第60話 夫人+自由=抜け出し
「ちょ、夫人!?なんでいるの!?」
おっす、あたしリタちゃん。
院長に呼ばれて院長室に行ったら、リーフィ侯爵夫人のアンネマリーがうふふって笑ってたの。
いや、ほんとなんでいるのさ!?
「うふふ、来ちゃった。」
「いや、来ちゃった、じゃなくて、領地にいなくて大丈夫なの?」
あんた、不在の侯爵の代理でしょうよ。
「大丈夫よ、ミミを残してきたから。」
「あー、まあ、それなら?」
まったく仕方ありませんね、とか言いながらさらりと引き受ける姿が目に浮かぶ。
「それで、護衛引き連れて遊びに来たの?」
「ええ。とはいえ、多くても迷惑になるから三人だけね。」
「いや、少なすぎじゃない?」
あんた侯爵夫人でしょうよ。
「まあ、みんな腕利きだし、慣れてるから大丈夫よ。」
「まあ、確かに、慣れてはいるだろうねえ・・・」
あたしは思わず遠い目をしてしまう。
そう、このアンネマリー・リーフィ侯爵夫人はかなりの自由人。
この間、ガリットのおっちゃんと侯爵領に行って会ったときに「久しぶり」なんて言ってたけど、それはこの修道院にあまり来たことがないこととイコールじゃない。
ただ、最近は忙しくて来れてなかっただけで、一年前くらいまでは結構頻繁にレイクディーネまで遊びに来ていたのだ。
具体的には三カ月に一回くらい。
「まあ、そんなわけで遊びに来たので、デートに行きましょう。」
「はいはい・・・じゃあ、護衛に声をかけてくるから」
「必要ないわ。」
「は?」
あたしが聞き返そうとすると、夫人はあたしの手をとって窓へと向かっていく。
ん?まさかここから外にダイナミックにエントリーする気か?
実は室内で静かにしていた院長も「夕飯までには帰って来な」じゃないんだよ!!
「ちょ、ま、あんた侯爵夫人だろおおおおお!?」
「うふふ、今はただのアンネよ。」
夫人・・・アンネに引きずられ、あたしは一緒に窓から飛び出して街へと繰り出すことになった。
この人、実は何気に武闘派なんだよね・・・
三階の窓から飛び降りたのに、ちゃんと静かに着地してるし。
ちなみに、護衛を撒くのは今回が初めてではない。
まあ、窓から飛び出したのは初めてなんだけどね。
「まずは屋台から回ろうかしらね。最近のおすすめはあるかしら?」
アンネが挑戦的な目線であたしを見る。
「ふ・・・」
あたしの答えはただ一つ。
「そんなの、帰ってきたばかりのあたしにわかるわけないじゃん。よし、再開拓と行こうかッ!」
あたしはアンネの前に出て、意気揚々と街へと繰り出すのだった。
次回の更新は9月20日(土)午前6時の予定です。




