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さるべきこと
源氏物語を読んでいると
さるべきこと
という言葉がよく出てくる
自分に降りかかった不運や不幸や不条理を
仕方がない、前世からの定め、宿世、運命だったのだろう、と
登場人物は諦め、受け入れようとする
ヴォネガットが
スローターハウス5という小説のなかで
人の死に触れるたび
そういうものだ
という言葉を
投げやりなほどおびただしく書きつけたことを思い出す
さるべきこと
そういうものだ
受け入れがたいことを受け入れようとして
それでも受け入れられない痛みが
余白にこだましているような
簡潔な言葉