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人はある日、詩人になる

 詩を書くようになるなんて

 少し前までは思ってもみなかったな

 たとえ読むのは好きであっても

 詩を書くなんて恥ずかしかった

 いまだってたまらなく恥ずかしい


 きっかけだけははっきりしている

 彼女と会えなくなったからだ

 あの人のいない日常の

 心臓を針に囲まれたような

 頭のおかしくなりそうな

 つきまとう痛みに耐えきれなくなったからだ


 『星の王子さま』に出てきた酔っ払いは

 酒を飲んでいる恥ずかしさを忘れるために

 酒を飲みつづけていた

 アルコールを飲めない年齢でも

 酔っ払いの気持ちはよくわかった

 ぼくもまた

 彼女を失った恥ずかしさを忘れるために

 恥の上塗りのような詩を書いている

 詩作のジャンキー

 誰が読むかもわからない

 価値があるかもわからない

 そんな言葉の塊を

 垂れ流すことに中毒している


 とある詩人の

 『初期ノート』という断片集に

 「やがて痛手は何かを創造することだらう」という

 おそらくは経験的なアフォリズムがあった

 痛手はたしかに

 詩を生んだ

 あらゆる物思いや記憶のかけらを

 無理矢理にでも言葉にする

 けれどこれは詩と呼べるのか

 口ごもった舌足らずの落書きじゃないか

 それでも書かずにはいられない

 詩を書かないと眠れない

 詩を書いていないと死にそうになる


 書いて死のうが

 書かずに死のうが同じなら

 とにかくもぼくは

 書いて死のうと決めたのだ

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