第38話 王様+宰相=行動開始
誤字を修正しました。
「ねーむーいー。」
やっほー、あたし、ねむねむなリタちゃん。
徹夜でお説教くらった足でお城に連れて来られたの。
さっきから口で駄々こねてるけど、他に選択肢がないのがわかってるからスルーされてる。
くそぅ。
「そろそろだな。」
先導のメイドについていってるリーフィ侯爵の言葉を聞いて、改めて愚痴るのをやめて周りを見てみれば、そこは確かに王城の深いところ。
王族のいる区画の近くだった。
あたしは昔にやらかした関係でおおっぴらに王様と会うことができないから、公式な謁見じゃなくてこっそり会うことになってるんだよね。
まあ、あたしとしても楽で助かるけど。
そんなことをつらつら考えてたら、先導していたメイドさんが扉の前で止まった。
どうやら王様のいる部屋についたらしい。
「リーフィです。」
侯爵がノックして声をかけると、扉が開き、あたしたちは中へと招き入れられた。
広すぎず、かといって狭すぎない応接室の中には、さすが王城というだけあって、調度品はどれも高そうなものが揃えられている。
だが、決してギラギラとした成金趣味のものではなく、シックで品の良い品々が配置されているのは、さすがとしか言いようがない。
しかも、ここは表ではなく、王族区画の手前にある私的な客への応接室だ。
そこまでしっかりと整えられていることから、この国の国力や安定がうかがい知れる。
まあ、ぶっちゃけあたしには雰囲気しかわからないけどね。
そして、中にいたのは予想通り王様と、そしてもう1人。
「お、こんにちはー、ガデ爺!それと陛下も!」
ガデライト・ゴルジアス。
この国、シエル王国の現宰相の爺さんが、元第二王子のユリウス王と一緒にいた。
「仮にも、王である私よりも先にそっちに声をかけるか。相変わらずだな。」
「ほっほっほ。久しぶりじゃのう、リタや。まあ、落ち着いて座りなさい。」
「はーい。」
「陛下、宰相閣下、お邪魔いたします。」
「うむ。」
「ご苦労だったなリーフィ侯爵。」
「はっ。」
「お邪魔―しますー。」
「サリアもよくぞ来た。」
「はいー。」
あたしたちはおとなしく席に着いた。
ここから話し合いが始まるわけなんだけど、そもそも・・・
「それで、何の用であたしたちを呼んだん?」
「本来であれば、他国の情報についてサリアから聞き出すだけのつもりだったのだがな・・・あるのだろう?重大な話が。」
「そうだねぇ。まずはあたしがここにいる経緯から話すべきかな。」
あたしは順を追って話をした。
修道院で麻薬の材料を見つけ、それを追ってきたこと。
その結果、ギャルム侯爵と、その裏にいる前王弟にまで当たりをつけたこと。
これらを報告し終わると、王様はため息を一つ。
「まったく・・・あの叔父は。本当に、何をやっているのだ・・・」
「陛下・・・ご心痛お察ししますぞ。あやつも、どうしてああなってしまったのでしょうなぁ。」
「そうか、爺は叔父を幼少期から知っているのだったな。」
「ええ。生まれた時から存じておりますわい。」
そう、このガデライト爺さん、現宰相であると同時に、二代前にも宰相を務めていた人物でもあるのだ。
本来は楽隠居だった爺さんが引っ張り出された原因は、もちろん過去のあたしが引き起こしたあの事件。
つまりは前宰相が息子のやらかしの責任をとって急遽辞任したことが原因だ。
「いつからだったか、あやつは王位というものに囚われてしもうた。きっと心無いものに耳元で囁かれたのであろうが、わしらは先々代の陛下も含め、当時はそれに気づいてやれなんだ。そこに罪悪感を感じなくはないが・・・あやつはやりすぎた。踏み込んでしまったんじゃ。もう、取り返しのつかんところまでの。」
そう言うガデ爺の表情は、とてもツラそうだ。
部屋の空気は重い。
でも、話は進めなければいけない。
口火を切ったのは、王様だった。
「これまで我々は君ら修道院を含めた信用できる者たちと調査を進めて来た。サリア、報告を。」
「はい。前王弟殿下に関しての調査結果は黒。他国との内通、及び違法取引を確認。また、リタの追っている麻薬に関してもここが出元である可能性が高いことがわかりました。」
「そんなとこに繋がんなくていいのに・・・」
ほんと、こんな大事になるなんてね。
思わずげんなりしてしまう。
「そうか。では、リタよ。」
「はーい?」
「事は叔父上による反逆。国が割れる事態も想定される。」
「つまりは、内戦が起きる?」
「そうだ。」
最悪だ。
そんなことになれば、割を食うのは一般民衆だ。
でも、もうこの流れは止められないんだろう・・・
「これこれ、リタよ。深刻に考えすぎるでない。」
「ガデ爺。」
「あくまでも、想定じゃ。それをさせないために、お主らに動いてもらおうと言うんじゃよ。」
あたしを安心させるように、ガデ爺は笑いかけてくれる。
やっぱり、このお爺ちゃんには敵わないなぁ。
「無論、マリア院長にも声をかける。」
げ。
「大仕事じゃ。わしも張り切らねばのう。」
「爺はマリア院長に会うから張り切るのだろう?」
「当然ですわい。なんせ、マリア院長はわしらのアイドル、高嶺の花ですからのう。ほっほっほ。」
「我らの世代でも有名ですぞ。なんでも、才色兼備で非の打ちどころのない令嬢だったとか。」
「ほほっ、懐かしいわい。よく見かけては憧れたもんじゃわい。」
うげぇ、あのババアが?
うっ!なんか考えたら寒気・・・ひぃっ!直感で本格的に本人に察知されたみたいな悪寒がぁ!?
「既に連絡は入れてある。指令は都度下すので、それに従って動いてくれ。諸君らには期待している。」
「「了解。」」
こうして、あたしたちは修道院から派遣されてくる仲間と合流して、事の対処に当たることになったのだった。
「・・・侯爵よ、手間をかけたな。」
「いえ、とんでもございません。」
「元気なのは良いことだが、元気すぎるのも考え物だ。」
「ほっほ。陛下も見習うとよろしい。その若さでそんなに考え込んでいては、すぐにわしのようになってしまいますぞ。」
「冗談でも止せ、爺。私はまだ21だ。」
「そうですぞ、陛下はまだまだお若いのですから。」
「そういうお主は若すぎじゃ。童顔にそのヒゲ、似合っとらんぞ。」
「そうだな。威厳どころか滑稽なくらいだ。」
「そんな、お二方まで!?」
「夫人からも不評なのであろう?さっさと剃れ。」
「むう・・・検討いたします・・・。」
あたしたちが退出した後、そんな会話があったとか、なかったとか。
ただ、少しして再会したリーフィ侯爵の顔に、ヒゲはなかったことをここに明記しておく。
次回の更新は4月19日(土)午前6時の予定です。




