第61話 お貴族+屋台=ナイフ
「うふふふ~。」
ここはレイクディーネの商店街、そのメイン通り。
そこを、どう見ても身分の高い服装をした女性と修道服を着たシスターが並んで歩いていた。
まあ、そのシスターってあたしなんだけどね。
ってことで、おいっす!あたしリタちゃん。
修道院をダイナミックかつサイレンスに抜け出したあたしとリーフィ侯爵夫人のアンネマリーは、特にあてもなくぶらぶらと街を散歩していた。
「ご機嫌だね、夫人。」
「こら、リタちゃん!夫人なんて余所余所しい呼び名じゃなくてお姉さまって呼んでっていつも言ってるでしょ?」
「嫌だよ。」
「もー、相変わらずつれないわねえ。」
あたしにそういう趣味はない。
まあ、そんな感じでウザ絡みしてくる夫人を相手しながら、屋台なんかを見て回る。
「あら、おいしそう。おじ様、こちらをお二ついただけますか?」
「ん!?お、お貴族様・・・とリタちゃん!?」
夫人が声をかけたのはあたしの馴染みのおっちゃんがやってる肉串の屋台。
自家製のタレが炭火でじゅーじゅー音を立てて、いい匂いによだれが出そうな感じの屋台。
あたしのお気に入りの屋台の一つだね。
「おっす、おっちゃん。この人、修道院の客なんだけど、単体だったら礼儀にはうるさくないから、いつも通りで大丈夫だよ。」
「いや、やっぱりお貴族様なんじゃねえか!!そうはいかないって!」
「んー、まあ、そりゃ、そうなるか。」
「当たり前だ!!」
まあ、平民からしたら、恐ろしい別の生き物だからねえ、貴族って。
まあ、ウチの院長もああ見えて貴族なんだけど・・・あれは例外か。
場所によっては、いまだに無礼打ちみたいなことやってるアホな貴族もいるらしいから、この反応も仕方ないよね。
ここいらはババアが睨みを利かせてるし、あたしらもそんなことさせないけどね。
「ほら、おっちゃん。かしこまるのはわかったから、注文、注文。」
「あ、ああ!確か、肉串を二つでごぜえますね。ちょっと、お待ちくだせえ!!」
「いや、どこの三下の喋り方だよ・・・」
「うふふ、お願いしますね。」
夫人もくすくす笑ってるし。
まあ、そんなやりとりはあったけれど、おっちゃんが渡してくれた肉串はちゃんと美味しかった。
もちろん、お貴族様が立ち食いなんて出来ないから、近くのベンチで食べたけどね。
夫人も気に入ったみたいで、もう一本頼んでいたよ。
何気に健啖家の夫人はそれもぺろりと完食。
「帰りに買っていってあげようかしら・・・」なんて呟いていたりする。
少しでもお付きのお怒りを減らすための涙ぐましい努力だね。
この肉串の屋台を皮切りに、あたしたちはぶらぶらと商店街を見て回ることに。
そして、事件は肉串の屋台から、二、三軒ほどアクセサリーとかの屋台を回り終えたときに起こった。
「ん?」
どこからともなく、投げナイフが飛んできた。
ターゲットは夫人。
それは軌道からも間違いない。
今の夫人にはお付きがいなくて無防備・・・これを投げた相手はそう思ったんだろうね。
でもさ、夫人には・・・
「あたしがい(カン!)・・・え?」
あたしが何かする前に、飛んできたお盆にナイフが弾かれたんだけど・・・。
お盆の飛んできた元は・・・
「この街でやんちゃなんか、させると思うかい?なあ、皆の衆!!」
「「「おうよっ!!」」」
近くで屋台を開いていたおばちゃんおっちゃんたちなのであった。
次回の更新は9月27日(土)午前6時の予定です。




