る物は黄色って話よね?」
「隠し味に使うんだよ。これがないのとあるのとじゃ違うからね。」
ってか隠し味って「隠し」ってつく癖に、料理の完成度にかなり関わるよね。
隠れてるのに目立ってるとは、これは如何に。
ま、美味しければなんでもいいけれど。
「ともかく、ちゃっちゃと作っていきましょうかね。はい、最初の人たちは集まってー。」
今回、五十人も集まっちゃったもんだから、あたしの料理教室は数回ほど繰り返して開催することに。
原則的に参加は一人一回。
それである程度全員に教えられるってやり方だね。
ってことで初回組の指導を開始ー。
「まず、ボウルに卵を入れてかき混ぜる。個数は・・・とりあえず四つで作ってみようか。」
あたしは卵をパカッと割ってボウルに入れる。
ちなみに、あたしは片手で一個ずつ割る両手割りスタイルだよ。
ドヤッ!
「そして、ここに卵に対応した量のお砂糖、そしてほんの少しのお塩にー・・・」
「あら、それはさっきの。」
「そう、お醤油。これをほんのちょっとだけ入れます。」
やっぱりこれが大事なのよ。
「そうしたら、できた卵液をかき混ぜて・・・」
「ちょっと待ちなさい。リタちゃん、それは・・・」
「ああ、これ?マイ菜箸。」
こっちは西洋に似た文化だから、お箸とかなくて料理全般がやりにくかったから、馴染みの木工職人に注文して作ってもらった。
もちろん、オーダーメイド。
「そのマイサイバシとやら、あたしたちは持ってないのだけど・・・」
「ああ、菜箸ね、サイバシ。うーん、じゃあえっと・・・よし、この製菓用のヘラで代用しようか。」
さすがは夫人のセッティング。
このあたりの一般的な道具が一通りそろってるね。
「しっかりと混ぜて溶き卵を作るんだけど、この時、縦に切るようにかき混ぜて空気を入れてあげるんだ。そうすると、ふんわり仕上がる・・・気がする。」
正直、手順としてしか覚えてないから、理由はなんだったか忘れた。
「さて、これで準備は完了!フライパンに油をしいてー。」
一回したらーりとやって、フライパンの熱でまんべんなく伸ばす。
ちなみに、卵焼きといえば四角いフライパンを思い浮かべるけど、あたしは普通に丸いフライパン。
あたしは四角いやつだと、縁が邪魔でひっくり返しにくいんだよねー。
「ではいよいよお待ちかね、卵液の投入・・・なんだけど、ここからは時間との勝負。まずは薄焼き卵を作るときのように少し入れます。」
じゅわぁぁぁぁ、といい音を立てながら、卵液を少し注ぐ。
「そして、少し固まってきたら、重ねて卵液を投入・・・そんで、それがちょっと固まったら・・・ほっ!!」
「まあっ!!」
「「「おー!!」」」
すかさず菜箸を卵の下に差し込んで、手首のスナップを利かせて、手前にひっくり返す!!
「これで、一回巻いたね。で、開いた隙間にまた卵液を注いで・・・固まったらまたひっくり返す。あとはこれを、卵液がなくなるまで繰り返すだけだよ。」
あたしは解説しながら、二回三回と卵を巻いていく。
「き、器用ねぇ。でも、こんな難しいこと、私たちにできるかしら?」
「そこは練習あるのみだね。あたしは菜箸でやってるけど、みんなはヘラだから、少しはやりやすいと思うよ。」
現代だったら、フライ返しでやる人もいるって話だった気がするけど、この世界にそんな便利なものはない。
まあ、ヘラで頑張ってもらうしかないね。
他にもコツとか感覚を伝えてたら、あっという間に卵焼きが完成した。
「あとは、お皿に移して切り分けて・・・ほい、出来上がり!!」
「まあまあ、これが噂の実物なのね!とても美味しそう!!」
「まずは第一陣から、一切れずつ召し上がれ。熱いから気を付けてね。」
「「「「「「はいよー!」」」」」」
奥様方、初めて見る料理のはずなのに、躊躇なく試食している。
まあ、子どもに食べさせてるのと同じものって説明してるし、なによりいい匂いがしてるしね。
「どう、夫人?庶民の料理だけど、お口に合った?」
「むぐむぐ・・・ごくん。ええ、とっても!でも、これは食事のメニューってよりはお菓子に近いわね。」
「まあ、そこは味付けによるよ。例えば、ソースなんかをかけるとまた印象が変わってくるよ。」
「あら、それは試してみたいけど、もう残りがないわね。」
「これからも焼くから、その時に少しもらって試せばいいよ。」
夫人が主催で道具や食材も持ち込んでるから、文句を言う人もいないだろうからね。
ってな感じで、あたしはここからひたすらに卵焼きを焼いた。
解説しつつ焼いて、終わったら試食、それを繰り返す。
なんせ五十人も参加してるからね。
一回で多くても五人とかだから、どうしても回数は多くなっちゃうよね。
そして、数を焼き過ぎて卵焼きの層にあたしも巻き込まれるんじゃないか、なんて馬鹿な事を考えるくらいになったころに、ようやくお役目が終わった。
あたしはもうへとへとで、最初に夫人と言ってた、自分のターンが終わったら他の人に教わればいいやー、なんて余裕は残ってるはずもなく。
というか、各々が実践で苦戦してるから、他所に教えてる暇なんてないみたいだね。
破けたー!焦げたー!なんて悲鳴が時折聞こえてきたりもして、大丈夫か心配になる。
だけど、後日にレイクディーネで卵焼きは流行ったから、大丈夫だったみたいだね。
ともかく、そんな感じで、お料理教室は大成功に終わった。
夫人や奥様方は料理のレパートリーが増え、あたしは修道院の一員として地域貢献ができた、いいイベントだったんじゃないかな。
だから、後日にちびっこ共から、最近卵焼きばっかりだ助けてくれー!なんて泣きついてこられて困ることになるなんて、今のあたしは想像もしていないのだった。
え?何にでも卵焼きが入ってる?
練習で作りすぎちゃったんだろうなぁ・・・
次回の更新は10月18日(土)午前6時の予定です。




