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色のない氷雨
わたしが現実を通りすぎると
色のない氷雨が
露出した背骨に降ってきた
きっと現実から嫌われてしまった
明日というおそれが
冷たい頬をすり寄せて
喉をしめる
背後の影が真正面から歩いてきたら
瀕死の病人のような秋は
もう過ぎ去って
死後の冬
曜日に色があった幼少期
水曜は青で
月曜は赤だった
機械が空を埋め尽くして
雲のアルゴリズムが
卑小に染まる
わたしには現実のかたちがない
つま先を
踏んだ神さま
傷を見るたび思い出す
痛みという言葉を呼び出すために
これだけの言葉を費やさなければならない
頭の牢獄
わたしは隅っこにいつづけよう
現実という
霊を見た
多感な時期の感傷で




