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なりたいもの
ひとりでいるときに
なにかを落として傷つけたりすると
つい謝ってしまう
人にではなく物に
コップにごめんなさい、書物にすみません
自分がもしも狂ったとしたら
こういう独り言はさらに悪化するのだろう
四六時中なにかに謝っているのかもしれない
触ってごめんなさい、見かけてごめんなさい、近づいてごめんなさい、同じ空間にいてごめんなさい
なんだか卑屈だ
でもたしかだれかの詩に
自分が空間を占めることのいたたまれなさが
うたわれていたような気がする
その詩は不思議と卑屈ではなかった
軽やかな風が吹いていた
ああいう詩に
わたしはなりたい