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最後の異世界物語ー剣の姫と雷の英雄ー  作者: 天沢壱成
風都決戦篇
122/193

『三章』⑥ 風の約束ー肆ー


 ガツガツと、気持ちのいい咀嚼音が宝石鳥スフェラバードのリビングルームに響き渡っていた。

 およそ一週間分はあった食料が次々と底なしの胃袋の中へと消えていく。空皿が量産され、積み重なっていき、その勢いに呆気に取られるアカネは言葉を失っていた。


「おはわり! これとこれもおかあり! 全然足りないわ、早くほってきなさい!」


 量産される空皿。

 消費される食料。

 それら全ての原因は一人の少女だった。


 陽光を浴びた森林の色を美しく顕現させたかのような緑色の髪を長く伸ばし、まるで乾いた大地に潤いを与える『天雨』に似た水色の双眸。

 白い肌に華奢な身体を包むのはその美貌に似合わないボロボロの服。まるで何日も放浪の旅を続けたような格好だった。


「ま、まぁまぁ。ご飯ならまだ沢山あるから、もっとゆっくり食べないと喉詰まらせちゃうよ?」


「あぁん⁉︎ あはしに指図ふぁしずしてんじゃないわよ、このブス……んん⁉︎ んー、んー!」


「言ってる側から……」


 強気な言葉を吐いている途中で緑髪の美少女はアカネの言う通りご飯を喉に詰まらせた。苦しそうに喘ぎ、胸を叩いて、近くに置いてあった水を急いで飲み干す。

 そんな緑髪の美少女を呆れ果てながら見るアカネたち。

 緑髪の少女は水を飲んで落ち着くと、


「ぷはぁ! 死ぬかと思ったわ! って、なによ。なにジロジロ見てんのよ。はやくおかわり持って来なさいよ」


「「まだ食うのかよ‼︎」」


「当たり前じゃない。まだ腹二分目よ」


「「バケモンかてめぇ‼︎」」


 などと叫ぶハルとユウマを鬱陶うっとうしげに見てから息を吐く緑髪の美少女。

 まぁアカネからしてみればハルもハルで中々バケモノだと思うが、今は触れないでおこう。

 ともあれ大空を垂直落下していた美少女はハル? に助けられ後、宝石鳥スフェラバードの中へとご招待という形になった。


 止まらない暴飲暴食はさておいて、アカネは緑髪の少女に問うた。


「ねぇ。どうしてあんな上空から落ちてきたの?」


「はぁ? うっさいわよブス。私に話しかけんな」


「……」


 真っ当な疑問で当然の質問だったのに辛辣に切り捨てられたアカネは無言で立ち尽くすしかなかった。

 ……まって、そこまで言わなくてもよくない?

 などと一人でしょんぼりするアカネに見兼ねて、ハルが代わりに、そして結構強めに質問を飛ばした。


「おいお前! アカネに何てこと言うんだ謝れ! そんでアカネの質問に答えろ! 何で空から降ってきたんだよ!」


「じゃあなんでアンタはそんなに右頬腫らしてるのよ。ただでさえ平凡な顔が平凡以下になってるわよ」


「今それ関係なくない⁉︎ つーかコレはお前が殴ってきたからだろうが!」


「うっさいわね。騒がしい男はモテないわよ。……あぁ、まぁ見た目通りって感じね」


「ムカつくこいつ!」


 話題が脱線するどころではなかった。鼻で笑われたハルは悔しそうに地団駄を踏んでいる。今にも飛びかかっていきそうな雰囲気だが、そこでユウマが彼の肩に軽く手を置いて前に出た。


「まぁそう怒るなよハル。その子の言い分は正しいぜ」


「喧嘩売ってんのかてめぇ」


 ハルを無視してユウマは唇を緩めながら、


「オレのダチが失礼をしたな。こいつの顔面点数は大目に見てくれると助かる。で、キミはどうして空を……」


「大してイケメンでもないのにイキって格好つけてんじゃないわよ。イキりが移るから話しかけてこないで、このイキリカマカリ」


「誰がイキリカマカリ⁉︎ 変なあだ名付けてんじゃねぇ!」


「ぷくくっ。まぁそう怒るなよ、イキリカマカリくん。あいつの言い分は正しいぜ」


「ムカつくあいつ!」


 理不尽かつ毒舌な少女の言葉の暴力にユウマが憤慨ふんがいし、そんな彼をハルが可笑そうに笑っている。

 しかしこのままだと話が進まず埒が開かないので、再度アカネが口を開こうとして––––、


「訂正しなさい、この恩知らず」


 と、腰の騎士剣を抜き払い、その切っ先を緑髪の少女の喉元に突き付けたナギ・クラリスに呆気に取られ、アカネは出るタイミングを逃した。

 

「……へぇ。問答無用に剣を突き付けてくるなんて、アンタいい覚悟してるわ」


 普通なら身竦む状況下で、しかし緑髪の少女は傲岸不遜な態度を崩さない。 

 一触即発の空気が漂い、アカネはおろおろとし始めている。早く止めなければ、緑髪の少女が––––、


「……んた」


「? 何よ、ブツブツ言ってないでハッキリ言いなさいよ」


「アンタの目は腐ってんの⁉︎ ユーくんのどこがイキリカマカリなのよぉぉおおお‼︎」


「「いや訂正しろってそこ⁉︎」」


 ハルとユウマが同時に仰天していた。どうやらナギが抱いた怒りはユウマを馬鹿にされたことが原因らしい。

 ナギは剣を突き出したままユウマを見て、


「だってユーくんはカマキリじゃないでしょ! 私の旦那様じゃない!」


「……言いたいことは多々あるが、とりあえず落ち着け、ナギ。流石に剣はその子が可哀想だ」


「自分は優しいですぅ、みたいな空気出してんじゃないわよイキリカマカリ。きも」


「よしナギ。そいつは切って空に投げ捨てよう」


 などと結託を果たした二人に緑髪の少女が空に捨てられる前に、アカネが慌てるように間に入って止めた。

 まぁユウマとナギがそんな酷いことをする訳がないと分かってはいるが、体裁は重要だ。


「ま、まぁまぁ。みんな落ち着いて? あなたもそんなに邪険にしないでよ。第一、空を落ちていたところを助けたのはハルで、ご飯を食べさせてるんだからさ。あたしたちの質問にくらい答えてくれたっていいと思うけど」


 言いながら、自分でも卑怯な言い方だと少し申し訳ないとアカネは思う。

 助けた。

 食べさせている。

 これはこちらが緑髪の少女より立場が上だと遠回しに主張しているようなものだし、彼女の『善意』にチクリと棘を刺すような言葉の針だ。

 少しくらい無理を言ったとしても、こちらは『命の恩人』なのだから承諾してもらおう、と。

 事実、さっきまで傲岸不遜な態度を崩さなかった緑髪の美少女は言葉を詰まらせて、気まづそうにアカネたちを見回した。


 そうして、息を吐く音があった。

 緑髪の美少女が、仕方ないとばかりにフォークをテーブルの上に置いていた。


「……はぁ。確かにアンタの言う通りね、「黒髪」。アタシとしたことが、空腹とセクハラのせいで気が立っていたみたい」


「……セクハラって俺のこと?」


「第一印象は最悪だな、ハル」


「それはこっちのセリフだろコンチクショウ!」


 両手で顔を覆って座り込むハルを苦笑しながらアカネは見つつ、緑髪の少女の次の言葉を待った。

 「黒髪」。 

 そう言われ、ちゃんと「銀髪」であることが欺瞞されていてホッとしてもあった。

 聞く話によれば、「サフィアナ」と「アイオリア」はあまり友好関係とは言えない。そんな国同士の王族が、もしも仮に出会ってしまったらどんな事態に陥るか分かったものではないからだ。

 出来ることなら、事件が終わるまで『レイシア』であることは秘密にしていたい。


「まずは礼を。そこの青髪。助けてくれてありがと。これは本音よ。それからここにいる皆に感謝を。どこの誰だか知らないけど、命を助けてもらったことは一生忘れない。ありがとう」


「……」


 本当に、だ。

 本当に少し、意外だと思った。

 さっきからの態度を見て、彼女はプライドが高く傲岸不遜で、他者なんてどうでもいいと思う価値観をブラ下げて生きている少女だと思っていたからだ。

 それがまさか、『素直に自分の非を認めて頭を下げる強さ』を持っているなんて、誰が予想できただろう。

 それがまるで一国を背負う『王の資質』の片鱗かもしれないと、さてサクラ・アカネは気付けたか。


「……? なによ」


 呆然としているアカネたちから視線を浴びて、緑髪の美少女は首を傾げている。どうやら向こうはこちらの驚きなんて全然気づいていないしどうでもいいようだ。

 対してハルは笑って首を横に振ると、


「いや、何でもない。まぁ、とにかく無事でよかった。俺はハル。ハル・ジークヴルムだ。よろしくな!」


 そして、緑髪の美少女は優雅に長い緑の髪を片手で払い、堂々と名乗った。


「私はレヴィよ。よろしくね、『下民』共」



♢♢♢♢♢♢



「ふーん。なるほどね。アンタたち、「アイオリア王国」に向かってたのね」


 一通りの自己紹介を終えた時、レヴィと名乗った緑髪の美少女は紅茶を口に含んでそう言った。

 

「見たところアンタたちは「アイオリア」の国民では無さそうだけど、どこの国から?」


「あぁ、俺たちは––––」


 レヴィの問いかけにハルが答えようと口を開きかけたところで、アレスが割って入った。


「いや、オレたちに羽を休める「母国」はないんだ。こう見えて、旅団の一つでな。世界を旅してる」


 と、何食わぬ顔でそう言ってのけたアレスにメイレスとセイラ以外が驚いた。

 当然ながらアカネたちの母国は「サフィアナ」だ。存在しないなんてありえない。更に言えばレヴィの質問は別に怪しくもないし難しくもない。それこそ、『昨日の朝飯何食べた?』くらい簡単だ。


 だが、それでもアレスは「嘘」を吐いた。

 吐いたからには理由があるはずだ。

 セイラとメイレスはアレスの意図に気づいているから驚いていないようだが。

 

「……そうか」   


 と、アカネは思考に耽っていた顔を上げた。

 

(……レヴィちゃんはあたしたちが抱えている事情も、正体も知らない。しかもレヴィちゃんが「どこの国出身」なのか分からない以上、念の為に「サフィアナ」のことは隠しといた方がいいんだ)


 付け加えるなら、レヴィの正体が分からない上に空から落下してくるという謎の登場も相まって信用は全く出来ない。

 初対面の人間は疑い、信用するな。

 その精神は、考えは、アカネが誰よりも知っている。ただ、それを肯定することに対しては抵抗があるのもまた事実。

 人を信用しないことの異常性は、誰よりも理解している。流石にハルたちの時みたいに一から全部「この人は信用できない」と決めつけるわけではないが、レヴィに対して少しは疑心を抱いておいた方がいいのかもしれない。


 念には念を、とはこのような状況の時のために使われるのか。

 そんなアカネの考えなんてつゆ知らず、レヴィは自分以外の皆々を見回しすと感心したように「へぇ」と声を漏らした。


「世界を旅してるんだ。なんかいいじゃん、そういうの。『自由』って感じがしてさ。正直変人の集団に助けられたのかって思ったけど、そんなこともないみたいね」


 こちらの精神的ダメージを多少傷つけるような発言をしたレヴィに、ハルは意味わかんないとばかりに顔をしかめて、


「変人はどっちだよ」


「出会い頭に胸を揉んでくる男がいる集団を変人同好会と表現しないで何て言うのよ」


「「「これは同意見」」」


「ちくしょう敵だらけじゃねぇか!」


 もはや悲しすぎてハルは泣きながらリビングの隅まで走って座り込み、その背中をアカネだけが苦笑しながら撫でている。

 とはいえこちらはともかくレヴィ側からしたら大分警戒心は解かれたと見ていいのだろうか?

 ならば、再度質問をすれば答えてくれるかもしれない。

 アカネはレヴィを見て、


「それで。レヴィちゃんはどうして空を落ちていたの?」


 レヴィはアカネを見返して、


「ちゃん、はやめて。レヴィでいいわ」


「……じゃあ、レヴィ。あなたはどうして空を落ちてたの?」


「知らないわ。気がついたらここにいたんだから。私が空を落ちてたっていうのも、アンタらから聞いて初めて知ったんだし」


「……え、どうゆうこと?」


 予想外の返答にアカネは首を傾げた。

 当の本人が高空落下の原因を知らないとは、流石に考えてもいなかったのだ。全ての状況には必ず何かしらの原因、理由があるはずだ。それを、レヴィ自身が知らないとなるとこちらとしてもどうリアクションをしていいのか困る。

 第三者が事象の始めを知るには、当事者たちからの解答に繋がるヒントがなければならないのだから。

  

 アカネは困ったようにセイラをチラリと見る。すると赤髪の美女は察したかのように口を開いた。


「なら高空落下前の記憶でいい。お前は『どこの』誰で、『何を』していた」


 要点と、こちらが聞きたい情報の柱を捉えたいい質問だった。

 この訊き方をすれば、落下前とはいえレヴィの過去の足取りが少なからず得られる。


 レヴィは肩をすくめて、


「正直そこら辺も曖昧なんだけど……そうね。確か風が強い街にいた気がする」


「……風が強い街?」


 アカネが問い返すと、レヴィは首肯して答えた。


「ええ。それがどこなのかは分からないけど、風が強くてイライラしてた気がするわ。髪の毛だって崩れるし」


「崩れても分かんねぇだろ」


「元々崩れてんじゃねぇか」


「何か言った?」


「「何でもありませんよ」」


 などとボソリと呟いたハルとユウマに鋭い視線を送ったレヴィだが、今の発言だけでも分かったことある。

 多分。

 いいや確実に。

 彼女は、レヴィは……。


(記憶の欠落……。レヴィは最近の記憶を全く覚えてない……?)


 生まれてから今までの、全ての記憶がなくなってるとは思えない。しかしこうして会話を試みてみれば、彼女の意思とは関係なく『記憶』のピースが現段階の『脳』という名のパズルにはまっていない。

 単に彼女が嘘をついて演技をしているのか。それとも本当に『記憶』がないのか。


(確かめようにも、別にそこまでレヴィの『記憶』の有無を疑う必要もないんだよね……)


 そもそもアカネたちがレヴィを気にしているのは正体が分からないという理由もそうだが、単純に「アイオリア」の人間かどうか判断がつかないからだ。

 彼女の記憶があるにせよ無いにせよ、言い方は悪いが出身国さえ分かってしまえば後はどうでもいい。

 レヴィの『記憶』があろうが無かろうが、アカネたちには何の支障もない。


「レヴィは、何も覚えてないの?」


 単刀直入の質問に、レヴィは肩をすくめて、


「何も、っていうのは正しくないかも。だって名前は覚えてるし、どこで生まれたのかだって……」


「?」


 と、言葉途中でレヴィは顔を顰めると頭を片手で押さえた。その仕草と様子は、まるで頭痛に襲われているようでアカネは首を傾げる。


「頭、痛いの?」


 レヴィは眉を顰めながら、


「……いや、何でもないわ。少し眩暈めまいがしただけよ。まぁ私のことはまた後で教えてあげるとして……。アンタら、よくもまぁそんな奴と一緒に旅を続けてられるわね」


「そんな奴って誰のこと……」


 苦しそうに顔を顰めていた表情とは一転し、刺々しい声と態度でレヴィはとある人物を睨んだ。

 アカネの視線の先、レヴィの瞳に映っているのは先刻からこちらの会話を傍観していた薄紫色の髪を長く伸ばした妙齢の美女––––ノーザン・ドロフォノスだ。


「ソイツ、鼻が曲がりそうなくらいに血の匂いがプンプンするわ。数多の人を死に追いやった汚い人間性を身に纏ってる。……ソイツ、罪人よね?」


「……っ」


 ドンピシャ。

 クジで言うなら当たりだ。 

 そういえば、この世界の人間は「罪人」をオーラや雰囲気だけで見極めることができることをアカネはすっかり忘れていた。

 ノーザンもノーザンで、アカネたちには罪人であることがバレているのだから自らそのいわくつきのオーラを隠していなかったのかもしれない。

 もっと言えば、ノーザンは泥犁島ないりとうでの一件で全快ではない。いつもなら出来ていた気配の隠蔽が思うようにいかなかったのだろう。


 空気がピリピリとし始めている。

 しかしそんなことなんて関係ないとばかりに、ノーザンは両肘を抱えるように腕を組んで、


「何を言ってるの? 私はこの旅団の『母親』担当である『ノーシン』よ。罪人なんて、そんなまさか。勘違いもいいところだわ」


「な……」


(((サラッと嘘つきやがった!)))


「あはは……」


 何食わぬ顔で呑気に平然と嘘を吐くあたりは罪人らしい。ハルとユウマにセイラが目を剥いて、アカネが苦笑する中レヴィは口をポカンと開けた状態から切り替えるように、


「あ、アンタそのオーラでよくもまぁいけしゃあしゃあと嘘をつけるものね! どっからどうみてもアンタ罪人じゃない! 真っ黒よ、真っ黒! すみ黒助くろすけよ!」


「誰だよ」


 とかいうハルをノーザンは普通に無視して艶めいた息を吐き、


「あらあら。記憶喪失だけじゃなくて人の良し悪しを判断する思考回路の方も焼き切れてしまったのかしら。哀れねぇ、ギャーギャー娘ちゃん?」


「誰がギャーギャー娘⁉︎」


「うるさい。ちょっとレイ……アカネ。緑ギャーギャーを黙らせてちょうだい」


「せめて女か娘は付けなさいよ!」


「ま、まぁまぁ……」


 苦笑しながら二人を宥めるアカネの中で、どうやらノーザンとレヴィは気が合わないようだと結論づける。

 とはいえ、レヴィの目が真実を射抜いているのは確かだ。ノーザンがこちらの味方とはいえ、世間一般的には罪人はこの世の害悪そのものだ。仲間だと説明して「はいそうですか」と納得してもらえるとは到底思えない。

 ここはひとまず、ノーザンの咄嗟の嘘に付き合いつつ折り合いを見て本当のことを言った方がいいだろう

 ……まぁ、そこまで行動を共にするのであれば、の話ではあるが。


「まぁ、ソイツのことはとりあえずいいわ。アンタらが誰といようが私には関係のないことだしね。……で? まさかとは思うけど、この不思議鳥ちゃんに乗ったまま「アイオリア」に行くわけじゃないでしょうね?」


 ガルルルとノーザンに睨みを効かせていたレヴィがふとそう言って、アカネは首を傾げる。


「え? そのつもりだけど……違うの?」


「うむ。違うぞアカネ」


「メイさん?」


 メイレスはソファに腰掛けるハルの膝上にまたがって、


「スーちゃんで「アイオリア」に直接行くことはもちろん可能じゃが、そうすると「アイオリア」の国民を怖がらせてしまう。じゃから「アイオリア」近隣の街までスーちゃんで空路を進み、あとは陸路を使って入国する」


「……なるほど」


 確かにバカでかい鳥がいきなり自分の国の上空から現れたら普通に怖い。更にそこから人が出てきたらもっと怖い。どっかの国やら組織やらが攻めてきた、侵略してきたと思われても不思議ではない。

 だからなのだろう。レヴィがアカネに「アイオリア」まで宝石鳥スフェラバードで行くのかと尋ねたのは。


 では逆に。

 空路を捨てた後、陸路を進むのはいいのだが。


「あたし、てっきりこのまま「アイオリア」に向かってるのかと思ってたから、その、陸路を進むって……じゃあ今あたしたちってどこを目指してるの?」


 そういう話になってくる。

 直接ではなくどこかの街を経由して「アイオリア」に入国するのなら、ではこの宝石鳥スフェラバードはどこへ向かって翼を羽ばたかせているのか。

 そんなアカネの疑問に答えたのは窓際に背を預けて立つ灰色髪の騎士。

 アレス・バーミリオン。


「『エウロス』。酒宿、娼婦街が有名な、子供には少し刺激が強いところだよ」



♢♢♢♢♢♢



 –––––数時間後。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」


「待ってくれそこのお嬢ちゃーん! オラの店で娼婦をやっておくれよー!」


「いやァァァァァァ! なんでこーなったのよぉおおおおおおおお‼︎⁉︎」


 別名・夜の街。

 新宿歌舞伎町のような街並みの、ネオンの光に包まれた怪しくも妖艶な街の中を、バニーガールの格好をした銀髪美少女のアカネは泣き叫びながら全力疾走していた。


 さぁ、説明しよう。

 何故こんなことになったのかを‼︎‼︎‼︎

 次回に続く‼︎

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