第37話 童顔+ヒゲ=威厳?
おっ・・・す・・・あたし、リタちゃん・・・。
サリアから、一晩中お説教を受けて、長い・・・本当に長い夜が明けたよ。
「それじゃ、今回はこのくらいにして、侯爵を呼んでくる。」
口から魂が出かかっているあたしを放置して、サリアは部屋から出て行った。
「呼んでくるって、今、早朝じゃねえか。大丈夫か?」
相手は侯爵様だぞ?
・・・あー、でもあいつなら大丈夫か。
そう、リーフィ侯爵夫人であるアンネマリーと知り合いであるように、侯爵本人とも、あたしやサリアは知り合いだ。
じゃあ、わざわざ指輪を預かって身分証明しなくても良かったんじゃないかって?
そこは、相手はえらい人だから、形式とか大切なのよね。
そんな風につらつらと考えていたら、ドアがガチャリと開かれ、いかにも偉い人といった感じの、髭を蓄えた男が入って来た。
でも、顔は若いのに無駄に髭を蓄えてるから・・・
「似合ってないんだよねえ・・・。」
「声に出ているぞ。」
「声に出してるの。それ、いい加減にやめたら?似合ってないよ。」
そして声は渋いから、違和感が2つあって印象がぐちゃぐちゃになるんだよ、この侯爵。
「貴族には威厳が必要なのだよ。」
「見栄の間違い。しかもあまり意味のない。」
「む、お前もか、サリア。」
眠そうな目で侯爵の後から入って来た忍者女にも言われてる。
「アンネマリー様も嘆いてた。」
「何!?アンネが!?」
こいつ、奥さんに弱いから、これでこのヒゲはやめるかな?
「むぅ。と、ともかく!」
あ、話逸らした。
「わざわざご苦労だったな、リタ。」
「いいえー。はい、これお手紙。」
「どれ、拝見しよう。」
あたしから手紙を受け取った侯爵は、椅子に腰かけて中身を確認し始めた。
その間、あたしたちは暇なのでお菓子とお茶を用意してもらってティータイム。
はぁ・・・うまぁ。
ん?なに、サリア?
このクッキーをつけて食べてみろって?
そんな・・・行儀の悪い食べ方、修道院以外では流石に・・・うまぁ。
「久々に会ったが、全然変わっておらぬな、貴様ら。」
侯爵がため息を吐きつつ話しかけて来た。
「もういいの?」
「うむ、内容は把握した。なんというか・・・また、厄介な事態を運んできたものだな。」
「でも、気づけてよかったでしょ?」
だって、麻薬なんて水面下で広まったら、根絶は大変だからね。
依存性も高いし・・・百害あって一利なしだよ。
「それはな。しかし・・・。」
侯爵がパチン!と指を鳴らすと、給仕をしてくれていたメイドたちが部屋を出ていく。
人払いだね。
「こうなってくると、ますます怪しいな。」
「例の前王の王弟閣下?」
「うむ。実はこちらは別件で動いていたのだがな・・・」
「侯爵、ここからはわたしが。」
サリアが割り込んで来たってことは・・・
「うん。お察しの通り、他国関連。」
うわあ。
反応を読まれてることと、話が大きくなってきたことに2重の意味で、うわあ。
「そんな顔をするでない。・・・まあ、我らも同じ顔をしたがな。」
「だよねえ。欲をかいた商人の暴走だと思ってたら、ここまで繋がってとはね。」
「サリアが接触してきた辺りで嫌な予感はしていたがな・・・ともかく、ここからの動きなのだが・・・リタよ、お前には私と共に陛下と会ってもらう。」
「え゛。」
陛下って・・・あの元第二王子?
「嫌なんだけど。」
「知らん相手でもなかろう。」
「そりゃ、仕事柄会ったことはあるけどさ・・・」
あの陛下、なんか妙な圧を感じるから苦手なんだよね。
そりゃ、陛下から見たら、あたしはかつて自分の兄ちゃんを洗脳した相手だし、敵愾心を持つのはわかるけどさ。
こっちは記憶ないし、謝った上でこうやって国にも奉仕してるんだからそろそろ勘弁してほしいんだよなぁ。
「なんにせよ、これは決定事項だ。陛下に会いに行くぞ。正式な謁見はお前の立場上できないのだから、非公式なものになる。したくをせよ。」
「え、この後!?あたし徹夜なんだけど。」
「それはやらかした貴様が悪い。」
「ぐぅ。」
正論すぎて言い返せん。
くやしい。
「まだ少し時間はある。サリアと共に身支度を整えるのだな。」
「ん。いくよ、リタ。」
「そんなああああああああ・・・。」
こうして、あたしは王城へと行く羽目になったのでした。
身から出た錆びとはいえ、徹夜明けにお城行きはあんまりだよぉ。
次回の更新は4月12日(土)午前6時の予定です。




