第21話 提案+理由=前提
「ここの見張りいつもしてる牢番のおっちゃんさ、腰にあったの剣でしょ?鉄格子の隙間から小指出すからさ。それでスパッと頼むよ。」
牢屋の中のいるリタは軽い調子でそんなことを言い出した。
あまりにもあっさり言うものだから冗談かと思いきや、その目には本気の炎が宿っている。
「お、お待ちなさい!あなた、いきなり何を言い出すのですか!?」
「いや、実はいきなりでもないんだよね。あたし、何にも覚えてないじゃない?で、起きたら牢屋なんかに入ってる。あたしには記憶が無くても、なんかやらかしてるってのはわかる訳じゃない?」
「そうですわね。」
「で、他にわかんないから、牢番のおっちゃんに色々聞くわけ。でも、ほとんどまともに答えて貰えないんだよね。なんなら、身に覚えのないことで責められたり、疑われたりしたし。扱いが、完全に情報を与えちゃいけない重罪人に対するそれだった訳だ。」
「それは・・・仕方のないことですわね。以前のあなたが行ったのは国家反逆罪。そこにあなたの意思があろうとなかろうと、本来であれば死罪が相当ですわ。」
予想をはるかに超えたやらかしに、リタは少し理解に時間がかかった。
リタがそんなナウローディングな中、メルティーナの今の発言にアンネマリーがくってかかる。
「メルティーナ様!」
「いいのですわ、アン姉様。この子のためにも、むしろそれははっきりさせなければなりません。」
「ですが!」
「大丈夫ですわ。・・・さて、それじゃあ話を戻しましょうか。どうして、指を詰めようなんて言いだしたのかしら?」
「・・・はっ!」
メルティーナに話を振られ、ようやく意識が現在へと帰ってきたようだ。
リタは何とか頭を回しながら、慎重に質問に答えようとする。
「えっと・・・いいの?なんかまずいんじゃないの?これ以上、あたしの立場を悪くしたくないんだけど・・・。」
「ご安心なさいな。今回の件に関して、ある程度の裁量は陛下から頂いていますもの。あなたの立場は、少なくとも何かを知ったからという理由で悪くなることはありませんわ。」
「そっか。・・・えっと、指を詰めようとする理由だっけ?そんなの単純な話だよ。死にたくない。ただ、それだけの話。」
「あなた!!あれだけのことをしておいて、何ですかその言いぐさは!!」
「アン姉様!落ち着いて。」
「・・・失礼、取り乱しました。」
「無理もないですわね。お身内が大変でしたもの。」
メルティーナのその発言を聞いたリタは、内心でげんなりする。
本当に過去の自分は碌なことをしていないな、と。
しかし、そんな心境でも生き残るためには情報は集めねばならない。
「ごめん、さっき国家反逆罪とか言ってたけどさ。そもそも、あたしは何をやらかしたのかを教えてもらっても?」
「そうですわね、まずは前提として───」
そしてメルティーナから一通りの話を聞いたリタは、思わず頭を抱えて蹲るのだった。
過去の自分は、本当になんてことをしてくれやがったんだ!!と。
次回の更新は7月29日(土)午前6時の予定です。




