第1話 集会+拳=修道女
新連載です。
これからよろしくお願いします。
ここは、とある小さな村。
人口約30人からなる小規模集落。
そんな村は今、悲鳴と怒号に包まれていた。
踏み鳴らされる振動で地面は揺れ、あちこちから破壊音が響く。
「あら。」
それは今、わたくしがいるこの集会所も例外ではなく。
外部の喧騒が大きくなったその時、入口の扉が大きく開かれた。
「グガルルル・・・。」
飛び込んできたのは大きな狼。
大型バイクくらいの大きさはあるでしょうか。
「いけない!!シスター様!!」
「早くお逃げください!!」
周囲の方が声を張り上げます。
わたくしを逃がしてくださるおつもりのようです。
こういった事態は初めてではないのでしょうね。
とはいえ、目の前の大きな狼──フォレストウルフはわたくしから目を離しません。
せっかくのご厚意でしたのに・・・仕方ありませんね。
「シスター様!!!しっかり!!!!」
必死な呼びかけは、もはや叫びといっていい代物ですわね。
目の前のフォレストウルフは、大きさからして群れの主でしょうか?
そんな魔物と相対して、敬虔な修道女が微動だにしないのですから。
周囲から見れば、足がすくんで絶体絶命といった感じでしょう。
ですが・・・
「問題ありませんわ。」
わたくしは穏やかにそう言い放ちます。
その言葉を皮切りに、目の前の巨躯は小さな獲物へと飛び掛かってきます。
その鋭く大きな爪は、少しでもかすればわたくしのような少女など簡単に切り裂き、禍々しい牙の並んだ口は、骨などものともせずにかみ砕くでしょう。
ですが、そんなものはなんの問題もありません。
なぜなら──
「グギャンッ!?」
見切って躱す必要すらもないほどに、その顎先に拳を叩き込むなど簡単で。
「鈍いんだよ、ワン公が。」
思わずそう、吐き捨ててしまったのだから。
「にしても、やっぱ動きにくいな、これ。」
もう面倒だし、外面とか今更だし。
「えーい、ビリビリーっと。」
足首まであるスカートを破り、スリットを入れる。
うん、動きやすい。
「やっぱあたしはこっちのほうがいいわ。」
首を左右にコキコキと鳴らす。
目の前のデカ狼は完全に伸びているみたいだし、起きられても面倒だ。
両手を使ってコキュッと絞める。
「あと血抜きだな。」
手刀どすっ。
どばどばどばー。
処理も終わって、次の行動に移ろうとする。
周囲は唖然として固まっているが、まあいつものことだ。
「じゃあ、あたしは外の応援に行くから。あんたらはここで大人しくしてなよ。」
「・・・・・・。」
「おい?」
「・・・・・・。」
「おいって!!!」
「あ、はい!!」
固まっていた1人がようやくこっちの呼びかけに気づいた。
「あたしは行くからな?」
「はい。お気をつけて・・・。」
若干放心気味で少し気になるが、まあいいか。
あたしが集会所から出ると、そこに広がっていたのは蹂躙劇。
ただし・・・。
「えい!!」
「たあ!!」
「おくらいあそばせ!!」
「「「ギャバルルアアッ!!??」」」
人間陣営による、魔物陣営への一方的な殺戮であった。
「まあ!!遅いですわよリタさん!!」
モーニングスターをぶん回しながらそんなことを抜かす同僚のリリス。
頭の横についてる2つのドリル、両方燃やしてやろうか?
「うっせえ!そっちこそ中までデカい狼通してんじゃねえよ!」
「あら?ごめんあそばせ。野蛮なあなたのことですから、生で踊り食いがお似合いだと思いまして。」
「あ゛あ゛ん!?」
「はあ!?」
「はいはい、2人とも。まずは敵を倒すのが先。」
みんなの姉を自称するマリーがそう声をかけてくる。
マリーには世話になっているから従わざるを得ないな・・・。
「ちっ。命拾いしたな“デスドリル”。」
でもちょっとした仕返しはしておこう。
「こっちのセリフでしてよ“ボサボサ娘”。」
「「なんだと(ですってえ)!?」」
思わず反応が揃ったが、納得がいかない。
そっちは外に出てるだろうが!
こっちは頭巾で隠れてるからいいんだよ!!
「2・人・と・も?」
終わらないケンカに、止めに入ったマリーから般若が漏れ出した。
こ、これはヤバい!!
「あ、あたし向こうを片付けてくる!!」
「わ、わたくしはあちらですわー!!」
あたしたちは速攻で離脱した。
マリーを、怒らせては、いけない(がたがたぶるぶる)。
とにかく、あたしは村を襲う魔物の処理へと向かう。
これもシスターの務めだし、頑張るか。
などと殊勝なことを考える訳もなく、早く帰って夕飯が食いてーなとか考えながら、魔物の群れへと突っ込んでいった。
これはあたしたち、追放修道院のシスターの日常。
その一幕。
罪人やはみ出し者が集まる追放修道院。
そこに所属する一癖も二癖もあるやつら。
これはそんなやつらに振り回され、時には振り回すシスター。
ある時から前の記憶がない、リタ・ルディガンこと“あたし”の日常と冒険のお話である。
この第一話を除き、本作は毎週土曜日朝6時の更新となります。
次回の更新は3月11日朝6時の予定です。
お楽しみに!
追記:リタの苗字をルディアンからルディガンに変更しました。