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岩山田颯太と(不)愉快な仲間たち

 ……結局、係りの人だの警備の人だの来てしまったわけで、俺たちは事情説明に追われねばならなかった。で、警察まで来てしまって……なんだかんだと事情聴取を受けた。


 一応、最初に殴りかかって魔法を使ってきたのはDQNということで、こちらは罪に問われることはなかったのだが、こってりと厳重注意をされた。

 ……で、解放されたのは、二時間後。


「やっぱり、こんな世界は支配しないといけませんね……」

「うぅ、妹子お腹空いたよぅ……」

「あたしも……」


 なんという外出になってしまったんだ……。やっぱり、DQNと関わるとろくなことにならない。

 ……というか、まだ終わっていないようだった。


 DQNの仲間っぽいやつが、ところどころにいて、俺たちのことを監視している。こいつら、警察がいようとお構いなしか。


「……やっぱり、暴れてやりますかね。どうせ、作られた世界なんです。なにを我慢する必要があるんですかね」


 美涼の問題児っぷりに、拍車がかかっている。作られた世界といっても、この世界にいる限り、この世界の法律があるわけなのだが。夢のように毎回リセットというわけにはいかない。こうなると、作られた世界といっても、現実とそんな変わらないんじゃないかという気もしてくる。


「私はDQNという下等生物が最も嫌いなんです。粛清したいほどに」


 まぁ、俺も概ね同意ではあるが……。しかし、そんな好き勝手やるわけにもなぁ。美涼の力を持ってすれば、本当にDQNを撲滅できてしまうんだろうけど。


「まぁ、とりあえずメシを食おう」


 ショッピングモールに隣接する公園に、DQNが集結しつつある。警察は帰っちゃったし、これはもう一波乱ぐらいあるだろう。


「そうですね。腹が減っては戦はできぬです」

「もうっ、どうしてこうなっちゃうのよ!」

「お腹空いたよぉ~」


 うん……こうなったら腹を括るしかない。元々は俺の作り出した世界だ、なんとかなるだろ。たぶん。


 で、ファーストフード店で手早く食事をとった俺たちは、公園に向かった。そこには、DQNどもが数十人集まっていた。こちらも、もう逃げも隠れもしない。ハンバーガー食べてる間も、監視されてたしな。


「あいつらですぜ、岩山田先輩!」

「もうぶち殺しちまいましょうぜ、岩山田先輩!」

「岩山田先輩、お願いしゃす!」


 公園の真ん中――噴水のあるところに、痩せぎすの男と、いかにも下っ端という感じのDQNたちがいる。


 まったく、わかりやすい連中だ。あれが……勅使河原が言っていた、岩山田の兄ということだろう。結局、DQN同士、繋がりがあったわけだ。


 岩山田の兄は……実の兄弟とは思えないぐらいに、雰囲気が違う。

 髪型は短髪で、引き締まった体躯。目つきは暗くて、鋭い。

 タイプとしては、ボクサー崩れな感じか。


「ふん、ちょうどいいですね。このエリアで一番の実力者と言われる岩山田颯太。そんな奴は一撃でぶちのめして、私がこの街でナンバーワンだということを知らしめましょう」

「ほ、本当にやる気なの?」

「無論です。この世界に、ああいうDQNは必要ありません。警察ですら、岩山田颯太自身をなんとかすることはできないみたいですしね……いい機会です」


 せめて、俺のシンクロ率がもうちょっと上がってからのほうがよかったんだが。今のままじゃ、完全に足手まといだし。


「というか、大規模な喧嘩になっちゃったら、マジで逮捕・退学ルートじゃないのか?」

「そうなったら、いよいよ世界征服に乗り出すときじゃないかと思います」

「無茶苦茶すぎるだろっ!」

「それがいいんじゃないですか。平凡な学園生活なんて、つまらないだけですよ」


 ああもう、このままじゃおかしな方向へ行ってしまいそうだ。


「けけけっ、お前ら、マジでバカだよなぁ。岩山田さんが出てきたからには、もうおしめぇだぁ」

「お前らみてぇなハンパな学生とは訳がちげぇぜ!」

「駅前での借り、しっかり返してやるぜ! お願いしゃす、岩山田さん!」


 先日駅前で勅使河原に電撃をくらった奴までいる。まったく、どこにでも湧いてきやがって。

 ……もうこれは、やるっきゃないよな。


「……ま、ここは私一人で十分です。とりあえず、先輩たちは高みの見物でもしていてください」


 美涼は、そのままDQNたちのほうへ進んでいく。


「あぁん、やるのか、くるぁ! ……お願いしゃす、岩山田さん!」

「へっへっへ、おめぇもここでおしまいだ、このアマァ! ……岩山田さん、やっちまってくだせえっ!」

「い、岩山田さん! 一撃で倒しちまってくだせえ!」


 依存心高すぎだろ、このDQNども!


 そして、肝心の岩山田の兄はというと……無言で、美涼のほうへ歩を進めていく。まったく体に力が入っていないような動き。それは、なんというか非常に不気味なものがあった。


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