第36話 和解+手紙=ジト目
おっす、あたしリタちゃん。
衛兵にも修道院の合言葉と事情を説明して帰ってもらったあと、あたしは改めてミア親子と話をしていた。
「いやー、ごめんね、話を聞いたら放っておけなくてさあ。」
「だとしても、やりすぎです!!」
お怒りはごもっともで。
だけど、ねえ・・・
「さすがに、もどかしくってさあ。子どもへの愛情はしっかり伝えなきゃだめだよ、おじさん?」
「まったく、その通りよな。文字通り、身に染みたよ。」
少し腫れた頬に手を添えながらそんなことを言う商会長。
うん、この様子ならもう大丈夫でしょ。
「じゃ、あたしは他のお仕事があるからもう行くよ。」
「そうか。では、今、礼を・・・」
「いらないいらない。大商会のトップを殴っちゃったからね。それを不問にしてもらうので、チャラってことで。」
「いや、でもそれってわたしのためだし、何もあげないわけにも・・・」
「ミア。ルタさん本人がそう言っているんだ。押し付けては逆に失礼に当たる。」
お、さすが商会長、わかってるぅ。
「だが、何かあったら訪ねて来たまえ。微力ながら力を貸そう。」
「そっか。じゃ、そのときは遠慮なく。」
大商会とコネができちった。やったね。
あ、でもそっか。
ここから縁が続くなら、ミアには言っておかないとね。
「ミア、耳貸してー。」
「はい、なんです?」
「あたしね、本当はリタって名前なんだよね。何か困ったら、こっちの名前を使って、レイクディーネの修道院を訪ねておいで。」
「!!・・・わかりました。その時は、頼らせてもらいます。」
「うん。」
さて、それじゃあ今度こそ。
「2人とも、またね。」
そんな風に、綺麗に分かれて商会を出た。
そこから、もちろん元の任務であるリーフィ侯爵のお屋敷に向かう。
貴族街を進み、辿り着いた立派なお屋敷で門番に指輪を見せて要件を伝えると、すぐに来客用の部屋に通された。
そこにいたのは、屋敷の主である侯爵・・・
「やっほ。」
ではなく、ディライトでも会った、諜報担当の忍者女サリアだった。
「散!」
あたしは途端に逃げ出した。
「一人なのに、散れるはずもない。」
しかし、回り込まれてしまった。
くそう!!
「逃げるってことは、自覚ある?」
「な、何が??」
こ、これはまずい!!
付き合いがそこそこ長いから、この眠そうな女の、感情の薄い顔でもわかってしまう。
「悪いことした、自覚。」
こいつ、怒ってる!
「い、いや、あたしはしっかりと仕事を果たしただけで・・・」
「その仕事って、手紙の配達と商会の娘の護衛でしょ?会長を殴る必要、あった?」
「いや、あの状況は放っておけないって!!そもそも、ただ情に流されたわけじゃ・・・」
「他にやりよう、あったよね?」
ジトーっとした目で淡々と詰めてくるサリア。
まずい!!
なんとか、あたしの行動の正当性の証明をしなければ!
「いや、でもあの状況ではあれが最善だったって!」
「本当に?」
「そ、それはもち・・・」
「本・当・に?」
・・・・・・
「正直、時間をかければもっとうまく事は運べたかもしれません。」
「でも、面倒くさくなったし、ささっとできそうだったから、殴った?」
「・・・はい。」
「お説教。」
「はい。」
あたしは、おとなしく頷いた。
こうして、場所を貸してくれた侯爵に会うこともなく、一晩中サリアからお説教をくらう羽目になったのだった・・・。
良い案だと思ったんだよぅ・・・。
次回の更新は4月5日(土)午前6時の予定です。




