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【3巻発売中】私の推しは魔王パパ  作者: 夏まつり@「私の推しは魔王パパ」発売中
1章 魔王は魔界を手に……入れたくない
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01-03 十歳にしてチート能力、さすが魔王(1)


 寝て起きたら病院のベッドの上でした、という夢オチを期待していたけれど、そうはいかなかった。見慣れない天蓋付きベッドの天井を眺め、ため息をつく。どうやらまだ私はディアドラであるらしい。


 ――作っておいた肉じゃが、どうなったかなあ……洗濯物も干しっぱなしだし……。


 ということが気になったけれど、心配しても仕方がない。家事能力が壊滅的な母も、いい大人なのだから最低限のことは自分でどうにかするだろう。


 ゆっくり体を起こし、周りを見回してみる。窓の外は薄暗いけれど、魔王城の周りを覆う厚い雲のせいだ。魔族の住む大陸は魔素の力が強いとかで、昼でも雲が多くて薄暗い。時計を見るとまだ朝の五時だった。昨日は夢オチを期待してさっさと寝たから、そのぶん早くに目が覚めてしまったらしい。


 ――さて、どうしよう。


 腕を組み、うーんとうなりながら、もう一度ベッドに横になる。


 日本での最後の記憶は、自分に向かって突っ込んでくるトラックの姿。アレとぶつかって生きていられたとは思えない。それに今の状況は夢とは思えないほどリアルな感覚がある。信じたくないけれど、これはやっぱり、ゲーム世界に転生したか、ゲームキャラクターに憑依したかなんだろうか……?


 まだ夢オチへの期待を捨てられないものの、最悪私はこの世界で生きていかなきゃいけないのかもしれない。


 ゲーム通りの展開なら、私は魔王となって人間の町も村も国すらも焼き払い、人間を殺しまくり、残虐非道の限りを尽くして、最終的に聖女に倒されて死ぬことになる。それは色んな意味で嫌すぎる。絶対に避けたい。


 血を見るのも苦手なのに人を殺すとか無理だし、何より戦うなんて怖い。ヒロインや攻略対象から魔法や剣で攻撃されたらどうなるか? そんなのめちゃくちゃ痛いに決まっている。絶対に嫌だ。剣と魔法のファンタジーなんて、物語だからこそ好きだったのであって、現実になってほしかったわけじゃない。


「魔王にならなきゃいいのかなー? その場合、どうなるんだろう」


 魔王になるのをやめたとして――やめられたとして――聖女と攻略キャラクター達が攻め込んで来たら、魔王の娘なんて一緒に倒されそうだ。それに現魔王が倒されるのも嫌。あんな好みのキャラクターを倒されたくない。聖女が魔王を倒すという展開を何とか回避できないかな? 出来ればそう、穏便に、平和的に。


「よし、思い出せる設定を書き出してみよう」


 勢いをつけて起き上がり、部屋の中のデスクから適当なノートを引っ張り出す。開いてみると新品だった。ノートのタイトル欄をどうしようか迷って、ゲームの題名をそのまま書くことにした。


 レジェンド・オブ・セイント――聖女伝説。


 乙女ゲー厶にしてはRPG要素が強く、ヒロインである聖女のキャラも濃い。しかも魔王の行為はR指定が必要なんじゃないかと思うほど残虐だったので、一部の熱心なファンを獲得する一方で、乙女ゲー厶界における評価は低かった。


 私は信者でもアンチでもなく、そこそこに楽しんでいただけだったのに、なんでこんな目に。そもそもまだ二人しかクリアしていない。せめて全クリしてからにしてほしかった。


 主人公の育成も自由度が高い。聖女は聖属性魔法を使う上、装備可能武器は杖なので、素直に魔法型に育てる人が多い。けれど力のパラメーターを上げまくって杖で殴るゴリラプレイもできる。この世界の聖女がどう育つかはわからないけれど、順当に魔法型かな? ……いや、考えてもわからないことを考えるのはやめよう。


 攻略キャラクターは五人。騎士と王子、幼馴染、聖職者、それから魔族が一人。ほぼ全員、大切な人を魔王に奪われたことで魔王を倒すために立ち上がった、という設定だった。人間の国家は……あれ、いくつだっけ? ゲーム画面ではワールドマップをよく見ていたはずなのに、いざ書き出してみようとするとうろ覚えだ。


 そういえば城なんだから書庫くらいあるかなぁと考え始めたところで、コンコン、と窓を叩く音がした。



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