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最後の異世界物語ー剣の姫と雷の英雄ー  作者: 天沢壱成
風都決戦篇
131/193

『三章』⑮ 雷は神様の怒りだと、誰かが言った。

「そうか」


 『エリア・酒』にある喫茶店、その窓際の席。窓から差し込む陽光と、微かに吹く柔らかい風。店内の喧騒と、街の流れ。

 その中で、ハルの声が小さく鳴った。

 ノーザンは、話し終えると喉を休めるように、注文して届いたアイスティーを一口飲んだ。

 

「……話してくれて、ありがとう」


 ノーザンは首を横に振った。


「お礼を言われるのは筋違いだわ。私も、あなたには話さなきゃいけないと思っていたから」


「それでも辛かった過去を口にすんのは簡単じゃないだろ。だから、ありがとう」


「……そう。なら遠慮なくそのお礼は頂くわ」


 人が人に自分の過去を語るのは決して簡単な話じゃない。それはアカネを見ればいい例だろう。デリケートな問題が多いなら、悲劇が多いなら尚更だ。

 その上で、ノーザンの過去に感想を加えるとしたらら、「ふざけるな」だ。

 

 クソだクソだと言われているけれど、ここまでクソだとは思わなかった。

 「ドロフォノス」。 

 罪人の一族。

 

 生まれた場所が悪かった、とはあまり言いたくないが、その言葉以外ノーザンの過去を表現できない。

 あまりにも悲しい。

 あまりにも酷い。

 悪くない、悪くないじゃないか。

 親子が笑えない日常に、なんの意味がある。


 ハルは息を吐くと、静かに言った。


「……お前のことを全部理解したつもりで「辛かったな」、とは言わない。俺は今のお前しか知らないから、過去のお前にいくら同情したって結果は変わらないしな」


「……そうね」


「だけど」


 一度そこで言葉を区切って、ハルは拳を握った。

 膝の上で、強くだ。

 そして、ノーザンは感じた。ハルから、いつものおちゃらけたモノじゃない、怒りに塗られた雰囲気を。

 

「悔しいよな。自分の母親と娘をそんな風に扱われて、悔しくないわけないよな。許せねぇよな」


「ジーク、ヴルム……」


自分てめえの人生を他人に操られて涙を流すなんて、絶対に間違ってる」


 自分の人生は自分のものだ。他の誰のモノでもない。それなのに、貴重な血だとか立場とかを理由にして人形のように使うなんて不遜にも程がある。自分たちが神様にでもなったつもりなのか。

 ハルは己の中でふつふつと煮え滾る怒りを明確に自覚していた。

 こんな話しが、あっていいはずかないと。

 だから。


「さっきから何覗き見してんだ。一緒に飯が食いてえなら素直にそう言えよ、ミニデブ野郎」


「なっはは。バレてたか」


「な……っ!」


 喫茶店。

 ハルがその店の中央付近に視線を振った。すると、そこにはテーブル席に一人、帽子を深くかぶって人相を隠していた小太りの男が座っていた。

 笑い方と、オーラ。

 その二つで誰なのか、ノーザンだけでなく店の中にいる全ての人間が理解した。悲鳴はない。ただ驚愕と恐怖だけが空気になって充満する。客が少しずつ減っていく。店員がキッチンの奥へと消えていく。

 

 店の騒がしさが消え失せて、もう残っているのはハルたちだけだった。

 ハルはノーザンの隣に座り直し、小太りの男を前の席へ座れと首で示して促した。


「俺たちに用があるんだろ。ならそこに座れよ。三分間だけ話を聞いてやる」


「なっはは。いやいや困ったな。三分もくれるなんて、その優しさには困っちゃうよ」


 などと言いながらも、小太りの男はハルの言う通りに座った。

 茶色の髪の毛に、いかにも高級そうなスーツ一式。まるで親のスネを齧りまくって育ったお坊ちゃんのような雰囲気の男。

 ノーザンが隣で震えを抑えている気配。

 自己紹介は、される必要ないと思った。

 ハルはノーザンの手を強く握る。隣で微かに驚く素振りが見えた。ハルはそっちを見ない。ただ、横顔だけで「何も問題はない」と教える。それが伝わったのか否か、ノーザンから少しだけ恐怖の色が失せたように思えた。


「それにしても、ここは暑いね。まずは冷たい水でも飲みたいところだけど……それ、貰ってもいいかい?」


 目の前の男はハルがまだ手をつけていない水を指差した。

 ハルは何も反応しない。

 それを肯定と判断したベルクが笑う。


「ありがとう、助かるよ。喉が渇いて仕方なかったんだ。これで喉が潤って舌がよく回る、頭も働くよ」


 いちいち癪に触るような言い方をする男。彼は水を一気に飲み干すと、グラスをテーブルに置いて、口元をポケットから出したハンカチで拭いた。


「うん。やっぱり水は美味しいね。暑さや疲労がなくなったみたいに身体がスッキリ、楽になったよ。水分補給は大事だと、改めて教えられた。キミもそう思うだろう?」


「悪いな。俺は水より肉派だ」


「ふむ、そうか。君は食事を大切にしているのか。うん、悪くない。食事も生きる上でとても重要だ」


 そんなことを今話すべきなのか? という疑問が新しく生まれるが、この際気にしないでおこう。

 ハルはそっと息を吐くと、目の前の男を睨んだ。


「もう一分は経ったぞ。さっさと用件を言ったらどうなんだ、ベルク・ドロフォノス」


「……へぇ。僕のことを知っているのか。いや、まぁ当然なのかな? そこにいる「落ちこぼれ」と一緒にいるんだから。ねぇ? ノーザン」


「……っ」


 ベルク・ドロフォノス。

 彼が冷えた目を細めて口を開くと、隣にいるノーザンが震えを思い出したみたいにビクッとした。目を合わせない。ノーザンは、ただ俯いて震えている。

 彼女の反応が愉快だったのか、ベルクは歯を剥いて悪役っぽく笑った。


「なっはは。怖くて僕を直視出来ないかい? 久しぶりに会ったけど良かった。君の中に根付いた僕に対しての畏れは、消えていないようだ」


「………っ」

 

 ベルクにそう言われて否定も反論も出来なかったのだろう。ノーザンは唇を噛んでさらに深く俯いてしまう。

 ノーザンが話してくれた過去。

 それで知った。

 ベルクはノーザンを痛めつけた張本人だと。

 恐怖を抱き、震えるのも無理はない。

 

「僕の用はね、青髪くんではなく君だよノーザン。「お父様」の話だと君は泥犁島ないりとうで死んでるはずなんだけど、どうして生きているのかな?」


「……そ、それは」


「話せないかい? まぁいいだろう。君が僕の街にいたのは驚いたけど都合がいい。君を「お父様」に渡して、僕はその報酬として〈死乱アッカド〉になる」


「……っ」


「さぁ。僕と一緒に来るんだノーザン」


 ベルクがノーザンに手を伸ばした。

 ノーザンがその手を恐怖が宿った目で見る。ハルはそれを黙視する。静観する。

 彼女がベルクの手を取るかどうかは彼女次第だ。ハルに口出しする権利はない。

 いつだって、自分の人生を選択できるのは自分だけなのだから。

 

「……私、は」


「さぁ、来るんだ。君に拒否権はないはずだろう? それとも、ここで僕の手を拒絶して、母親の二の舞になりたいのかい?」


「……おかあ、さん」


 娘を守っただけなのに拷問を受け、裏切られて殺された、ノーザンの母。ノーザンによく似ている、母親。

 ノーザンは母を思い出し、か細く呟く。脳裏に過ぎるのは、思い出されるのは母との甘い日々と、辛かった時間だろう。

 ここで手を取れば、全てが無くなる。

 「ドロフォノス」に戻って、また人殺しをするだけの冷たく殺伐とした日々に戻るだけ。裏切ったことは誰にも知られていないから、このまま戻れば何事もなく終わる。

 それでいいじゃないか。

 それで安全じゃないか。

 

 ノーザンは膝の上に置いてあった手をゆっくりと上げていく。テーブルより上に来ると、ベルクの手へと自分の手を近づけていく。

 これでいい。

 これで誰も傷つかない。

 自分だけが痛い思いをするだけで済む。

 最初から上手くいくわけなかった。いつか、こうなるんじゃないかと思っていたから。

 それが早くなっただけだ。

 

 大丈夫。

 また、あの日に戻るだけなんだから。


 ――――お母さん。


「……っ」


 ノーザンの指が、ベルクの手に触れかけた時だ。

 不意に、お母さんと呼ぶ声が聞こえた。

 いや、頭の中に響いたのだ。

 

 テレサ。


 大切な、愛しい娘の声。


 そうだ。

 そうだった。

 目の前の恐怖に全てを奪われて、忘れてしまっていた。今、こうして「ドロフォノス」を裏切ったのは、もう殺しの日々が嫌だったからだし、「お父様」を倒して自由になりたいもそうだけど。

 復讐したい、もあるけど。

 だけど一番は、やっぱり。


 ――――テレサと手を繋いで過ごしたい。


「来るんだ、ノーザン」


「……な、い」


「? なんだい?」


「……私は。そっちには戻らないわ」


 ここだけ、このセリフだけは、ノーザンはハッキリとベルクの顔を見て言い切っていた。

 その返答が、ベルクにとって意外なものだったのか。彼は微かに目を見開くと、面を食らった表情を消して、口角を上げた。


「そうか。君はどうやら、僕が知っているノーザンじゃなさそうだ。泥犁島の任務で何を見て何を感じたのかは知らないけど、僕に対しての恐怖心を打ち破るとは大したものだ。尊敬に値するよ、いや本当さ」


 ……随分と簡単に身を引くなと、ハルは少し呆気に取られる。「ドロフォノス」家は全員己の目的のためなら他者の感情など介さない人間だと思っていたから。

 ベルクは席から立ち上がり、ハルたちに背を向けた。


「今日のところはひとまず身を引かせてもらうよ。これ以上問答を繰り返したところで、ノーザンの意思は揺るがなさそうだからね、なっはは」


「……ふ」


 ノーザンが安堵の息を吐いた。

 ベルクが諦めて帰ってくれる。それがわかっただけで全身を縛り付けていた鎖のような恐怖が緩んだのかもしれない。

 

「――――だけど。忘れたならもう一度植え付ければいいだけの話だと、今思ったよ」


「……っ!」


 途端に振り返り、ベルクはその流れに身を任せたまま、強引に無理矢理に、ノーザンを連れて行こうと腕を掴んだ。

 瞬間、ノーザンの中で恐怖が爆発する。全身の産毛が逆立ち、汗をかき、拷問の日々が甦る。

 ベルクはノーザンの腕を掴む手に力を入れて笑った。


「なっはは。またじっくり壊してあげるよ。痛ぶってあげるよ。慰めてあげるよ。……思い出させてあげよう、僕に対しての圧倒的な恐怖をさ」


「……っあ。ゃ、やだ……っ」


 まるでいじめっ子に終わらない暴力を振るわれる子供のように、ノーザンは顔をくしゃりと歪ませて涙を流し始めた。彼女のそんな表情を見て、ベルクが恍惚に破顔する。


「来いノーザン。「ドロフォノス」が『殺人』の道から逃れようと思うなよ」


 傍若無人で倫理もクソもないことをベルクが口にした、その時だった。


「――――三分だ」


「……?」


 ノーザンが涙を流したと同時に、横から声がした。

 ベルクが動きを止めて、チラリと視線を振る。

 ベルクの手首が掴まれていた。

 ノーザンの隣から、腕が伸ばされていた。

 

 ハル・ジークヴルム。

 青白髪の少年が、ベルクの横暴を止めるかのように力強く、手首を掴んだのだ。

 ノーザンがゆっくりハルを見る。

 ベルクが怪訝に眉を寄せる。


「……ジーク、ヴルム」


「何か言ったかな? 悪いけど、これは身内の問題なんだ。部外者は介入しないでもらいたい」


「あぁ。そっちの問題はそっちで勝手にやってくれ。だけど俺が言ってんのは、そーゆーことじゃねえ」


「じゃあなんだい?」


「三分経ったぞ」


 繰り返してハルはそう言った。

 ノーザンとベルクが二人して何のことだかサッパリ分からないといった様子だ。

 しかしハルからしてみれば、それが分からない。

 当初の約束を忘れたのだろうか?

 そもそもどうして、ハルたちはベルクと同じテーブルの席に着いている? ノーザンのトラウマの相手だ。仲良くする必要なんて皆無である。


 にも拘らず、ハルはベルクとの会話を許容した。

 それが出来たのは、条件を付けたからだ。

 三分。

 その時間の間だけ、ハルはベルクとの対話を己に許した。

 言い換えれば、三分間だけは何もしないということでもある。

  

 だから。


「三分経ったんだ。もうてめえの話を聞く筋合いはどこにもねえ。今すぐノーザンからその手を離せ」


 ベルクは笑う。


「なっはは。そんな口約束を僕が守ると思うのかい? 手を離すのは君だよ、青髪くん」


「そうか。分かった」


 と、ハルはすんなりとベルクから手を離した。ベルクは気分良そさそうに頷いて、ノーザンは再度俯こうとする。

 直後。


「じゃあ行こうかノーザン。「お父様」が待って――――」


「離すのはテメェだクソ野郎ォオオオ‼︎」


 ズドン‼︎‼︎‼︎ と。

 まるで雷が落ちたかのような腹に響く重音が、店全体に響き渡った。青白い発光と衝撃と共に、喫茶店の窓ガラスが全て割れる。

 ハルの雷を纏った拳の一撃が、ベルクの顔面に叩き込まれたのだ。当然、ベルクはテーブルも椅子も巻き込み破壊しながら吹っ飛んで、壁すらもぶち抜いて外へと出る。

 ガラガラと、壁が崩れて残骸の山にベルクが埋まる。


 突然の光景に、ノーザンが呆然としていた。

 そのまま、彼女はハルに視線を移す。

 ……初めて見た、とノーザンの顔に書いてあった。

 無理もないだろう。

 初めて出会った時も。

 泥犁島の時も。

 ノーザンはただの一度も、ハルが本気でキレたところを見たことがないのだから。

 彼は心底ムカついてる、本気で怒っている表情で、残骸に埋もれているベルクを睨んでいた。


 身体には青白い雷を帯電させて、拳を強く握って。


「まどろっこしい事はもう全部終わりだ。細かい理由も思惑も関係ねぇ。お前をここでぶっ飛ばして、この街を救って、その後に「アネモイ」にいる「お父様」って奴のところに連れて行ってもらうぞ」


 弱気になっていた。

 奥手になって、先のことを考えて行動して、不測の事態を考慮して。

 そんなのは、らしくない。

 目の前で苦しんでいる人がいるのに、わざわざ深く考えた上で動いて救うバカがどこにいるというのか。

 最初から全部気に食わなかった。

 ノーザンの過去を知った時から、じゃない。

 泥犁島の時からずっと、気に食わなかったのだ。

 「ドロフォノス」。

 人を人と見ていないクソ野郎共に、どうして怖気付く必要がある。


「お前ら「ドロフォノス」の歴史は、もう終わる。俺が終わらせてやる。全員まとめてぶっ飛ばして、ノーザンの前に突き出して土下座させてやるからな‼︎」



♢♢♢♢♢♢



「なに、今の音⁉︎」


「まさかハルだったりする?」


 場所は変わって『エリア・淫』の娼婦街。ネオンの光が怪しく魅惑に輝く街並みの中、アカネとギンは爆発音のような激音に振り返っていた。


「さ、流石にハルも魔法を使って盛大にケンカするほどバカじゃない思うけど……」


 不安に思いながらアカネはそう言うが、銀髪の美少女は思い出してしまう。ついさっき、ハルはカイと魔法を使って喧嘩をしたばかりだと。

 アカネはおもいっきり頭を抱えて膝をついた。


「お、おわった……。あれ絶対ハルだよ……。何やってんのよ、ハルのばか……」


「バカって言葉、ハルに似てるよね」


「字面の話はいましてない! ……似てるけども!」


 結局同意するんかい、とかギンは思ったが口にはしない。

 ハルが喧嘩をしている、となるとそれは「当初の予定通り」と言っていいからだ。アカネとギンは激音の方から視線をずらして、前を見た。

 男女共々、派手な格好をして歩いている。

 

「本当にやるの? アカネ」


「やるよ。だって、あたしたちがしなきゃこの街はずっと鎖に縛られたままだから」


「そっか。じゃあおれもやるよ。……なんだか、「浮遊城」を思い出すね」


「あはは。そうだね」


 アカネとギンは顔を見合わせて笑う。

 この状況が、何だか懐かしかったのだ。エマの一件でも、同じようなことがあった。

 あの時とは、変わっただろうか。変われただろうか。

 アカネはギンから目の前に視線を移動させる。

 そこには、『エリア・淫』を行き交う人々。


「怖い? アカネ」


 ギンの問いに、アカネは首を横に振った。


「ううん、怖くないよ。だって、今も昔も、あたしにはみんながついてるから」


「そっか。じゃあやろう。みんなのために」


「うん!」


 そして。

 アカネはまるで国民の前で演説を行う姫のように、美しく優雅に、それでいてどこか寂しそうに、大きな声でこう言ったのだ。


「あたしは。「サフィアナ王国」第ニ王女、レイシア・エル・アルテミスです。今日は、ここにいるたくさんの人たちに聞いてもらいたいことがあります――――」



♢♢♢♢♢♢



「ったく。まさかこんなことになるなんてな」


「いいじゃないか。こっちの方がよっぽど私たち『らしい』ぞ?」


「……まぁ、それもそうだな。うしっ。いっちょやってやるか!」


 『エリア・酒』。

 そのメインストリートの中央付近で、ユウマとセイラがイタズラっぽく笑いながら立っていた。周囲の人たちから見れば、これから一芸を披露する前の雰囲気だ。

 だが、その表現は言い得て妙でもある。

 何故なら、今から二人がするのは一芸と言ってもいいことだからだ。

 ザワザワと、通り過ぎる人が、立ち止まって見ている人が、二人に注目し始める。

 

 これくらいで十分か、とユウマは周りを見ながらそう思い、セイラに何かの同意を求めるように視線を振った。赤髪の美女は頷く。

 ユウマは一度息を吸って、吐いた。


「オレたちは〈ノア〉。困ってる人がいたら誰でも助ける「何でも屋」をやってんだ。今日は、今ここにいるお前らに話したいことがあってここにいる」


「長くはならない。少しだけでいい。私たちに付き合ってくれ」


 立ち止まっていた一人が、訊いてきた。


「何を話すんだよ?」


 セイラは笑った。


「この街の、未来の話だ――――」



♢♢♢♢♢♢



 さて。

 時間は少し遡って、メイレスが勝手に使っている一軒家。そこでアカネたちは「エウロス」の現状と、この街を支配する悪魔の名前をメイレスから聞かされていた。


「ベルク、ドロフォノス……」


 その危険極まりない名を呟くアカネの表情は険しい。「エウロス」で生命税を発案、実行し、負の連鎖を作り出した張本人。

 しかし、アカネがその反応をした理由はもう一つある。

 それは、ノーザンの過去。

 宝石鳥スフェラバードで、ノーザンが話してくれたのだ。これまでの自分を、どうしてこうなったのかを。何故、殺人しかない道を選んでしまったのかを。

 

(ノーザンさんを拷問した張本人。ノリアナさんや、テレサちゃんを利用して脅した人……)


 思い出すだけではらわたが煮え繰り返る。目の前にいたらどっちの事情も関係なくぶん殴っているところだ。

 

「ベルクは「案内人」としては都合が良くての。条件さえ一致すれば、一時的にこちら側に付いてくれるかもしれん」


「メイレスさん。悪いんですけど、その話は――――」


「――――反対だ」


 と、アカネが断ろうとした瞬間、それよりも早くメイレスの提案を拒絶したのはハルだった。意外とばかりにアカネもギンもハルを見た。彼はソファに深く座り、腕を組んで、メイレスをまっすぐ見ていた。

 メイレスはハルに問うた。


「理由を聞こうかの」


「生命税を作ったクソ野郎に頼ってまで、俺は「アネモイ」に行きたいとは思わない」


「それは個人的な感情を優先しての判断かの?」


「ああ。そんな奴に頼るくらいなら、俺は今回の喧嘩から降りる」


「ちょ、冗談でしょハル!」


 ハルの予想外すぎる言動にアカネは目を剥いた。思わず正気なのか疑いたくなるほどだ。

 しかし、ハルを見たアカネはその疑念を吹き飛ばされたみたいに驚愕する。ハルは、冗談なんて、嘘なんて言っていない。至って真剣に、真面目に、メイレスの提案を正面から否定している。

 アカネが言葉を失う中、ハルが息を吸って吐いた。


「「ドロフォノス」をぶっ飛ばすのは賛成だ。それについては何も言うつもりはねえ。……けど、その「ドロフォノス」を殴るために「ドロフォノス」の手を借りなくちゃいけないなら、そんなのに意味なんてない。俺は、そんなやり方をしたくない」

 

「ハル……」


 確かにハルの言うことには一理あった。ノーザンは別として、敵である「ドロフォノス」に手を貸してもらって「お父様」を倒して、果たしてその結果に意味なんてあるだろうか? 

 「ドロフォノス」に協力してもらったから「お父様」を倒せました、と胸を張って大々的に言えるだろうか? 


「なぁばあちゃん。俺はさ、「ドロフォノス」は全員ぶっ飛ばしてぇんだよ」


「…………」


泥犁島ないりとうで俺は役に立てなかった。みんなが戦ってる時に、俺は呑気に地べたで寝てたんだ。ジーナの不意打ちがあったから、ていうのはただの言い訳だ。実際に、俺はあの時何もできずにいた。……それが悔しかったし、同時に「ドロフォノス」が好き放題暴れてみんなを危険に晒したのが、どうしても許せなかった」


 S級罪人のレイス。

 彼との戦闘でハルは満身創痍になり、その不意を背後からジーナに突かれて胸を抉られた。それが原因で、理由で後々の戦闘に参加できなかったのは事実だが、そんなのは遅すぎる後悔でしかない。

 それをハルはずっと、女々しいことに引きずっていた。誰に何と言われようが、歯痒いものは歯痒かったのだ。

 

 自分がいれば、なんて傲慢な考え方はしない。でももし仮に、ハルがまだ戦えたらもっと違う状況になっていて、みんなは怪我をせずに済んだかもしれない。

 全部が「もしも」の話で、説得力なんて皆無だ。

 だけど。


「あの時、俺がもっと強かったら違ったかもしれない。アカネが「お父様」ってやつと戦って、傷つかずに済んだかもしれない。……俺が戦っていれば、その時に全部終わってたかもしれないんだ。そーゆー後悔を、もうしたくない。……なのに、その中で「ドロフォノス」の力を借りて何かを成すなんて、俺には出来ない。自分のケツは自分で拭きてえ。仲間を傷つけた相手を仲間にするくらいなら、俺は死んだ方がマシだ」


「…………ハル」


 アカネは、初めてハルの本音を聞いたかもしれなかった。誰かのために正直に話すのは、いつものこと。だけど自分のことをこうやって話して、後悔して、本音を吐露する姿は初めてだった。

 だから思う。

 やっぱりハルも、年相応の男の子なんだと。

 同い年で、悔しいことはちゃんと悔しいと思えて、わがままを言う姿は。


 でも。

 少しだけ、悲しい。


 俺が戦っていれば。


 その言葉は無意識だろうけど、まるでアカネじゃ勝てないから最初からハルが戦っていればよかったのに、と、そういう風に聞こえた。


「……っ」


 アカネが自分の無力、弱さに唇を噛んだことを、ハルは知らない。

 メイレスがそっと息を吐いた。


「ならどうする? 「案内人」をどう確保する?」


「知らん。「アネモイ」に行って全員ぶっ飛ばす」


「だから、そのためには「案内人」が必要なんじゃ」


「知らん! 全員ぶっ飛ばす!」


「話にならないの!」


 とにかくハルが「ドロフォノス」を許せないのは分かった。メイレスの考えもハルの気持ちも、アカネはどちらも共感できる。

 ただ、建設的に合否的に考えればメイレスの方が正しくて優先すべきだ。だが、感情的に考えればハルの方が絶対に正しい。

 合理的か感情的か。

 どちらを取るのか。

 これは、そういう話でもあった。


「……じゃあ、仲間にしなければいいんじゃない?」


「?」


 ふと、アカネが口を開いてハルたちが首を傾げた。

 アカネは一拍置いて、


「仲間にしないでベルク・ドロフォノスを上手く利用することができれば、ハルの言う『頼る』っていう名目は無くなるんじゃない?」


「でもそれは、力を借りるってことだろ?」


「違うよ。借りるんじゃない。懇願させるの」


 アカネの考えに、ハルとギンはまだ追いついていないらしい。

 アカネはそっと息を吐いて、


「いい? ハルはベルクに力を貸してくれと頼む、その形式が嫌だって言ってる。その気持ちは分かる。だから、こっちが貸してくれと言うんじゃなくて、向こうから「力を貸したい」って言わせればいいんだよ。そうしたら、こっちが向こうに頼ったっていうことにはならない。だって、向こうが『どうしてもあたしたちに協力したい』って言ってるんだから、それを拒むのは違うよね?」


「…………」


 アカネの考えに、ハルは少し悩んでいるようだった。……意地悪だな、と自分でも思う。本来、こういうやり方はしたくない。ノーザンの過去を知っているから、ベルクの力なんて必要としたくない。

 でも、そんなワガママを言ってられないのも事実だ。「案内人」の存在は不可欠。ハルの嫌がる理由も道理。

 どちらの思いも相殺して望みを叶えるなら、この方法しかない。

 ハルが納得してくれるかどうかは賭けでもある。

 

「……アカネがそう言うなら、分かった。そうするよ」


「ハル……って何その顔」


 受け入れてくれた、と素直に嬉しくてアカネはハルを見たが、そんな彼は絶対に納得していない様子で微妙な顔をしていた。拗ねた子供みたいだ。


「ハル、拗ねてる?」


「拗ねてない」


「怒ってる?」


「怒ってない!」


「かわいい、ハル」


「可愛くねえ!」


 いや十分可愛いよ、と思いながらも自分の考えに渋々乗ってくれたハルには感謝する。これでアカネの狙いを実行出来る。

 ベルクに協力を懇願させる。

 そのためには。


「ハル。ベルクをぶっ飛ばして」


「……いいのか?」

 

「うん。「ドロフォノス」よりこっちについた方がいいって思わせるくらい、コテンパンにやっちゃって」


 アカネの計画通りに事を運ぶなら、ベルクをぶっ飛ばすことは大前提だ。自分より強い相手に服従させる、なんて強引な手段は好みではないが、ベルクに関してはその限りではない。 

 アカネの言葉に、ハルは頷いた。


「おう。任せとけ!」


「うん。……じゃあ、あとは」


 ベルクの件はハルに全てを任せるとして、あと必要なのは「町民」の説得だ。

 メイレスの話によれば、この街に住む人はみんな、ベルクを心の底から恐れている。だからベルクには逆らえないし、言いなりになるしかない。そうなれば、仮にベルクを倒したとしても、誰かが『アカネたちの情報』を「アネモイ」にいる「ドロフォノス」にリークする可能性がある。


 それだけは避けなければならない。

 ベルクを倒し、「案内人」を確保した意味がなくなってしまう。

 故に「説得」は必要だ。

 もっと言えば、ベルクに抱く「恐怖」を無くす必要がある。


 アカネはメイレスに視線を振った。


「メイレスさん。その、ベルクの魔法が何なのか分かりますか?」


 それは賭けだった。

 何となく、メイレスならそこまで知っていると思ったのだ。もしベルクの魔法を知ることができれば、かなりのアドバンテージとなる。

 だが、その望みに反して、メイレスは首を横に振った。


「すまんのアカネ。儂も流石に他者の魔法が分かるわけではない。少なくとも、一度その魔法を見ないことには詳細も正体も分からんのじゃ」


「………そう、ですか。いや、流石に望み過ぎました、すみません」


 アカネの知る由もないことだが、エマの一件でメイレスは「アリア」を壊滅しようとした罪人、シコラエの魔法を呪怨魔法だと見抜いている。

 それは、メイレスが『一度見ればどんな魔法なのか』分かるという発言の裏付けに他ならない。だから、見なきゃわからないというのも、また。

 

 しかしそれは分かればいいな、の話。

 分からないなら、当初の予定通りに話を進めるまでだ。


 アカネは話を変えて、


「ベルクを倒したところで、街の人たちにそのことをリークされたら意味がありません。だから街の人たちをベルクの恐怖から解放する必要があります。でも、そのためにはあたしたちだけじゃダメです。だから、セイラたちにも協力してほしいところなんですけど……」


「連絡手段がない、か」


「はい……。何か伝える手段があればいいんですけど」


「それなら儂に任せるといい」


「え?」


 まさかの言葉にアカネは首を傾げた。

 メイレスは自慢気に胸を張って、


「間接的に魔法を見破る手段は持ち合わせておらんが、離れた位置におる仲間に意思を伝える手段ならポケットの中にあるぞ」


「…………すご」


「…………流石ばあちゃんだな」


「…………じゃあお腹すいた時にご飯を出す魔法とかも使えるのかな」


「「あるわけねーだろ!」」


「あるぞ」


「「あるんかい!」」


 などと戯れあっている場合ではない。メイレスのご飯製造機の新事実はひとまず置いておくとして、皆にアカネがやって欲しいことが伝えられるのは朗報だ。


「じゃあ、早速で悪いんですけど、いいですか?」


「うむ」


 メイレスは頷くと、右手を虚空に突き出した。途端、彼女の手には、まるで『向こうの世界』にあった電話のような物体が握られた。

 メイレスはそれを顕現し終えると、手の中で弄びながらニコリと笑う。


「本来この魔法は物を生成し介さなくてもええんじゃが、まぁ何かあった方がやり易いじゃろう。アカネが育った『世界』の伝達方法を参考にしてみた。使うといい」


「ありがとうございます、メイレスさん」


 確かに電話の形をしていれば、やり方はなんとなく分かる。

 これで、みんなに伝えられる。

 アカネは一度大きく息を吸って吐いた。

 やってもらいたいこと。


 それは、不安を取り除くことだ。


「セイラ、ユウマ。お願い、二人に手伝って欲しいことがあるの――」



♢♢♢♢♢♢



「ノーザン、下がってろ」


「……ジークヴルム」

 

 ベルクをぶん殴ってすぐ、ハルはノーザンを背にして立つ。壁の残骸に埋もれたまま動かないベルクから目は離さない。手応えはあったが、相手は「ドロフォノス」。油断は出来ない。


「ジーク……。あなた、どうして」


 ハルは振り返ることなく、


「どうしても何もねーだろ。あいつがムカついたから殴っただけだ」


「そんな理由で……」


「そんな理由? おまえが泣きそうになっていたことが、そんな理由って枠に収まるわけねーだろうが」


「…………」


 ハルの言葉に、ノーザンは瞠目して声を無くしていた。本当に、ハルが何を言っているのか分からないといった様子だった。

 なにを、何を言っているんだろう。

 私が泣きそうになっていたことが、どうしてあなたの怒りの発芽になるの? 私は、敵だったのに。私は、「ドロフォノス」なのに。

 ……そういう疑問が、ノーザンの中で溢れて止まらない。


「あなたは、わかっているの? ベルクは『本家』の人間なのよ。それに、このことがバレたら作戦もクソも……」


「お前が泣くくらい辛い思いをするなら、作戦なんてクソ喰らえだ。そんな作戦になんて意味ねーんだよ」


「そんな甘えた私情で全てを無にするの? 私は言ったはずよ! 誰も失いたくないって! それはあなたも含まれてるの!……だから!」


「寂しいこと言うなよ」


「…………な、にを」


 ベルクから目を離すなんて自殺行為だ。倒していないんだから、不意打ちに警戒しなくちゃいけない。

 だけど、ハルはゆっくり振り返ってノーザンをみた。

 彼は、少しだけ寂しそうに、笑っていた。

 

「俺たち、もう仲間だろ。一緒に戦うって決めたんだから、そいつが泣いてたら嫌だし、そんな事を言われたら、信用されてないって思うだろ。寂しいじゃねぇかよ、そんなの」


「ちが……っ。わ、私はただ、私が大切だと思ってる人たちには傷ついてほしくなくて、だから……」


「俺たちもだ。お前が大切だから、守りたい。泣いてほしくない。お前が悲しくなる原因は、取り除きたいんだ」


 ノーザンの気持ちは素直に嬉しいし、それは実に尊いものだった。優しさという感情の体現と言ってもいいほどに。

 でも、それだと自己犠牲が前提で、自分だけが傷つく悲しい世界の誕生だ。誰も幸せにならない。自分だけは達成感に満たされて、虚無を忘れて、幸せだと嘯く事ができるかもしれないけれど、全部がまやかしで、幻想だ。そんなモノに意味なんてないし、意義もないし、価値もない。

 

 かつて、エマ・ブルーウィンドという少女もそうだった。自分だけが辛くて痛い思いをすればいい。そうすればみんな幸せで笑っていられる世界になると。


 だけど。

 やっぱりそれは寂しくて、嫌だから。


「俺は。お前たちが救われる世界がいい。大丈夫。お前もテレサも。俺が必ず幸せにしてやる。だから任せとけ。怖がる必要なんてない。胸張って堂々と立ってろ。大船に乗ったつもりでな! にしし!」


「…………幸せにって。あなた、無自覚でそれを言ってるの?」


 くすりと、泣き笑いのようにノーザンは笑った。

 

「? おう!」


「……レイシアが悲しむわね、これは。……まぁでも、そう言うなら――責任、取ってよね?」


 きっと意味を理解していないであろうハルに、ノーザンは少し意地悪したくなってそう言った。無自覚の発言に歯の浮くようなセリフ。なるほどこれは確かに、レイシアみたいな恋を地で楽しむ乙女は落ちてしまうだろう。

 でもその甘さが、優しさが、あの子の強さになって、この人たちの強さの根源なのかもしれない。


「あぁ。あいつは俺がぶっ飛ばしてやる」


 責任の意味をまるでわかっていないハルはそう言って頷くと、改めて瓦礫の集まる方に目を向けた。

 すると、同時にその瓦礫の山が弾け飛んだ。大小様々な壁の残骸が四方八方に飛び散り、その内の数個がこちらに飛んできた。

 雷を纏った拳で全てを打ち砕き、パラパラと破片が舞った。


「……やれやれ。卸したてのスーツが台無しじゃないか。高かったんだよ、これ」


 呑気な声が崩壊したカフェの中に響く。

 瓦礫の山の、その中から、むくりと起き上がる影が一つ。

 ベルク・ドロフォノス。

 小太りの男は、まるで何事もなかったかのように立ち上がると、スーツに着いた汚れを手で払う。それから、首を鳴らしてハルとノーザンを見た。

 笑う。


「雷を纏う拳。……あぁ、そうか。君が「お父様」が言っていた雷の真六属性アラセスタか。いやはや、伝説の英雄様に会えるなんて光栄の極みだね。なっはは」


 余裕の態度にイラつくことなく、ハルは息を吐いた。一撃で終わることはないと分かっていたから、起き上がることも想定済み。驚くことはなにもない。

 ……ただ。


「あれれおかしいな。俺は確かに、お前の顔面に拳を叩き込んだはずなんだけど。お前、傷がないな」


「あれれおかしいな。僕は確かに、君の拳を顔面に叩き込まれたはずなんだけど。どうして傷がないのかな?」


「しらばっくれやがって。治癒魔法か何だか知らねぇけど、治る前にぶっ飛ばしてやる」


「君にそれが出来るとは思えないけどね?」


 言葉の殴り合いはここまででいいだろう。

 空気が変わった。

 ピリ……ッと、肌が粟立つ。沈黙が痛い、とはこのことか。ジャリっという、ハルが足を動かし靴裏で石礫を踏む音。

 ポタ、ポタ、ポタ、と、キッチンの方から水が滴る音が響いている。

 その、水滴がシンクに滴る音が鳴った、その瞬間だった。


雷漸らいぜん!」


 先に動いたのハルだった。

 落雷を凝縮させたような雷撃が、荒々しい音と共に一直線にベルクへと投擲される。

 対して、ベルクは笑ったまま動かない。雷の速度は音速だ。目で見て避けられるモノじゃない。

 

「なっはは。そんなんじゃ痺れないよ」


 一言。

 そう呟いた瞬間だった。

 バツンッ‼︎ と、ハルの雷撃がベルクに直撃する寸前で弾け飛んだ。花火のように散った雷が、青白く光る。

 その、光る粒子の雨の中、ベルクは優雅に腰を折って言葉を放つ。まるで、初対面の人に対して礼儀を重んじる紳士のように。


「初めまして、雷神アーサソール。僕の名前はベルク・ドロフォノス。どうぞお手柔らかにお願いします」


「ハル・ジークヴルムだ。一生忘れられない名前にしてやるぞ、ベルク」


「それは楽しみだ」


 直後。

 ハルが全速全開で、最初からフルパワーで、雷を纏った、それこそ雷神のように、ベルクへと突撃して行った。



 この瞬間。

 「ドロフォノス」との決戦の火蓋が、切って落とされたのだった。

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