表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
899/919

リハビリ

 わたしはなかなか

 書かなくなってしまったけれど

 無理に書こうとするよりは

 源氏物語を読んだりすることが

 リハビリになるような気がなぜかして

 病院に通うような気分で

 この長大な古典を読み耽って

 ときにサボって

 ときに上の空で

 ときにこころが揺れたりもして

 失われた時を求めてよりも、ユリシーズよりも、特性のない男よりも、白鯨よりも、ドン・キホーテよりも

 読むのに時間がかかってしまったけれど

 わたしはなかなか

 この病院に差す仄かな光が

 気に入り始めていたけれど

 それももうすぐ読み終えてしまう

 ほっとするような、寂しいような

 雨が上がってもなお曇り空という案配で

 一読したからといって

 読書に終わりはないけれど

 とはいえひとつの節目ではある

 わたしは退院できるのだろうか

 新たな病院を探すだけだろうか

 わたしは書きたいのだろうか

 書けるのだろうか

 紫式部の日記には

 花の色も、鳥の声も、空の景色も、月の光も、霜雪も

 そんな季節になったのだな、と感じるだけで

 この先どうなるのだろう、とお先真っ暗な心細さは募るばかりで

 ただ物語を様々にいじくることで自分の虚しさ寂しさを慰めて

 「世にあるべき人かずとは思はずながら、さしあたりて、恥づかし、いみじと思ひ知るかたばかり逃れたりしを」

 などと述べてあって

 なんだか共感したりもしながら

 わたしはこのリハビリに励んでいた

 仄かな光を惜しむようにして

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ