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夜歩き

 寝床に横たわりながら

 眼を閉じて

 記憶と想像力を頼りに夜を歩く

 家から外に出て

 近所の通り道を散歩する

 雑念が入ると道が歪む

 風景の輪郭もかすんでしまう

 そうするとまた初めからやり直す

 夜は長い

 眠りにつくまでの空白は長い

 何度だってやり直す

 眼を閉じて記憶と想像力を研ぎ澄ます

 そうして失敗を重ねながら

 ようやく駅までたどり着く

 そこに来るまで得体のしれない影のような何者かとたびたび出くわすが

 雑念によるノイズとして捨て置く

 集中を途切らせずに無人の駅のホームで待っていると

 音もなく列車が停車する

 福音ふくいんのようなその方舟はこぶね

 喜びをひた隠しながら無表情で乗り込む

 列車の扉が閉められる

 列車がふたたび動き出す

 静かにわたしがらっし去られる

 どこかへわたしが連れ去られていくのを

 駅にとどまったまま祝福して見送る

 そのあたりで

 わたしは気づかずにもう眠っている

 これが不眠に悩まされたときの

 わたしなりの安眠法である

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