第34話 旅+道連れ=友人
ども、あたしはリタちゃん。
王都への道中、最初の3日間の夜を森での強行軍に充てられたおかげか、残りの日程は普通に旅をすることができた。
ミアはその移動に早くも慣れきっていたからか少し違和感があったようだが、やはり普通の旅程に越したことはないようで、快適に旅を続けていた。
そして、そんな風に旅をしていれば、ミアとは自然と仲良くなる。
「ねえ、ルタちゃん。」
「なにー?」
「ルタちゃんはすごいね。」
野営中に雑談してたら、唐突に褒められた。
「でしょ?もっと褒めても良いよ?」
あたしは褒められて伸びるタイプだからね。
叩かれたら・・・叩き返すね。
「・・・うん、そうやって素直に受け取るのもすごいと思う。わたしにはできないから。」
おや、なんだか思い悩んでる感じ?
「わたしは大商会の娘で、周りは褒めてくれるのは当たり前。だからこそ厳しく自分を律して増長せず、確かな成果を上げなければならない。わたしの言動には、従業員とその家族の命がかかっているから。そう、教わって来たの。」
ミアはそう語りながら、パチパチと小さく爆ぜる焚火をじっと見つめている。
「だから、褒められることは基本的にない。出来て当然で、それは義務だから。上の人間の責任だから。」
「ずいぶんと厳しいんだね。」
「そうかも。でも、それはわたしも受け入れてる。ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、それでも褒めて欲しかったかな。」
そう言ったミアの横顔は、寂しそうで。
「誰も褒めてくれなかったの?」
そう、聞いちゃってた。
「最近は、ね。でも、小さい頃は普通に褒めてもらった気がする。ある程度大きくなって後継者教育が始まってからは、増長しないために・・・って。」
「そっか。」
うん、それなら。
「それなら、あたしが褒めてあげるよ。よくできましたって。」
「ふふ、なにそれ。」
「例えば、順応性が高くてえらい!とか。」
これは本当にそう。
少なくとも、一般人で数日であたしの背中で寝られるようになる子とか、他に知らないし。
「そんなのは当たり前だよ。できなきゃ生きていけないから。」
「それはそうなんだけど、それを実践して、言っちゃえば生き残ってる時点でえらいのさ。良く言うじゃん?生きてるだけでえらいって。」
「それを言うなら生きてるだけで儲けもの、じゃない?」
「そうとも言う。」
「そうとしか言わないって。でも、ありがとう。なんだか心がすっとした。」
言葉通り、ミアの顔にもう陰りは見つからない。
あたしなんかの言葉でも、少しは励ませたみたいで良かったよ。
そんな風に真面目な話やバカ話をして親睦を深めたあたしたちは、無事に王都へとたどり着いた。
ちなみに王都まで送ってという依頼だったけど、厳密には王都にある商会まで送って依頼完了となる。
なので、あたしたちは王都の大通りを歩いてパッセ商会の本店まで向かっていた。
「本当にありがとう、ルタちゃん。ここまで送ってくれて。それに話も聞いてもらえて楽しかったよ。」
「気にしないで、ミア。これも仕事だしね。」
「でも、これでルタちゃんとお別れか・・・寂しくなるね。」
ミアは思ったよりもあたしとの旅を気に入ってくれてたみたいだ。
それは嬉しいけど、しんみりするのはまだ少し早いんじゃないかなあ?
「・・・ルタちゃん?何か良からぬことを考えてない?」
「んー?いや、別にー。」
あたしは良いことしか考えていませんよ?
「なんか、怪しいけど・・・本当、暴れちゃダメだよ?ウチはちゃんとした商会なんだから、わたしが庇うのにも限度があるんだからね?」
「ただの商会じゃなくて大商会でしょ?大丈夫大丈夫。あたし、自分で責任取れないことは基本的にやらないから。」
そう、基本的には、ね。
訝し気な顔をしているミアと歩いていると、大きな建物が見えてくる。
パッセ商会の本店だ。
ミアは顔つきをキリリと引き締めると、商会の扉をくぐり、あたしもそれに続いた。
「いらっしゃいませ。おや、あなた様はミア様。おかえりなさいませ。」
「ええ、今戻りました。会長は?」
「会長でしたら奥にいらっしゃいますよ。ところで、そちらの方は?」
「ああ、こちらはわたしの護衛をしてくれたルタさん。事情は会長に説明しますので、奥に連れて行きますね。」
「はい、かしこまりました。ルタ様、従業員として、ミア様の護衛に感謝いたします。」
「いえ、仕事ですのでお気になさらず。」
とりあえず、猫を被って対応。
すると、ミアが何とも言えない顔でこっちを見ている。
まあ、そんなのは無視して、あたしはミアの案内で照会の奥へと進み、応接室に通された。
「じゃあ、今会長を連れてくるから、ここで待っててね。」
「わかったー。」
ゆるーく返事したあたしを置いて、ミアは部屋から出ていく。
さて、これから会長に会って事情を書いた手紙を渡してお仕事完了って流れな訳なのだけれど・・・
ここに来るまで、あたしとミアはそこそこ仲良く・・・率直に言って友達になった。
で、その友達の悩みっぽいのも聞いた。
なら、それを解決してあげたいと思うのが人情な訳で・・・
ガチャっと音がして、応接室の扉が開かれてミアと一緒に会長であろうおじさんが入って来る。
「あなたがルタさんですか。ウチのミアが大変お世話になったようで・・・」
そして挨拶をしだしたところであたしは踏み込みをかけて会長の目の前に現れると、
「こんの不器用親父がーー!!」
バチンっと平手打ちをかまして会長を吹っ飛ばしたのだった。
「お父様―!!何やってるのルタちゃんー!?」
ちなみに、いくら訝しんでいたと言っても、ミアは予想外すぎてツッコむことしかできなかったそうな。
次回の更新は3月22日(土)午前6時の予定です。




