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陳腐な悪夢
夢を見た
虐殺が行われている街で
逃げまわる夢
あの境界線を越えれば殺されずに済む
そう思ってその線に向かって走ったが
ガスマスクをつけた部隊が
火炎放射器で道に火を放っていて
引き返すしかなかった
線にはたどり着けなかった
殺されるのは時間の問題だった
そのあたりで目が覚めた
陳腐でありきたりなイメージだけど
そんな悪夢を見るということは
遠い国の遠い出来事を
少しは真摯に感じられたのか
いや、たかが悪夢を見ただけで
目覚めて、ああ、夢でよかったと、すぐさま日常に戻れて
それが、何事かであるわけはないだろう
死に真剣になれたわけでもなく




