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痛みはどうしようもない

 この痛みをどうすればいいのか

 ずっともてあましながら考えてきたけど

 どうしようもない

 ということだけしかわからなかった


 どうしようもない

 痛みは

 喪われたものは

 かえってこないのだから

 なにが悲しいってこれほど悲しいことはない

 と戦前の詩人も言っていたように

 なにが哀しいってこれほど哀しいことはない

 と生前の病人も思っている

 本当に本当にどうしようもない

 時間が経てば消えるとか

 なにかに没頭すれば忘れるとか

 全部全部むだだった


 でもそれが正論なのだろう

 きっとまだまだ時間が足りないのだろう

 いったいどれだけ必要なんだ

 老衰で死ぬまでに間に合うのか?

 長生きするとも思えないけど

 どれだけ生きても痛みそうだ

 忘れる技術をつかみそこねた

 だれか教習所で教えてくれ

 いいややっぱり教わりたくない

 忘れるくらいなら死んだほうがマシだ

 それは何度も考えた

 いまも変わらずそう思ってる


 どうしようもない

 死ぬしかない

 でも死んだ後も消えなかったらどうしよう

 神も魂も信じるが

 自分だけは無になりたい

 死者へ祈りは捧げるが

 自分だけは無になりたい

 いますぐにでも無になりたい

 それしか叶えたい望みはない

 喪われたものがかえってくるなら?

 そんな夢見はなおさら痛い

 痛むくらいなら無になりたい

 無になれるならいますぐ死にたい


 どうしようもない

 痛みは

 どうしようもない

 喪われたものは

 どうしようもない

 死んでしまうのは

 本当に本当にどうしようもない

 全部全部どうしようもない

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