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手と手
空想のなかで
死に行く人と握手
あなたに会いたいよ
こころから
妄想のなかで
死に行く自分に手を振る
あなたは頑張ったよ
それなりに
神さまに手があるか知らない
死後に手があるか知らない
それでもなかなか好きだったよ
握手とか手を振るとか、そういう身振り
手がない人もきっと手を振っていた
握手していた
つまり、そういう交流がある相手とは
そういう伝達があった
夢想のなかで
手と手がつながり
他人が他人のまま理解できたり
どれだけ小さな声も握りつぶされず
それに触れているのはまぎれもなくわたしだと、初めて発見したように驚きながら
それでもそれがあたかもありふれて自然であるかのような
手と手
夜明けのような




