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わたしが消えていく
もうだれとも
会いたいと思えない
もうどこにも
行きたいと思えない
食べなければ人は死ぬ
わたしは食べたくなかった
動かなければ人は死ぬ
わたしは動きたくなかった
群れることは人の性だ
わたしは群れたくなかった
語ることは人の性だ
わたしは語りたくなかった
こころはある
寂しさを感じるこころはある
でもその寂しさは
他人といるかぎりふりつもる
生きているかぎりふりつもる
こころはある
生きたいと願うこころはある
でもその願いは
他人といるだけで消えていく
生きているだけで消えていく
もう少しも
生きたいと思えない
もう少しも
死ねないと思えない
それでもいまは生きている
それでもいまは生きている
わたしは生きたくなかった
それは間違いなく嘘だ
わたしは死にたくなかった
それも間違いなく嘘だ
嘘をひとつひとつ洗い落とすと
わたしになにが残るのだろう
わたしは生きられるのか? 死ねるのか?
わたしは死ねるのか? 生きられるのか?
わたしは亡霊だ
死ぬことを望む亡霊だ
わたしは空白だ
生きることを望む空白だ
もう
生きようとは思わない
もう
死のうとも思わない
もうわたしは
こころを灯そうとは思わない




