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アリスではない投身者たち

 屋上から飛び降りた人間が

 九階、八階、七階、六階……

 だんだん地面に近づいていく

 その生涯最期の墜落の最中さなか

 どんな想いが去来するのか

 ぼくはそれが知りたい


 アリスはウサギのあとを追って

 穴に飛びこみ

 深い井戸をゆっくりと落ちていった

 夢見がちな女の子が

 引きのばされた墜落の最中になにを思うのか

 ルイス・キャロルはひとつの解答を示した

 でもアリスではない

 踏みにじられた成人女性が 歪められた成人男性が いじめ抜かれた未成年が 忘れ去られた御老人が 疎外されつくした浮浪者が

 墜落の最中になにを想うのか

 ぼくの知りたいそのことを

 キャロルは教えてくれなかった


 屋上から飛び降りた人間が

 五階、四階、三階、二階……

 だんだん地面に近づいていく

 もしもこの詩を書いた者にも

 飛び降りる機会がおとずれたとしたら

 早口で詩をまくし立てながら

 言葉を使いつくして死にたい

 どうせその時に想うことなど

 大したことではないだろうから

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