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死にぞこなった恋

 どうすればこの痛みは

 胸から去ってくれるのか


 あらゆる痛みは時間が解決してくれるものだと

 人は言うし

 自分の経験も物語る

 それなのにこの痛みは衰えるどころか

 日に日に鋭さを増していき

 内側から喰いやぶられた胸が

 なんらかの治癒を求め叫んでいる


 なにによって治癒すべきか

 楽しい思い出によって

 でもぼくのあらゆる記憶はいま

 彼女の面影と結びつき

 痛みの呼び水にしかならない


 なにによって治癒すべきか

 芸術への傾倒によって

 でもぼくのあらゆる創造はいま

 彼女への想いと結びつき

 痛みの呼び水にしかならない


 なにによって治癒すべきか

 宗教への献身によって

 でもぼくのあらゆる信仰はいま

 彼女への祈りと結びつき

 痛みの呼び水にしかならない


 眠りだけが

 ぼくの守護天使だ

 ぼくがぼくでなくなるあいだだけが

 生きた心地のする唯一の時間だ

 けれど眠りの最大の敵は

 痛みすら彼女とのつながりだと錯覚する

 ぼくの頑迷な意志だ

 狂った恋情の残骸だ


 ぼくの意識は眠りを求め

 ぼくの恋情は痛みを乞い願う

 痛みの消えたときが

 彼女を本当に失うときだと

 くたばりぞこなった恋情が叫んでいる

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