第52話 簀巻き+拳=せっとく。
おいっすー、あたしリタちゃん。
オーガたちと別れて新しい街を目指して、近くまでたどりついたら違和感が。
よく見てみたら門番の鎧が隣国で使われるやつだったよ。
あっはっはー。
笑 え ね え よ 馬 鹿 野 郎 !
「はっ!?・・・あれは・・・」
「ふん!」
「ぐほぅあっ!?」
またも目覚めた簀巻き村人を速やかに気絶させて黙らせる。
「シュバルツ・・・ここから離れよう。」
「良いのか?あそこを目指していたのではなかったか?」
「ちょっと事情が変わった。あれに見つかったらまずい。」
「ふむ・・・ならばこっちだ。」
あたしはシュバルツに案内されて、街を離れてまた森の中へ。
少し奥まったところまで進んで、他に人がいないことを確認してから、あたしはシュバルツに事情を話し始めた。
とは言っても、シュバルツは元々がオーガの変異種だから、簡単にかいつまんでだけどね。
「・・・そうか。あの者どもは敵なのか。人の世界も大変なんだな。」
「うん。それで、あたしはここにいるのが見つかるとまずいから、人里を避けて自分の国に戻らなきゃならないんだけど・・・」
「ここがどこだかわからん、か。」
「そうなんだよ。」
あたし、こっちの世界で気が付いた時には罪人だったから、シエル王国から出たことなかったんだよねー。
まあ、仕事の関係上、近隣国家の知識はあるけど。
それもすごい大雑把な知識のみで、地理なんか全然わかんない。
「参ったねー。いったいどうし・・・ん?」
さっき黙らせたはずの簀巻きが薄目を明けてるような?
・・・ふむ。
「シュバルツ、ちょっと服整えたいから目を閉じてて。」
「む?俺は気にせんが?」
「あたしが気にすんの!いーから、目を閉じてて!」
「わ、わかった。人の子は難しいな・・・」
シュバルツがなんかブツブツ言いいながら、目を閉じた。
ならば今!
魔力を腕に集めて、収縮!
くらえ!
「即興目潰しフラーッシュ!!」
「ぐはあああああああ!?」
あ、やっぱり起きていやがった!
「目、目ぇがああぁ、目ぇえええ!?」
「閃光の味はいかが?この変態!」
「ぐおぉ、誰が変態だぁ・・・」
「お前だよ。着替えるって言ってんのに気絶したフリして覗きやがって。」
「リタ、もういいか?」
「あ、ごめんシュバルツ。もういいよ。」
「そうか。・・・特に服が直ってはいないような?」
「ごめん、あれはそこのスケベを釣る方便。」
「す、スケベではないぃ・・・。」
呻きながら言い訳しているが、知らん。
また騒がれても面倒だし、もう一回気絶させようかな。
「待てぇ・・・」
そう思っていたら、簀巻きに先手を打たれた。
「でも待たない。」
容赦なく、腹に拳を落とすあたし。
しかし、簀巻きは転がって避けた!
こいつ、目は回復してないはずなのに!?
とりあえず追撃。
また避けられる。
追撃。
回避。
以下繰り返し。
「待て、話を、聞け、ちょ、待て、待て、と、言っている、だろうが!?」
「待たない。」
「うお、ちょ、ま・・・」
ええい、急にちょこまかと。
さっさと殴られろー!
「場所、わかる!」
・・・なんだって?
とりあえず、追撃の手を緩める。
「や、やっと止まったか。」
「ここどこか、わかるっていうの?」
「ふっ!ああ、そうだとも!教えてほしければ、この拘束を解・・・」
スッ(拳を構える)。
「いや、なんでもないです。」
「そう。じゃ、続きよろしく。それと・・・」
あたしは、簀巻きの目の前の地面をわざと強く殴りつける。
途端に発生する小クレーター。
「次はないよ?」
「は、はい!」
さて、そんなこんなこの簀巻きビビりながら説明してくれることに。
なんでも、ここはシエル王国の隣国”クエイ公国”の南側に位置する場所らしい。
さっき一瞬起きたときに見た街並みでそれがわかったそう。
「ってことはあんた、ここの出身?」
「・・・さて、どうかな?」
「いや、苦しいでしょ。そっか、完全に他国のヤツに入りこまれてたのかー。」
これは上がブチギレ案件の予感。
関わりたくないなー。
まあ、今はそんなのは置いておいて。
「ってことはシエル王国への帰り道も知ってるってことだよね?」
「まあ、それはな。」
「ふーん・・・ねえ、あんたさ、このままだとお先真っ暗なのはわかってる?」
「・・・さすがにわかっているとも。逃げるのもできそうにはない。」
「おまけに、あたしをハメた策も、捨て駒前提のやつでしょ?それでも戻る気、ある?」
「・・・ない。あるはずもないだろう!」
唇を噛んで口の端から血を流しながらそう叫ぶ簀巻き。
そこに籠もった悔しさや悲しさ、そして怒りは本物に見える。
実際、事情があって本物の慟哭だったのがわかるのは、もう少し後のお話。
「なら、協力しない?大丈夫、悪いようには、しないから。」
あたしはにっこりと嗤って、いや笑ってそう告げた。
・・・ちなみに、それを見たシュバルツが視界の端で引いてたのは、全力で見なかったことにするあたしであった。
次回の更新は7月26日(土)午前6時の予定です。




