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老人と丘

 だれもが時を背負っている

 そのことをつい忘れてしまう

 だれもが朽ちてゆく過程の真っ最中

 そのことをつい無視してしまう


 見てごらん

 しなびた枯れ木があるだろう

 あれがおれだ

 おまえの祖父だ

 そしておまえだ


 わかりません

 ぼくにはわかりません


 丘を風が渡っていた

 老人が歌を口ずさんだ

 子どもが枯れ木を蹴飛ばした

 もうすぐ死んでしまう犬が吠えた


 考えてごらん

 無力を王冠として授かった

 それがおまえの人生だ

 おれの虚無だ

 時の使命だ


 わかりません

 ぼくにはわかりません


 丘はいまでは見るかげもない

 切り崩された

 均された

 駐車場という名の墓場になった


 注意しろ

 過去はまたたくまに去っていく

 丘がいまでは消えたように

 おれがいまでは死んだように

 おまえがいずれ死ぬように


 わかりません

 ぼくにはわかりません


 いまではよくわかっていた

 そのときもわかっていたのだ

 老人よりもわかっていた

 老人はわかっていなかった


 死んでしまった犬が吠えた

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