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第14話 正座+裏切り=毒

やあ、あたしリタ・・・じゃなくて、今はルタちゃん。


ディライトって街で一番のクラン『誓いの剣』。


そのクランハウスに店長とミユキ姉と合わせて3人でカチコミをかけた結果・・・


「・・・じゃあ、言い分を聞こうか。」


「その、何と言うか・・・」


「うふふ。素直に言っちゃった方が、すっきりするわよ?」


「あの、ですから・・・ボクには何がなんだか・・・。」


目の前で、店長たちにそのリーダーが正座させられてます。


「はぁ・・・。じゃあ、状況を教えようか。」


「ですわね。本当は自分で気づいて欲しかったのですけれど。」


「いや、それは無茶でしょ・・・。」


いきなりあたしらが突撃したから混乱してるし、それにさっき逃げたやつとの絡み方からすると、この人何にも知らないと思う。


「ボクとしても、教えてもらえないと、何が何やら・・・。」


「・・・そうだね。」


今朝からの一連の騒動。


その目的が、ようやく店長から明かされた。


昨日、食堂で暴れた酔っ払いが泡を吹いて倒れたこと。


酒に薬を盛られた疑いがあること。


そして薬を盛ったのが、『誓いの剣』の構成員だったこと。


それらの事情を店長から聞いたカインの正座は、すぐに土下座へと変わった。


「本当に、申し訳なかった!!!!」


「・・・謝るのが早いね。少しは、仲間を信じようとか思わないのかい?」


「いつもならばそうしている。だが、最近入団者が増えて、全員を把握できていなかったんだ・・・。」


さっきまでの仲間想いな行動をする人が結成したクランにしては、いろいろおかしいなとは思っていたけれど・・・。


なるほど、そういうことだったのか。


「それは、やっぱりブレイたちがいなくなったから、かしら?」


「そういうことになる。」


「えっと、さっき言いかけていましたよね。確か、食中毒とか。」


「君、あれほど食料は大切にしろと・・・!!」


「うふふふふふ。」


い、いけない!


飲食業従事者がお怒りじゃ・・・!!


「も、もちろんわかっていたとも!!厨房担当は専用に雇っていたし、自分たちも注意を払っていた!!」


「でも、現実に食中毒は起きているよね?」


「監督不行ねぇ?」


2人の怒りが高まる。


あれ、だけど・・・。


「じゃあ、衛生面じゃないってことですか?」


「えっと、君は確か・・・ルタさん、だったね。」


「はい。」


「ルタちゃん、何か気づいたのかい?」


「はい、料理長。その食中毒って、もしかして食中毒じゃなかったんじゃないのかなって。」


「食中毒じゃなかった?・・・なるほど。」


「・・・そういうことですか。」


あたしと同じ思考に至ったらしい2人の顔が険しさを増した。


「ボクはピンと来ないんだけど・・・つまりは、どういうことだい?」


「その食中毒って、本当は毒を盛られた結果なんじゃないか、って思うんです。」


「何だって!?」


そう、その方が自然なのだ。


思えば、今回の突撃も冒険者が薬を盛られたことから始まってる。


偶然発生した食中毒ではなく、何者かが薬を盛って『誓いの剣』の幹部を療養まで追い込んだ。


そして、入団者を増やして、クラン内にカインの目が届かない兵隊を手に入れたんだ。


「そして、さっきのやつの、あの反応です。」


「カインの言葉を遮ったやつだね。」


「はい。カインさんはやつを庇いましたけど、あの時、やつは嫌な目をしていました。」


「そうねえ。あれはないわよねえ。ちなみに、カイン君。さっきの彼のことは?」


「・・・新しく入ってきたメンバー、としか。」


「わからない訳か。」


「なら、やつも食中毒の偽装に関わっている可能性がありますね。」


「だが、彼は食中毒事件の後にクランに入ってきたんだよ?」


「はい、なので正確には、毒を盛って食中毒を引き起こした人物の仲間の可能性が高いです。」


「なるほど。じゃあ、現時点で怪しいのはここ最近の人事をしっかりと把握していた人物ってことになる。」


「そうです、料理長。」


「ねえ、カイン君。君以外で主だった書類の処理をしていたのは誰かしら?」


ミユキ姉のその問いに、さすがのカインも事態を把握したのだろう。


その顔に驚愕と困惑、そして悲しみを滲ませながら、その人物のことを口にする。


「・・・副クランリーダーの、ルータスだ。彼が、ボクを支えてくれていた。」


副クランリーダー・・・確か、さっきあたしが殴り飛ばした偉そうなやつがそうだったはず。


そして今、この場にやつの姿はない。


そこからさらに、カインに詳しい話を聞いた。


『誓いの剣』では幹部がほとんどカインのパーティからの繰り上がりらしく、登用の公平性のために新規の人物も幹部に加えていたらしい。


その内の1人がルータスだ。


彼は1か月前に幹部に加わり、食中毒を機に暫定的な副リーダーに就いた。


しかし、あくまでも暫定的な立場であるはずなのに、いつの間にか正規の副リーダーのように振る舞って、それが定着していたそうだ。


話を聞けば聞くほどに、怪しさが増してゆく・・・。


もう、確実にこいつじゃないかな・・・明確に乗っ取りをかけてるし。


この場にいる全員が、ルータスへの疑いを深めたその時だった。


ズゴオオオオン!!といった感じの轟音が、外から聞こえてきたのは。


それは、どうやら爆発音のようだ。


あたしたちは急いで外に出ると、音の発生源を探した。


そして、それは案外すぐに見つかった。


「あれは・・・」


「煙だ!」


少し離れた場所から、黒い煙が立ち昇っていたんだ。


急いでそこまで向かうと、多くの野次馬が集まっていた。


「人が倒れてるぞ!!」


「うわ!黒焦げじゃねえか・・・。」


「惨いことを・・・。」


「見ろよ、眼鏡もひん曲がってやがる・・・。」


眼鏡。


その単語が聞こえたとき、あたしの頬に汗が伝った。


嫌な、予感がした。


その予感は当たっていたらしく、この少し後、野次馬をかき分けて行ったあたしは、見覚えのある眼鏡がひしゃげているのを目撃したのだった。



次回は6月10日(土)午前6時に更新予定です。

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