表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/917

真夜中の誘い

 父さんは眠った

 母さんも眠った

 ずっとそばにいる

 黒い死霊しりょうだけは眠らない


 枕許まくらもとで死霊はささやく

 きみとぼくとで

 みんなをあっと言わせよう

 手を握るんだ

 そうすればあとは

 ぼくに任せて眠ればいい

 死霊の吐息は土臭い

 悪いけど

 布団の外に手を出したくない

 いまは夜中でとても寒いから

 枕許で死霊はささやく

 ぼくの手を握れば

 こころがとても温かくなるよ

 きみの嫌いなアシダカグモにも

 負けないくらいに強くなれる

 手を出してあとは眠ればいい

 死霊の声はカビ臭い

 悪いけど

 知らない人には触りたくない

 他人はクモより苦手だから

 枕許で死霊はささやく

 きみとぼくとは

 生まれる前からの仲なんだよ

 お腹の中で先に死んだ

 きみの大事な影なんだ

 もう一度だけ共に眠ればいい

 死霊の言葉は哀れっぽい

 悪いけど

 早く黙って眠りたい

 きみの望みはよくわかったから


 ぼくは死霊の手を握り

 眼を閉じ眠って夢をみた


 朝になると

 ぼくはぼくの外にいた

 ぼくなしでいとなまれる朝の食卓

 ぼくの椅子には知らない誰かが座っている

 おはようと父は言い

 よく寝たねと母は言う

 お父さん

 お母さん

 それはぼくではないのです

 ぼくをまとった死霊なのです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ