第33話 修正+強行=跳躍
今回は2視点でお送りします。
<リカルド視点>
まったく、あのお嬢ちゃんにも困ったもんだ。
軍を含め、国と密接な関りを持つ独自勢力・・・いや、あれはもはや国の暗部だな。
いや、暗部は別にちゃんとあるけども。
軍では末端の兵士に至るまで、最優先で符丁を教えられるほど密接な関係の連携機関だ。
もちろん、符丁の中身を知るのは上役だけで、末端は上に伝える義務を負うのみ。
そんな特別扱いされる符丁を、3年前のある日に部下が伝えて来た。
会いに行ってみれば、ずいぶんと小さいのがいて驚いたもんだ。
まあ、そのすぐ後にもっと驚くことになるんだが。
その小さな体に見合わぬ凶暴なまでのパワーに、冷静な状況判断力、そしてその見かけを活かした偽装能力。
自由奔放な性格は軍とは相性が良くなかったが、それでも正直に言えば、部下に欲しい逸材だった。
そんな逸材が送り込まれた当時の事件は国としてはそこそこ大事だった。
その逸材が成長してまた送り込まれてきたってことは、今回はそれを越す大事だってことだ。(*本当は偶然)
これは気合を入れて内部の掃除に乗り出さないとな。
今から向かう会議室で待っているあいつ・・・貴族の後押しで最近頭角を現してきたあの新参の将校が頭に浮かぶ。
国軍という地位に実力が求められる組織において、どう見ても実力が立場に見合っていないあいつが将校なんて高い地位に就くことができたあたり、キナ臭さは感じていた。
だから他の仕事を隠れ蓑に調査を行った上で、証拠集めに駆けずり回った。
敵も上手いもんで、最初は手こずったが最近はいろいろと管理が杜撰で、面白いほどに証拠も集められた。
さあ、そろそろ年貢の納め時だ。
俺は気合を入れて会議室の扉を開けると、いやらしいにやけ面のそいつを見つけて近づき、問答無用でぶん殴ったのだった。
「証拠は挙がってる。黙って捕まるか、もう一発くらうか選ばせてやろう。」
<リタ視点>
『アアアアアァァァァァァァァーーーーーー!!??』
おっす、あたしリタちゃん。
そして背中で叫んでいるのはミア。
リカルドの依頼で王都まで護衛しているわけなんだけど、こっちは元々リーフィ侯爵夫人の依頼で動いている。
そんな中で誘拐されて足止めくっちゃったんだから、行程に余裕なんてあるはずもなく。
いや、本当はあったんだけど、あたしがのんびりしちゃってたから、余裕がなくなったわけで。
ってことで、ただいま夜の10時くらい。
本来なら野営をしている時間にも関わらず、あたしはミアを背負って、しかも街道から外れた森の木々の枝をぴょんぴょん飛んで近道をしているのです。
「る、ルタちゃんルタちゃんルタちゃあああああん!!」
あ、ルタってのはあたしの偽名ね。
ミアにはまだ本名名乗ってないので。
とりあえず、バレるまでは都合がいいからこれで通そうと思ってる。
「なーにー?下手にしゃべると舌噛むよー?」
「いいから、一回止まってくださいー!!」
「んー?」
とりあえず、勢いを殺しつつ、少し先の木の上で一旦停止。
「どうしたの?トイレ?」
「・・・そうではないですが、そうですね。少し、休憩させてください・・・。」
「んー。わかったー。」
ってことで下に下ろしてトイレ休憩。
まあ、森の中だから物陰で済ますだけなんだけど、そこは便利な道具がある。
ずばり、携帯トイレキット!!
かさばらず、手軽に安心して出先でもトイレができる優れもの。
しかも、あたしの持っているのは修道院から支給されている魔道具が組み込まれた高級品!!
・・・まあ、任務次第では敵にバレるってことで持っていけないこともあるんだけどね。
そういう場合、女所帯の修道院は敵への殺意が五割増しになります。
いや、たぶん男でも変わんないか。
とまあ、それは置いておいて、そいつをミアへと貸し出してしばらく待っていると、所要を済ませたミアが青白い顔をして戻って来た。
「お待たせしました。」
「はーい。じゃ、移動を再開しようか。」
「ちょ、ちょっとお待ちください!!」
「ん?」
ミアが必死な顔で止めて来た。
なんだろ?
「その・・・時間が惜しいのも、移動距離を短縮してるのもわかっています。運んでもらっている身で厚かましいのも承知です。ですが、せめて地面を行きませんか!?」
あー、荒事や旅に慣れているとはいえ、さすがに高い木の枝の上を伝う移動はキツかったかー。
「でも時間がないからねー。それに、下は足場が悪いから、もっと小刻みに揺れるよ?それで寝れる?」
「そもそも寝れません!!」
それはそう。
でも、寝ないとしんどいと思うんだよねえ。
「ミアは旅慣れてるみたいだし、睡眠の重要さは知ってるでしょ?寝なきゃダメだよ?」
「無理です!!それに、それを言ったらルタちゃんも寝てないじゃないですか!!」
「あたしは大丈夫。慣れてるから。」
そういう訓練も受けてるしね。
いや、ホントあの修道院スパルタだよねえ。
やっぱババアはおうぼ・・・ぅ!?なんか寒気が!?
「ホント、何者なんですかルタちゃんは!?」
「しがない貴族の小間使いだよー。」
「絶対に嘘ですぅー!!」
はい、そうです嘘です。
でも、このまま問答しててもキリがないな。
あたしは譲る気はないし・・・
あ、そうだ。
「一つ聞きたいんだけど、寝ちゃえば気にならない?」
「いや、そもそも寝れないんですが。」
「もしも!もしも寝ちゃえば?」
「どうでしょう?旅の間は寝浅く眠るのは癖になってますし・・・」
あー、旅に危険は付き物だし、それはそうかあ。
うーん・・・
「あたしを信用して一切を預ける覚悟があるのなら、寝てる間に運べると思うんだけど・・・」
「え?・・・・・・。」
あ、怪しまれてる。
ジト目で怪しまれてる。
「それって、わたしをなんらかの方法で寝かせて・・・ってこと?」
「うん。」
「ちなみに、その方法は?」
「薬を嗅ぐか、殴って気絶。」
「バイオレンス!?」
まぁ、だって他に方法がないし、あたしは急いでるし。
「後者は絶対に嫌です!!」
「まぁ、痛いのは誰でも嫌だもんね。じゃあ、薬にしよっか。」
「寝るのは確定なんですか!?」
「うん、確定。」
だって明日に響くだろうし。
「・・・わかりました。」
すっごい渋い顔して返事した。
本当に嫌そう。
でも、他にどうしようもないしね。
「じゃ、さっそく。」
「ちょ、心の準備・・・を・・・。」
はい、近づいて嗅がせて、一丁上がりっと。
そんなこんなで、最初の夜は少し揉めつつも、あたしたちは王都へと向かった。
2日目の夜もミアは薬で眠ったけど、3日目はさすがに慣れたのか、普通に背中で眠ってた。
この子、順応性すごいな。
あたしは普通に関心した。
そこからは特筆すべきイベントも特になく、あたしたちは順調に王都への道を進んでいったのだった。
次回の更新は3月15日(土)午前6時の予定です。




