第56話 二代目+評価=物騒な相談(強制)
マリア・モーガン。
追放修道院の院長の名前だ。
その名は、かつては今の院長個人のものだった。
しかし、現在はそうではない。
マリア・モーガンは世襲制となり、その立場と役割を示す名へと移り変わった。
「よお、来たかい。」
「久しぶり、二代目ー。」
そんな二代目マリアに、あたしは会っていた。
このマリア、見た目は二十手前の少女なんだけど、実年齢はだいぶ上らしい。
まあ、雰囲気は確かにそんな感じではある。
ってなわけで、おっす、あたしリタちゃん。
クエイ公国から戻ってきて早々、前王弟襲撃とかいうとんでもない計画を聞かされたので、詳細を聞きに来たよ。
「なんでも隣まで行ってたんだって?」
「行ってた行ってた。転移で連れてかれた。」
「らしいなぁ・・・。」
二代目はあたしに近づくとがっしりと両肩をつかむ。
「よくぞ、見つからずに戻って来てくれた・・・!!」
心からの言葉だね、これ。
声の響きも重いよ。
よっぽどヤバい橋を渡ってたんだね、あたしたち。
いや、自覚はあったけども。
「ヤバいなんてもんじゃないよ。バレたら即隣国との戦争さね。しかも、こっちが不当に仕掛けたことになる。」
「うん、やっぱりそうだよね。隠れて移動したあたしの判断は間違ってなかった。」
「まったくだね。あっちが前王弟を利用して仕掛けてきている現状では、あんたがあっちで見つかるのが、やつらの描いていたシナリオだったはずさ。」
「あれ?ということは、転移先の洞窟の崩落は・・・」
「これ以上にないファインプレーさね!あんた最高だよ!!」
今日一番の笑顔で二代目はそう言い切った。
麻薬といい、内乱誘発といい、あいつら、やり口が陰湿だもんね。
鬱憤が溜まってたんだね・・・お労しや・・・
「あだっ!?」
生暖かい目で見つめてたら、デコピンをくらった。
「あんたもひとごとじゃないんだよ?」
「まあ、確かに麻薬のことを嗅ぎつけたのはあたしだけどね。」
「それもあるけど、そうじゃない?」
あ、なんかいやな予感が・・・
「ちょっと急用を思い出し」
「まあ待ちなよ。」
逃げようと踵を返したところを、ガシッと肩をつかまれる。
「いや肩に指が食い込んでる痛い痛い!」
「なあ、リタ。お前さんには期待してるんだ。お前さんならきっと、こちらの予想をいい意味で裏切ってくれるって。」
「なんか期待が急に重い!?」
「今回だって、無事に相手に見つからずに帰国するという困難なミッションを見事に成し遂げた。あんたはできる子さ。」
「持ち上げられまくってる!?やだ!おうち帰るー!!」
「逃がさん!というか、修道院に帰ったとて、先代がいるぞ?」
「そうだった!?あの院長、絶対にいい笑顔であたしを送り返す!!」
そこの信頼は悪い意味で揺らがない!!
うわー、嫌な予感しかしない!!
「ってことでな・・・お前さん、あたしといっしょに、直接、前王弟の首を獲りに行こうか。」
「ふむ、直接首を獲りに・・・って王族暗殺の実行犯じゃないの、それ!?」
「一応、国王陛下には根回し済み。」
「根回ししていてもダメでしょ!?ってか捕縛じゃないの!?あたし、襲撃って聞いて来てるんだけど!?」
「いいや、確実に息の根を止める。」
「言い切らないで!?」
嫌な役回りすぎるでしょ!?
そのあともごねたけど、結局、あたしは二代目と一緒に前王弟の屋敷に潜入。
たった二人きりで襲撃をかけることに本決まりになったのだった。
ちなみに、さっきまで一緒だったダルセムは、敵の情報を得るために諜報担当のサリアに連れていかれた。
こっちに来ていれば、巻き込めたのに!!
くそぅ、ダルセムの癖に!!
あたしがそんな風に悔しがっているとき、ダルセムは寒気で震えてくしゃみを連発していたらしいと後で聞き、少しすっきりしたのはここだけのお話。
次回の更新は8月23日(土)午前6時の予定です。




