表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
325/917

ひとり

 事故が起こる

 あるいは殺戮

 そして犠牲者の数は?

 ひとり

 それを聞いて思うこと

 なんだ、大したことじゃないな


 ひとり

 この世から消えたひとり

 死んだこともない人間から

 大したこととも思われないひとり

 ひとり

 午前か午後にいなくなったひとり

 顔すらもさだかでないひとり

 おまえは生まれたときからひとりだ

 ひとりでなかった人間などいない

 そうしておまえは毎日のように

 ひとりが死んだニュースを聞いて

 大したことではないと思い

 日々に慣らされて魂を軽蔑する

 ひとり

 地上から掃き清められたひとり

 歴史から疎外されたひとり

 おまえの愛するだれかはひとりだ

 愛するだれかの代わりなどいない

 そうしておまえは毎日のように

 ひとりが群がる交差点を眺めて

 だれもかれもに価値がないと

 数の暴力に愛を奪われる

 ひとり

 だれもが生まれてからひとり

 どれだけ集まっても死ぬまでひとり

 ひとりの犠牲が大したことではないならば

 おまえはひとりよりも孤独なうすらばかだ

 ひとりの声すら聴き取れないぬけさくだ

 ひとりになれさえしない弱虫だ

 おまえの考えるひとりはひとりではない

 おまえの考える大したことのないひとりはおまえだ

 ひとりにすら値しない影だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ