第23話 回顧+現在=おっちゃん
「それにしても、リタちゃん大きくなったわねー。」
「そりゃ、初めて会ってから5年くらい経ってるからな。」
こんにちは、あたしリタちゃん。
リーフィ侯爵領の領主邸にガリットのおっちゃんとこっそり来たら、昔話が始まったの。
「そうねえ。思い返せばあの時は大変だったわ。ねえ、ミミ?」
「ええ。今思い出しても、血の気が引きますね。」
「まあ、物理的に血の気が引いてたのはあたしだったけどねー。」
「と、言いますと?」
ああ、そういえばガリットのおっちゃんには話したことなかったな。
「この子、魔力封じの腕輪を無理やり破った挙句、魔力で作った剣で自分の左腕を切り落としたのよ。」
「はい!!??」
ガリットのおっちゃんが絶句している。
まあ、内容が内容だし当然の反応だよね。
いやー、あの時は必死だったからなー。
気が付いたら牢屋で、状況がわかったと思ったら最悪を通り越して極刑手前なんだもん。
なんとしても誠意見せなきゃ殺されるって思ったんだよなあ。
今思えば、混乱してたのはあるよね。
自意識が覚醒してすぐだったし。
それに。
「あのままじゃ、夫人に殺されてただろうし。」
「あら、私にそんな権限はなかったわよ?」
「いえ、アンネマリー様。当時のリタ様への剣幕は、それはもう恐ろしいものでしたよ。」
「そんなこと・・・あったかも、しれないわね。ええ。」
「ほらみろー!」
マジで怖かったんだからな!
中身が平和な日本人であるあたしに、本気の殺意はきつ過ぎだったんだって!
そりゃ、喧嘩ならそこそここなしてたし、自分より強いやつと戦ったことだってあったけど、あれはあくまで平和な法治国家での話。
こんなファンタジー世界の封建国家ほど簡単に、本気の命の奪い合いなんて起きなかったわけで。
しかも、実はあたしの前世の記憶、結構あいまいなんだよねえ。
当時の名前とか、具体的に何歳まで生きたかとか、何で死んじゃったとか。
そこら辺、まったく思い出せないんだよ。
でも高校に通ってた記憶はあるから、前世のあたしは多分、高校生で死んだんじゃないかとは思ってる。
「もう・・・当時はいろいろと大変だったんだから仕方ないでしょう?」
「そうですね。アンネマリー様は弟君の関係でいろいろと巻き込まれておいででしたから。」
「ああ!財務大臣補佐のハリー様ですな。」
そう、このアンネマリー・リーフィアの旧姓はボウティ。
現財務大臣のボウティ子爵家の長女なのである。
なんでも、今財務大臣の補佐をやってるハリー・ボウティって弟が記憶を失う前のあたしに大変迷惑をかけられたらしく。
まあ、具体的にはリタ・ルディガン男爵令嬢に誑かされた奴らの手綱を頑張って握っていたらしい。
奴ら、学園っていう閉鎖空間と実家の権力でだいぶ悪い方向に幅を利かせていたらしく、その一員のフリをしていたハリーさんも、その家族であるアンネマリーもとても肩身の狭い思いをしていたそうだ。
「っていうか今更だけど、ガリットのおっちゃんにここら辺の話聞かせちゃっていいの?」
「本当に今更ですなあ。」
「ええ、問題ないわ。ガリットなら人格的にも信頼できるし。」
「そうですね。ガリット様でしたら大丈夫かと。」
いや、すげえなおっちゃんへの信頼。
あたしとしては近所を回る気のいい社長って感じの認識だぞ。
ん?いや、社長って認識の時点ですごいのか。
「ははは。伊達にレイクディーネ近郊で活動している訳ではないのですよ。」
そういや、あそこ国の指定も入ってる重要拠点だったわ。
別名「更生都市」なんて言われてるし、ほんと特殊な場所だよなあ。
「さて、話は聞いております・・・。」
どうやら、あたしの身分を隠してまでここに来た本題が、ようやく始まるようだ。
次回は8月12日(土)午前6時に更新予定です。




