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人の死ぬ場面
映画のどこに着目するかは
人それぞれだろう
ぼくはどうしても
人の死ぬ場面が
記憶にこびりついてしまう
猫の眼前で惨殺される宇宙船乗務員
狩猟用のトラバサミで頭蓋を挟まれる荒くれ者
鳥に両眼をえぐられた農夫
収容所で暇つぶしに射殺される中年女性
脳漿をぶちまけながら破裂する超能力者
時計塔の短針と長針にすりつぶされる貴族
プールで血をまきちらすように鏖殺されるいじめっ子たち
トイレの便座に座って自分の頭を吹き飛ばす訓練生
ぞろぞろと
スタッフロールのように
おびただしい死者たちが流れてゆく
どんなにグロテスクでも
すべて優雅なダンスのようだ
人の死が美しいのは
夢のなかだけだろうから