ぼくを葬る その他の詩

インクが滲むように

　あなたの顔も声も

　忘れることになるのでしょうか

　もう永遠に会えないのですね

　インクが滲《にじ》むように

　記憶を読み取れなくなるのでしょうか

　反古《ほご》にされてしまう記憶

　あなたの顔や声は

　刻まれることなく溶けてしまうのでしょうか

　もう永遠に会えないのですね

　忘れることの痛み

　忘れないというあがき

　滲んだインクに指先が枯れる

　死ぬときに涙はいりません

　哀しみに涙は浮かべません

　滲んだインクが涙に混じって

　滴《しずく》が濁るのを怖れるから