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十年前の映画
生きなければ、と
告げて終わる映画を
見返した
十年前に見たときは
よくわからなかった
いま見たら
少しわかった
別に難解な映画でもないけれど
十年経てば見え方も変わる
死んでいいよ、と
告げて終わる映画はない
そう言っているかのようなバッドエンドはあるけれど
語るという行為には、死ねというメッセージに逆らう側面が必ずある
驚くべきことに、必ずある
死者が死者に向かって語ることでもないかぎり
そうなってしまう
幸いなことなのか残念なことなのか
生きなければならないらしい
どうやらそうらしい
明日死ぬとしても
それまでは生きなければ




