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曇りなき嫌悪
曇りなき好意が
わたしにはない
曇りなき嫌悪なら
抱けるかもしれない
嫌悪の選り好みが
わたしは激しい
他人のもらす嫌悪に対して
その嫌悪はダメだ、その嫌悪は濁りがひどい、その嫌悪は差別的で腐りきっている、などと
ひたすら難癖をつけている
そんな自分も嫌悪して
その嫌悪すら品定めする
澄みきった嫌悪に出会うと
惚れ惚れする
なぜかはわからないけれど
それはだれにも伝わることのない
ひどく個人的な
愛への迂回路に思える
少なくとも
卑劣と信じたなにかを避けるために
その人はそこまで
嫌悪を守りきるしかなかったのだ




