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【3巻発売中】私の推しは魔王パパ  作者: 夏まつり@「私の推しは魔王パパ」発売中
1章 魔王は魔界を手に……入れたくない
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01-04 最推しは現魔王(1)


 夕食の時間になってダイニングに行くと、既に現魔王は席についていた。配膳中の使用人がぎょっとしたように私を見る。確かにディアドラは呼ばれるまで食事に出てこなかったけれど、そんなに怯えないでほしい。黙って席に座ると、現魔王がじっとこちらを見つめてきた。


 な、なんだろう。なんでだろう。


 エメラルドのような双眸(そうぼう)には落ち着いた光が宿っているし、星空を映したような紺色の髪も輝いて見える。


 ――あ、あれ?


 元々好みだったけど、最初に彼を目にした時よりキラキラして見える。誰がなんと言おうと格好いい。


 ジュリアスの現魔王語りを聞いたせいに違いない。この感覚はあれだ。友達の萌え語りを聞いていたら、いつの間にか同じ作品にハマっていた時のやつだ。


 私は現魔王をじっと見つめた。

 こんな人が父親なんて最高すぎる。

 ぜひ呼びたい――お父様と。


 さすがに口に出す勇気はないけれど、心の中でそう呼ぶくらいはいいよね。この体は彼の娘なのだし。現魔王――いや、お父様がこちらを見ながら静かに言う。


「今日はザークシードと手合わせをしたそうだな」


「うん、まあ」


 どうして知っているのだろうという疑問は、ジュリアスを思い出した時点で引っ込めた。


「たまには私とも手合わせしてみるか?」


「!?」


 なんでよ!?


 顔を強ばらせ、何度も首を横に振る。


 意味がわからない。魔族ってなんでこう、ことあるごとに戦おうとするんだろう? 魔族は全員脳筋なの? しかも魔王を相手にするなんて、下手をすれば死ぬ。下手をしなくても死ぬ。よくて大怪我だ。冗談じゃない。


「そうか……」


 ではやめておこう、と言ったお父様は心なしか残念そうだった。心が若干痛まないでもなかったけれど、戦うのだけは全力で拒否させてほしい。私は平和に暮らしたい。


「そ、それよりは、ボードゲームとかで遊んでくれた方が嬉しいかなー、なんて……」


 なんとか話をそらそうと、適当に言ってみる。するとお父様の背後に花が咲いた。……ような、気がした。表情は全く変わっていないのに、まるでお父様の周りだけ明るくなったように感じて、目をこすってみる。再び目を開けた時には何の変化もなかった。


 気のせいだ、たぶん。


「あの、冗談だか――」


「いいだろう。食後に応接室にでも行こう」


 えっ、いいの!?


 適当に口から出ただけで本気ではなかったのだけれど、お父様は既にベルで使用人を呼び、食後にお茶を応接室に運ぶよう伝えている。本当に遊んでくれる気であるらしい。お茶まで頼まれてしまった手前、冗談でしたと引っ込める勇気もなく、私は目をそらすしかない。


 でもお父様とボードゲーム、というのも悪くないのでは? お父様は見るからに賢そうだから勝てる気はまるでしないけれど、スマホもテレビもなくて退屈だったし、平和に遊べるなら嬉しい。


 この世界のボードゲームって何があるのかなと考え始めたところで、


「ところで、その〝ぼーどげーむ〟というのは一体何だ?」


 というお父様の言葉に、頭を抱えたい気持ちになるのだった。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  色々なキャラクターの感情表現がとても良いと思います!  面白いのでぜひぜひこれからもがんばってください!
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