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囚人の記憶
思い出したくもないことが
あとからあとからわいてくる
看守は死んだのか
鍵はうち壊されたのか
獄に閉じこめた見たくもない記憶が
あとからあとからわいてくる
頼むからもう
独房でおとなしく死んでくれ
最初からいなかったと思わせてくれ
破獄しようがどうしようが
温かく迎えるだれかなんていない
死刑を宣告された囚人の記憶が
あとからあとからわいてくる
思い出したくもない
それはすべて
喪ってしまった
なによりも大切な感情につながる記憶だから
もう二度と会えない人の記憶が
あとからあとからあとからあとから
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ
わいてくる