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第12話 暴力+眼鏡=粉砕

追記:6月30日

商人の名前が「ガンツ」になっていたため、「ガリット」に修正しました。

やあみんな、元気にしてるかな?


あたしはリタちゃん。


ここ、ディライトの街に『ルタ』って名前でウェイトレスとして潜入してるしがない修道女だよ。


そんなあたしは今・・・


「何してる!止まれ!!」


「邪魔だよ。」


「ぐあっ!!」


「ジーン!!お前、よくも・・・」


「はい、あなたもどいてねー。」


「ぎゃあああああ!!」


「応援を!!他の奴ら呼んで来い!!」


「・・・・・・。」


街一番のクランハウスに、3人で殴り込みをかけています。


店長は大きめのフライパンを、ミユキ姉はお盆を武器に暴れまわっている。


あたし?あたしは素手。


「ねーねー料理長。」


「なんだい、ルタちゃん?」


「ここって、この街で1番大きなクランのクランハウスなんですよね?そんなとこにこんな派手に殴り込んで、お店や料理長は大丈夫なんです?」


このクランと繋がりのある街の有力者とか、敵に回しちゃわない?


あたし、これでも本当は追放修道院の修道女。


有力者・・・まあ、要は貴族とか富豪だね。


そういったやつらの面倒くささはこの5年で嫌というほど実感した。


だから、心配なんだけど・・・。


「あー、大丈夫大丈夫。ここのクランリーダーが駆け出しの頃、面倒見たりしてあげたから。」


「そうよー。この人に頭が上がるはずないんだから。と、いうよりもルタちゃん。」


「?」


「この人、町の有力者の一族よ。」


あ、そういえば。


店長ってば周辺で1番大きな商会の長であるガリットのおっちゃんの親戚だったね。


「ね。だから、正々堂々と乗り込みましょう。」


うふふ、と笑いながらミユキ姉が追従する。


ってか穏やかに笑ってるように見えるけど、ミユキ姉もキレてるな、これ・・・。


「成長と増長をはき違えたおバカさんには、お灸を据えないといけないわねぇ。うふふふふふふ。」


み、ミユキ姉の後ろからなんか黒いオーラが・・・こっわ。


「前からバカだとは思っていたけど、愛すべきバカだと思ってたんだけどねえ。僕の人を見る目も鈍ったかな?」


なんて、店長とミユキ姉は軽口を叩きながら奥へと進んでいく。


もちろん、この会話の間も迎撃に来た敵はちゃんと撃退してる。


おかげで、この2人+あたしが通った後には人のカーペットが出来上がっちゃってるよ。


ここのクランリーダー、もしかしなくても怒らせちゃいけない2人を怒らせちゃったんじゃない?


ん?そんな中、あたしはどうしてるのかって?


「あの2人はやべえ・・・お!いいとこにカモが・・・」


「うるさい。」


「ひぎゃぶっ!!」


もちろん、降りかかる火の粉を払っております。


確かにあの2人に比べたらインパクト足りないかもだけど、いくら何でも舐めすぎでしょ。


?なんだろう、この違和感。


・・・そっか!


あの2人のところに向かっていくやつらは普通なんだけど、あたしのとこに来るのは舐めてかかってくるチンピラばっかりなんだ。


ってかここって街で1番の規模のクランのクランハウスなんだよね?


いくら規模が大きいとは言ってもチンピラ多すぎない??


出てきた敵の半分くらいチンピラなんだけど。


おかげで、最もおとなしいはずのあたしが撃墜数1位なんだけど!!


「ねー、て」


「料理長ね。」


「料理長―。なんかおかしくないです?」


「そりゃ、おかしくなきゃ僕の店に手を出さないよね。」


「いや、そうじゃなくて。ここって誰でも入れるクランなんです?」


「そんなクランが街で1番の規模になれるはずないでしょー。」


「じゃあ、なんでこんなにチンピラ多いんです?質が悪すぎません?」


あたしの言葉に、店長は手を動かしながら考え込む。


「・・・人数が多ければ質も下がるのは当たり前だと思っていたけど、確かに言われてみれば変だね。」


「ええ、料理長。わたしも以前からこのクランのことは知ってますけど、こんなにひどくはありませんでしたわ。」


「そうだね・・・まあ、なんにしても。」


「ええ、そうですわね。」


「「殺ることに変わりはない(ありません)ね!!」」


「おお、息ぴったり。」


さすが、結婚秒読みなだけあるなあ。


さて、そんなこんなであたしたちは奥へと進んでいったわけだけど、その途中。


「お前ら!!何をやってる!!相手はたかが3人だと報告を受けているぞ!!」


いかにも偉そうなのが、奥から怒鳴っている。


こいつがクランリーダーか?


「く、これだからクズは使えんというのだ。」


うわ、すごい言い様だな。


神経質そうな顔に眼鏡をかけた本人の方がひ弱そうに見えるけど・・・。


まあ、とりあえず。


「料理長―、ミユキ姉―。」


「わかったよ。」


「思いっきりどうぞー。」


うん。まだ1週間だけど、もう言葉にしなくても伝わるんだね。


「んじゃ、遠慮なく」


2人がさりげなく空けてくれた道を、全力で踏み込んで・・・


「な!?」


そのすかした顔面に全力で!


「拳を叩き込む!!!!」


「げぶらばぎゃあっ!!??」


偉そうな男はあたしの拳できりもみ回転をしながら吹き飛んでいく。


「あー、スカッとした。」


あたし、ああいう偉そうなの嫌いなんだよねー。


やつの敗因はたった1つ。


たった1つのシンプルな答えだ。


やつはあたしをイラつかせた。


さて、気を取り直して敵の殲滅を再開し・・・あれ?


なんか、すんごい静まり返ってない?


「・・・やべえ。」


「副リーダーがやられたぞ!?」


「あの小さいのが一番やべえ!!」


あらら。


敵さんはすっかり怖気づいちゃって、腰も引けちゃってる。


これなら後は簡単に行けそうかな・・・なんて思っていたその時だった。


「みんな!!無事か!?」


長い金髪をキラキラさせて、他とはあからさまにオーラの違う男が奥から出てきたのだ。


まだ一仕事残ってたか・・・なんてあたしは思ってたんだけど、それはキラキラ野郎の次の一言で杞憂へと変わった。


「ここを攻めてくるなんて、いったいどこの誰が・・・て、ててて店長ぉぉぉぉぉ!?」


なんて、叫びながら大げさに仰け反られれば、あたしがどれだけ鈍くてもわかる。


「料理長ね。久しぶりだね、カイン。ちょっと、元気が過ぎるんじゃないかい?」


この金髪キラキラ野郎が、このクランハウスの主で、あたしたちの殴り込み先。


店長たちはこの見るからに他とは別格の男にお灸を据えるつもりみたいだけど、はてさてどうなることやら。


・・・ってかカインって名前なんだね。



次回は5月27日(土)午前6時に更新予定です。

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