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コンビニで見かけた死神

 コンビニで死神が

 煙草たばこを注文していた

 新人の店員がもたついていると

 背後からやじりを投げつけた

 突き立った鏃に気づきもせず

 店員はようやく煙草を持ってきた

 死神は物静かに会計を済ませ

 鏃を投擲とうてきしたことなどおくびにも出さず

 コンビニを出ていった


 慌ててぼくは死神を追った

 袋をぶらさげてのろのろと歩く背に

 待ってくださいと声をかけた

 肉まんをパクつきながら死神は

 声をかけたのが気の毒になるほどに

 とてつもなく億劫おっくうそうに振り返った

 煙草を持ってくるのが遅かったせいで

 あの店員さんは死ぬんですか?

 そう訊かれた死神は

 彼の行動なんて関係ない

 死ぬべきときが来たら死ぬだけだ

 肉まんを食べ終えてぐったりした様子で

 死神はそう答えた

 あの鏃が刺さってから どれくらいのあいだ生きられるんですか?

 そんなことは知らない 今夜かもしれないし 二十年後かもしれない

 それだと意味はあるんですか?

 意味ってなんの

 あなたの仕事の意味ですよ

 意味なんてないよもちろん 死神は亡霊の天下あまくだり先だから ほうっておいても死ぬやつに いつか死ぬという印をつけるだけ ボロい商売だよ死神は

 なんだか拍子抜けですね

 あんたが期待するのが悪い でもさ 死ぬやつには必ず鏃が刺さってる だから誰しも死ぬ前に 一度は死神と会ってるわけだ だから死にたくなかったら 死神から逃れつづければいい

 ちなみにぼくには刺さってますか?

 あんたは三本も刺さってる

 なんでそんなに?

 知るかよそんなこと 過去にきけ 死神を挑発でもしたんじゃないのか むかつく顔してるからな あんたは完全に望みなしだよ そんじょそこらのジジイよりも死にやすい もういいかな いいかげん帰らないと 犬の散歩の時間だから


 煙草を買った死神を見送って

 家に帰り

 恋人の死神と顔をあわせたら

 鏃が四本に増えていると

 笑いながら教えてくれた

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