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死にたがり暦歌
一月は凍死
吹きすさぶ寒風が年明けのめでたさに人を殺す
二月は殉死
場違いな忠義がおのずから燃えあがって人を殺す
三月は餓死
見捨てられた空白が春風を伴って人を殺す
四月は狂死
暖かな気候がこころくるめかせて人を殺す
五月は頓死
去年からの憂鬱が満開に花ひらいて人を殺す
六月は慘死
梅雨時の殺意が湿り気を帯びて人を殺す
七月は熱死
失われた慈雨が五体を渇えさせて人を殺す
八月は溺死
反魂の水気が衆生を呑み込んで人を殺す
九月は圧死
立ち遅れた残暑が群衆を煽らせて人を殺す
十月は枯死
秋めいた流行り病が黄昏を患わせて人を殺す
十一月は刑死
消えることのない過去が罪の威を借りて人を殺す
十二月は自死
歳月の重みが生きることを厭わせて人を殺す
もちろんのことですが
年間に起きる人死には
いちダース程度では済みません