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最後の異世界物語ー剣の姫と雷の英雄ー  作者: 天沢壱成
風都決戦篇
191/193

『三章』68 皇は静かに踊るー弍


 ーー記憶が巡る。


「ふざけるな! 誰がアンタの為に……!」


 王城ーー薫風のどこかだった。

 翡翠色の髪の毛の少女にして第二王女、レヴィ・ペルセポネは、目の前にいる黒髪の男に激昂していた。

 

「私のため? 違う。お前自身のためにだ」


 ロキシニア・ドロフォノス。


「お前がお前の理想を守り。お前がお前の矜持を抱き続け。お前がお前の誇りを愛撫出来るように。お前が行動するんだ」


「アンタの烏滸がましい言葉に! アンタの悪意しかない行動に! 誰が従うもんか!」


 そんなのは絶対に嫌だ。

 だってそんなことをすれば、間違いなくこの先の未来で待っているのは、どうしようもない暗闇なのだから。


「私は絶対に認めない。アンタがこの国で何を企んでるのか分からないけれど、それでも絶対に認めない! S級や魔獣を討伐して国民にとっての英雄になってるアンタでも私は容赦なんかしないわ。化けの皮を剥いで、私がアンタを討伐してやる!」


「出来るのか?」


「やるのよ。何が何でも。アンタに王位を継承をさせるためにお姉ちゃんと国民を騙して、いるかも分からないレイシア・エル・アルテミスと雷神を誑かしてこの国に誘き寄せるくらいなら。私は自分を犠牲にしてでもアンタを殺す!」


「あぁ、あぁ、そうか。そうなのか、レヴィ・ペルセポネ。お前という人間は利己的に行動せず、合理的に物事を把握しない愚者だったというわけか。……ならいいだろう。貴様に予言を与えてやる」

 

 ロキシニアは人差し指を唇に当てて、


「貴様は必ず。私の元に雷神と剣姫を連れてくるだろう」



♢♦︎♢♦︎



「ーー私は。自分から記憶を消したんだ」


 目が覚めた時、私は全てを思い出していた。

 なんてことはない短い期間の記憶喪失。それもずいぶんと自分勝手な、自分に都合のいい解釈の記憶の喪失。

 

 目が覚め時、私は私に嫌悪した。

 場所は冷たい床と冷たい天井、冷たい鉄格子に冷たい石壁に覆われた部屋。ついさっきまでいたような感覚があったけれど、間違ってはいない。

 ここには、ネザーコロシアム前にいた。


「レヴィ?」


 目が覚めた時、目の前には姉がいた。

 傷だらけで、せっかくの綺麗な髪と顔と、ドレスが台無しになっている。誰かと戦ったのだろうか。

 お姉ちゃんは、誰のために戦ったのだろうか。


 目が覚めた時、喧嘩をしてそれっきりの姉が悲しそうな顔をしていたから、胸が痛くなった。


「……私が、いけないんだ」


「レヴィ、なにを……」


 お姉ちゃんは首を傾げているけれど、その行為を責める理由はない。前までの私だったらきっと「アンタがそんなんだから」とか冷たい言葉を吐き捨てて、お姉ちゃんを傷つけていたと思う。

 でも、今は違う。

 そうやって首を傾げることは、絶対に悪くないんだ。だって私たちは一度もちゃんと話をしたことがないし、向き合っても来なかった。

 それに、私は私であるために、お姉ちゃんがお姉ちゃんでいられるように行動しなくちゃいけないんだ。


 何もかもが自分の責任。

 これは、違えられない「誓約」だ。


「お父さんとロキシニアに用がある。二人は今どこにいるの?」


「二人なら、おそらく王の間にいるはずよ」


「なら、すぐにそこへ……ッ」


 立ちあがろうとして、私の脚が言うことを聞いてくれなかった。ガクンと力が抜けて、上手く立てない。

 

「こんな時に……ッ」


 悔しかった。

 だって私は誰とも戦ってないし、派手な怪我なんてしていないのに。父とロキシニアに弄ばれただけでこの体たらく。反吐が出る。


「話を、しましょう」


 不意に。

 お姉ちゃんがつぶやいた。


「話をしましょう、レヴィ。姉妹で」


 真摯な目だった。

 綺麗な瞳だった。


「遠回りしちゃったけれど。寄り道をしすぎちゃったけれど。私たちはきっと、ここで話さないとダメなのよ」


「シェ……お姉ちゃん」


 久しぶりにそう呼んだ気がした。

 でも。

 そんなこと。


「出来ない。話はできない。これは私の問題なの。私だけが背負えばいい責務なの。だからーー」


「私! レヴィのお姉ちゃんだよ!」


「ーー!」


 大声とかじゃない。

 涙声だ。

 掠れていた。

 けれど力強かった。

 耳に、胸に、魂に響く声だ。

 顔を涙と鼻水でくしゃくしゃにして、お姉ちゃんだよって伝えてきてくれてるのに表情はただの悲しそうにしている女の子だった。

 私は泣きそうになるのを耐えながら、お姉ちゃんにそっぽを向いた。


「知らない。関係ない。お姉ちゃんはお姉ちゃんの出来ることをやればいい。それが建設的なの。私は私で動くから。そうすればきっと上手く行く」


「こっちをみて」


「私がロキシニアとお父様を食い止めるから。お姉ちゃんはその隙に〈死乱〉をどうにかして。アイツらがいたら、安心してロキシニアを相手にできないから」


「こっちを見て、レヴィ」


「特に第一席は要注意よ。それから……」


「レヴィ……ッ! こっちを見てよ!」


「見ちゃったら! 甘えたくなっちゃうじゃない!」


 叫んだ。

 怒鳴った。

 みっともなく。

 恥ずかし気もなく。


「一人じゃ無理だって分かってるよ! こんなこと現実的じゃないってことくらい! だけどこうするしか道がないの! ここまでしても勝てるかどうか分からない敵なの! お姉ちゃんに頼って、カイに頼って! それでもし、もしみんな死んじゃったら……! 私ーー!」


「死なないわよバカ!」


 ガッとお姉ちゃんに顔を掴まれた。両手で両頬を押さえるように掴まれて、強引に向き合わされた。

 互いにみっともない、涙顔。


「だって今、この国には英雄たちがいるんだもん! それはレヴィ。貴女が連れてきてくれたのよ。貴女が巡り合わせた奇跡なの! 相手が魔神だろうと罪人の王だろうと! きっと勝てるよ! だから一人で全部背負わないでよ! 話してよ! レヴィに一体何があったのかを! 私嫌だよ。嫌だよレヴィ……ッ。一人でレヴィが辛く膝を抱えているのを見るのは……っ!」


「ーーっ」


 私だって嫌だよ。

 好き好んで辛い道を歩んでるわけじゃない。知ったような口で私を語らないで。

 あの日、何も信じてくれなかったくせに。

 あの日、私のことを見捨てたくせに!


 でも。

 どうして。

 なんでだろう。


 こんなにも胸が熱くなって、涙があとからあとから溢れてくるのは。


 気づいたら。

 私はお姉ちゃんの胸に飛び込んでいて。

 わんわんと、泣いていて。


「うわぁああああ! 辛かった! もう嫌だったよぉ! こんなことしたくなかったよぉ! ああああああ! ごめんなさいお姉ちゃん! 強く当たってごめんなさい! わた、わたし、私! ずっとロキシニアに命令されていたの! お母さんを殺されたあの日からーー!」


 目を覚ました時、記憶が巡った。



♢♦︎♢♦︎



 ーー母を殺された瞬間をカイと共に目撃したレヴィは、すぐにロキシニアと父を問い詰めた。

 どうしてこんなことをするの。

 どうしてお母さんを殺したの。

 アナタは英雄なんじゃないの。

 アナタはお父さんなんじゃないの。

 

 とにかく問い詰めた。

 しりたかった。

 知りたくない事実を知りたかった。


「たとえば」


 重々しく、そして冷えた声で、ロキシニアが言った。


「鬼ごっこをしていたとして。鬼に捕まれば終了というルールならば、最初から鬼を排除すれば何事もなく物語は進むのではないか。鬼ごっこも無くなり、皆平等に遊べるのではないか」


「なに、を……」


「つまりは。キミのお母さんは鬼だったということだよ。幼い王女」

 

 あまりにも暴論で、道徳的じゃなくて、レヴィは幼いながらも言葉を失った。そして、助け舟を求めるように、父を見た。

 

「ロキシニアに従え」


 ちがう。

 そんなはずない。

 父がそんなこと言うはずがない。

 だって、お父さんはとっても優しくて、強くて、お母さんのことを愛していたから。

 だからこれは何かの悪い夢なんだ。

 レヴィは母の亡骸を抱きながら、ロキシニアを睨み殺す。


「なにをしたの!」


「少し手を加えた。私の目的のためには必要なことだったんだ。この国と、この男と、王位継承が」


 王位継承に関しては意味がわからないが、ロキシニアの都合に父と大切な国が利用されていることだけは幼いレヴィでも理解できた。

 

「やめて! 私のお父さんを返して!」


「いずれな」


 そう言うと、次の瞬間レヴィの意識は根絶した。

 それから目が目覚めるとレヴィからは完全にこの時の記憶は消されていて、ただ母が死んだという悲しい事実だけが彼女の中に残響として取り残されていた。

 しかし、それから数年後、突如としてレヴィに母の死の真実の記憶が甦り、発狂した。

 どうして今まで忘れていたのか。

 自分を憎む気持ち以上に、呑気にロキシニアを英雄と称えている国民や国自体に嫌悪を抱いて仕方なかった。

 変えなくちゃいけない。

 真実を明るみにしなければ、あまりにも母が報われない。

 だからレヴィは弾劾した。

 父とロキシニアを。

 だがそれは虚しい行動にすぎなかった。

 ただ、一言。


 ーーそれがなんだ?


 レヴィは心底絶望し、虚無に落ちた。

 どこまでいっても、ロキシニアにとってレヴィの悲劇や国の惨事、父の心など路傍の石ころ程度のモノだったのだ。


 変えられない。

 このままじゃ何も変えられない。


 だから挑んだ。

 レヴィは正面からロキシニアに挑んだ。

 姉には頼れない。カイにも相談できない。この国の誰にも助力を求められない。

 これはレヴィが一人で解決するべき問題だ。

 皆はロキシニアを英雄だと思っている。この国にとっては英雄と、父の存在はあまりにも大きい。

 「ドロフォノス」という罪人一家の英雄達の真実を知るのはレヴィだけでいいのだ。


「オマエのどこが英雄なのよォ!」


「罪人と英雄など、紙一重だ」


 怒りをぶつけた。

 これまで溜め込んでいたモノの全てを。

 けれど負けた。

 敗北した。

 徹底的に嬲られて、何度も死を連想した。

 もはや、死なない方が不思議だった。


「貴様が条件を呑めば、貴様の懇願をきこう」


 生死を弄ばれて、生きるも死ぬもロキシニア次第の状況下、レヴィは血の海に沈みながら意識朦朧とし、ロキシニアを見据える。

 何を言っているのか。


「この国に英雄認定されている魔導士を集めろ。雷神と剣姫は必ず連れて来い。第一級特異点も連れてくれば上々だ」


「な、にを……」


「殲滅だ。英雄殲滅エレフセリアを完遂する」


 意味がわからなかった。

 英雄認定されている魔導士は、例外なく実力が化物で、レヴィじゃ逆立ちしたって敵わない奴らばかり。

 それに雷神と剣姫なんて、御伽話の話じゃないか。特異点なんて、会ったことすらない。そのどれもが「サフィアナ」の人間だ。


「答えは待とう。ただし、断れば貴様の望みは潰えることになる。国も、姉も、妹も、父も。貴様が大切に抱えているすべての宝物は、宝箱からこぼれ落ちて無惨に砕け散ると思え」


「……っ」


 選択肢なんてないと、そう言われたような気がした。

 だって、レヴィには力がない。

 だって、レヴィには頼れる人がいない。

 結局。

 レヴィはロキシニアに反抗することを選んだけれど、無意味に無価値に終わってしまった。

 もう、彼に従う他に道はない。

 誰も助けてくれないなら、誰にも助けを求められないなら、自分の力でどうにかするしかないのだから。


 だから。

 レヴィは姉に別れを告げた後、その日の夜に、ロキシニアの元へ足を運んだ。


「ーー誓約は、守るわ」


 物語は冒頭に戻る。

 皇は静かに踊り、風都に嵐が吹き荒れる。


「役目も理解した。必要なことも覚えた。だから何も問題なんてない。全部上手くやれる」


 そうしなければ誰も守れない。


「だからアンタも『誓約』は守りなさいよ」


 英雄たちを連れてきたら、必ずレヴィの望みを訊いてもらう。


「もし破ればアンタの寝首を狩ることになるから安心して枕に頭を預けないことね」


「––––期待しているのか?」


「そんなもの、未来と一緒にとうの昔に捨てたわよ」


 なにもない。

 レヴィには期待も希望も何もない。

 無機質に無感情に、役目をまっとうするだけだ。

 そうしてレヴィは、「ドロフォノス」にいる記憶操作の魔法を使う罪人に、記憶を消してもらった。「アイオリア王国」、「ドロフォノス」に関する全ての記憶を。

 自分が王女であることも。

 自分の目的が英雄たちを連れてくることも。


 そうすることで採算度外視で、不自然なく、演技をすることなく目的を達成できると思ったから。

 記憶を取り戻す条件は四つ。

 

 一つ、カイと接触すること。

 二つ、雷神と剣姫と出会うこと。

 三つ、父と会話をすること。

 四つ、絶望すること。


 記憶を取り戻したら、あとは実行するだけ。

 目的を完遂したならば、あとはロキシニアに従う必要はない。殺し、八つ裂きにして、痛い目に遭わせてやるのだ。


 上手くいけば、雷神や剣姫に協力してもらえるかもしれない。


 ーーけど。

 結局レヴィは雷神も剣姫も裏切ることになってしまった。ネザーではハルと戦ってしまったし、アカネには嘘を吐いていたかのように振る舞っていたし。

 だから嫌われてるだろうな。

 もう一緒に戦ってはくれないだろうな。

 みんないい人たちだった。最初から「ドロフォノス」討伐のためにきたみたいだけれど、レヴィの為には戦ってくれないだろうな。


 だって、嘘をついたから。

 だって、自分は嫌な奴だから。


 冷たく、強く当たったし。

 カイにも酷いことをした。

 お姉ちゃんにも。


 だからレヴィに味方はいないんだ。

 

 ーーだからいつだって、レヴィは一人でどうにかするしかないんだ。



♢♦︎♢♦︎



「ごめんね、ごめんねぇ、レヴィ。私がダメなお姉ちゃんだから。レヴィにだけ辛い思いをさせちゃったね……ッ。でも、大丈夫、大丈夫だよ、レヴィ」


 ギュッと。

 レヴィはシェイナに抱きしめられた。

 それはもう、本当に、優しく丁寧に。

 妹をあやす姉のように。


「みんな一緒に戦ってくれるよ。ハルにも会ったよ。彼はとっても良い男の子だったわ。彼ならどんな理由があっても助けてくれるわよ。絶対にレヴィのピンチに駆け付けてくれるよ。剣姫にはまだ出会えてないけれど、ハルの仲間ならきっと同じなんじゃないかなぁ……ッ」


 シェイナも泣きそうだった。


「それに、S級罪人だけれど、レイスにも会ったの。彼ね、言動は荒いけれど、根はいい奴だから。私のことを助けてくれたのよ。お母さんを唆した第二席を倒してくれたの。……〈死乱〉の二席を倒してくれたのよ……ッ。動き出したの、ようやく動き出したのよレヴィ。この国が変わるかもしれないの」


 レイスが。  

 ネザーで会ったあの罪人が、私たちのためにあの二席を?

 涙が出た。

 どうして、私たちなんかのために。

 どうして、ボロボロになってまで。


「どうしてかなぁ。どうしてレヴィばかり辛い思いをしなくちゃいけないのかなぁ。レヴィが一番頑張ってるのに、どうして神様は試練ばかり与えるのかなぁ……って、そう思ってたの。でもね、神様はちゃんと見てくれてるんだよ。レヴィのもとに、ちゃんと味方が集まってくれたの。……思い出して見て、レヴィ。ハルたちは、本当に、レヴィに強く当たる人たち?」


「……っ」


 思い出してみた。

 

『まだ食うのかよ!』

『今それ関係なくない⁉︎ ムカつくこいつ!』

『誰がイキリカマキリ⁉︎ ムカつくあいつ!』

『ぷくく。まぁそう怒るなよ、イキリカマキリくん』

『私はノーシンよ。罪人なんて、そんなまさか』

『さらっと嘘つきやがった!』

『なるほど! お風呂に入ってたから気づかなかったんだね!』

『……レヴィ。あたしは本当にあなたのことを心配してここにきたの』

『おい雷神、この女頭イカれてンのか?』

『何も言うなレイス。レヴィはこういうタイプの女の子なんだ。……アカネとは正反対だな』


 ……なんか、笑っちゃうくらいどうでもいい会話ばかりだった。

 別に感動の、お涙頂戴の救出劇があったわけじゃない。実際、彼らはノーザンのために動いていたから、レヴィのために行動していたわけじゃない。

 でも、なんでだろう。

 お姉ちゃんの言う通り、彼らなら何も言わずに、当たり前のように駆け付けてくれそうな気がした。


「……手を」


 ぽつりと、呟いた。


「手を貸して、くれるかなぁ……ッ。ハルとアカネは、レイスは。セイラにユウマとギン、ノーザンにナギは……カイや〈鴉〉のみんなは、私たちと一緒に戦ってくれるのかなぁ……ッ」


「うんっ。絶対! 戦ってくれるよっ! だから先に行こう。みんなが来るまで、私たちだけで戦おう! 頼ってばかりじゃいられないから!」


 強く抱きしめられた。

 涙がもっと出た。

 そうだ。

 まだ諦めるには早いじゃないか。

 戦うんだ。

 一人じゃないんだ。

 レヴィには頼れる仲間たちがいるんだから。


「私。絶対に負けないよ、お姉ちゃん!」


「私もよ、レヴィ。一緒にお母さんの仇を討とう!」


 強く。

 強固に。

 風の都の姉妹は決意した。



♢♦︎♢♦︎



 ーーそして。

 時系列を少し戻して。


「ーー六席も大したことないんだね」


 冷えた空色の瞳だった。

 冬の寒空のような目だった。

 いつもは春の心地よい青空を連想させる双眸なのに、今の彼女の瞳には穏やかな暖かさはない。


「ノーザンさんとレヴィちゃんにしたことを後悔しながら地獄に堕ちろドロフォノス!」


 ザン! と。

 美しい日本刀の剣閃が、風を裂きながら唸った。

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