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痛みと無
思い出すたびに胸が痛む
そんな相手がいることは
だれもいないよりは
マシなのだろうか
こんなに痛くても
悲嘆と無なら
悲嘆を選ぶ
その言葉についてたびたび思う
悲嘆がどれだけ痛くても
無を選ぶべきではないのだろうか
こんなに痛くても
悲嘆は痛い
無は痛くない
死は無だろうか
死は痛いだろうか
こんなに死にたくても
思い出すたびに死にたくなる
思い出せないと生きたくなくなる
記憶と無なら
記憶を選ぶ
痛みと無なら
無を選ぶ
記憶が痛くてたまらない
忘れないまま死にたい
こんなに痛くても