表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/914

死の代行者

 死の代行者だいこうしゃは引く手あまただ

 自分の代わりに死んでくれる

 契約料はささやかなものだ

 死なずに彼を忘れないこと

 彼が肩代わりしてくれた

 投身・首吊り・服毒・入水じゅすい

 あなたがいずれするはずだった

 投身・首吊り・服毒・入水とは

 似て非なるものだ

 あなたのするはずだった行為が世界に示すものと

 彼が代行した行為があなたに示すものは

 似て非なるものだ

 あなたが良心的な契約者なら

 あなたは彼を忘れない

 彼が献身的な代行者であろうとも

 彼はあなたを忘れてしまう

 あなたが世界になにを示そうとも

 世界はそれを忘れてしまう

 彼がどれだけすみやかに消えようとも

 あなたは彼を忘れない

 あなたと世界は似て非なるものだから

 世界の残酷さを真似る必要はない

 世界と彼から忘れられてしまうあなたが

 忘却に四方を囲まれたあなたが

 あなたの意志によって彼を忘れないのなら

 あなたの生存と死は似て非なるものだ

 あなたの魂と死は似て非なるものだ

 世界よりも優しくあるために

 あなたが死を選ぶ必要はない

 彼が死を代行したことを

 あなたが気に病む必要はない

 あなたが世界に投げかけた呪詛じゅそ

 一顧いっこだにされず聞き届けられなかったように

 彼があなたに求めた契約料も

 一顧だにされず支払われないのだろうか

 死なずにいることであなたが救われるかはわからないが

 忘れないことで彼は救われる

 あなたの救いと彼の救いは

 似て非なるものだからだ

 途上で出会う死は彼に任せて

 道の果てまで歩いていこう

 そこで待っている死にはきっと

 代行者などいないのだから

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ