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記憶のはらわた
思い出すということは
自分から抉れるということだ
わたしは前に進むために
嫌らしく絡みつく記憶のはらわたを
ちぎらなければならないのか
その嫌悪は最大の好意でもあった
自分から抉れることをわたしは怖れて
わたしは思い出さないことにした
わたしは前に進まないことにした
そう決めたわけではないのだが
いつのまにかそうなっていた
なぜかわたしはこの期に及んで
またしてもこのはらわた
触れるだけでも痛むはらわたを
ちぎりながら記憶に分け入っていた
もっと深い痛みのために