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イーストウッド
イーストウッド
前から好きではあったけど
監督した作品のほとんどを立て続けに見返して
改めて敬意を抱いた
九十歳を越えてもまだ映画を撮っている
自身の老いをこんなふうに
物語に組み込んで、視覚的に記録した人間がかつていただろうか
日常の人柄がどうかなんて知らないし
政治的によからぬ部分があるとも聞くけど
少なくとも作品にあらわれるかぎりでは
他者を尊重し、過剰なまでに倫理に執着するその姿勢に
欠点も含めて惹かれてしまう
ずいぶん緩い映画もあったけど
その緩さにすら愛敬があった
鷹揚な饒舌と寡黙さがそこかしこにあった
老いる、というのがすべて失敗なら
イーストウッドは魅力的な失敗だ




