第24話 助力+権力=闇の入口
「なんでも、ウチの領に麻薬を扱う商人が出入りしているそうね。」
「ええ。身辺管理のできていなかった、私の不徳の致すところです・・・。」
「いやいや、おっちゃんは悪くないだろ。騙された側なんだしさ。」
「いいや、リタちゃん。私も商人だからね。騙される方が悪いんだよ。」
そう言ったおっちゃんは真顔で、本気でそう思ってるみたいだ。
やっぱり、商売人ってのは厳しい世界なんだなあ。
「責任の所在を問うつもりはありません。しかし、我が領民に麻薬の被害が出る可能性があるというのなら、見過ごすこともできません。リタちゃんも含め、私の手足になって頂きます。」
アンネマリーは堂々とそう言い切った。
さっきまでの思い出を懐かしんでいたお姉さんは、もうここにはいないらしい。
今、目の前にいるのは領地運営に全力を注ぐ貴族夫人だ。
「ミミ。」
「はい、奥様。こちら、先だっての調査をまとめたものになります。」
仕事早っ!?
まだ知らせてから2日しか経ってないはずなんだけど!?
とりあえず、その資料をあたしたちも見せてもらうことになった。
「・・・なんということだ・・・!?」
おっちゃんが頭を抱える。
そして、それはあたしも同じであった。
「うっわ・・・マジかよ。」
「あなたたちが目星をつけていたのは北のオルレ伯爵でしょう?」
そう、今あたしたちがいるリーフィ侯爵領はレイクディーネのあるディーン辺境伯領の東にある。
そして、ここから見て北にあるオルレ伯爵領には、あたしが取り逃がした「誓いの剣」の元副クランリーダーがいる可能性が高かった。
あたしとおっちゃんはその手がかりと協力を求めて、このリーフィ侯爵領に来た訳なんだけど、目の前の資料を見る限り来て正解だったみたいだ。
「ミミ、情報の出どころは確かなのよね?この情報、間違いは許されないわよ。」
「はい、もちろんです。」
アンネマリーがミミに情報の出どころを念押しした理由、それは・・・
「麻薬の出元を探っていった結果、北方のギャルム侯爵領の関与が濃厚になりました。」
敵が、リーフィ侯爵領と同格のギャルム侯爵領である可能性が浮上したからだった。
「そう・・・あの狸親父、やってくれるわね。」
「リーフィ侯爵夫人。ギャルム侯爵様といえば、温厚で人格者だと評判の方ですが・・・。」
「ええ、その評判があるのは知ってるわ。というより、社交界でも同じ評判よ。・・・でもね。」
一旦言葉を区切ったアンネマリーは手に持った扇をパン!と広げると、言葉を続けた。
「なんとなく、わかるのよね。嘘をついてる人間って。」
「それは、所謂・・・」
「そうです、女の勘というやつです。リタちゃんには、まだ使いこなせないでしょうけど、私のは良く当たるわ。」
「やかましいわ!で、その勘に、なんでギャルム侯爵が引っかかった訳?」
「彼、違和感があるのよ。それが何かまではわからなかったけど、今回の件でそれも明らかになるかもしれないわね。」
「では、夫人。」
「ええ。ギャルム侯爵を仮想敵として、動き始めましょうか。」
「メイドとして、腕が鳴りますね。」
「メイドってそんな好戦的な存在だっけ?」
「我がリーフィ侯爵領ではそうかもね。」
「おお、それは頼もしい限りですな。」
こうして、麻薬原料事件を追うための、大がかりな悪だくみが始まったのだった。
次回は8月19日(土)午前6時に更新予定です。




